ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

ロシア軍の蛮行から現代の戦争を見る アイデア広場 その1222

2023-01-25 17:28:15 | 日記
ロシア軍の蛮行から現代の戦争を見る アイデア広場 その1222

 戦争と平和を考えるとき、戦争の起きる流れや平和が訪れる条件をシミレーションすることも必要なのかもしれません。戦争のリスクが高まるのは、国力変化が起きて、優勢だった国の力が減少するとき起こります。国力に大きな開きがあれば、弱い国は軍事行動を抑え、戦争に訴えることはしません。たとえば、20世紀初頭、覇権を握っていた英国に対してドイツは急速な工業化で国力を伸ばしていました。ドイツは、英国の覇権に不満を持ち始めます。その不満が、第一次世界大戦と第二次世界大戦という不幸な姿で現れました。今までの国際秩序に不満を蓄積させてきた国の国力が上昇すると、戦争のリスクがまる一つの事例です。国力を急速に伸ばしてきた中国は、既存のアメリカ主導の国際秩序に強い不満を持っています。中国はその国際的な地位に不満を抱いて、この150年強を過ごしてきたともいえます。挑戦国は、現状維持国に武力などを用いて国際体制を転換させようとします。そして、不満を基底としている挑戦国は、各国に対して強く出る姿勢を示します。でも、裏では相手の国力に応じた対応を取ります。
 国際秩序に対する不満が少なければ、現在の体制を担っている国に挑戦することはありません。国力の差がある時のほうが、国際秩序は安定するともいえます。日本はGDPで世界第2位の座を失い、国民1人当たりの経済力もかなり落ちています。ある意味で、日本の国力には変化が起きているわけです。日本には、国境を接する国との紛争が3つあります。それは、北方領土問題、竹島・独島問題、尖閣諸島問題になります。日本の国力低下により、この紛争を以前の様に静観することができない状況になりつつあります。韓国も自国の急成長と能力に対して、現在の国際的な地位に何らかの不満を持つ素地があります。中国も、現状の国際ルールに不満を持っています。台湾も、自分が国家として認められないという意味での地位の不満は非常に高いのです。北朝鮮も、同じような不満を持っています。東アジアでは、不満という国際関係が軍事的にエスカレーションのリスクがあるのです。これらの国や地域の不満を理解することは、東アジアにおける国際紛争を考えるうえで重要になります。
 70年間にわたり平和を享受してきた日本が、戦争のリスクに目覚めたのはロシアのウクライナ侵攻でした。2度の世界大戦から教訓として設立された国連の常任理事国であるロシアが、理不尽な攻撃をウクライナに連日行っているのです。ロシアの1年にわたる攻撃で、平和を愛する日本の人々も、現代における戦争の姿がおぼろげながら理解できるようになってきました。これからの戦争は、武力戦と非武力戦をミックスしたカクテル式の戦争になるということを理解しました。カクテル式の戦争には、貿易戦、金融戦、新テロ戦、生態戦、心理戦、密輸戦、メデイア戦、麻薬戦、ハッカー戦、技術戦、資源戦、経済援助戦、国際法戦などがあります。私たちは、あらゆるものが戦争の武器になるという認識が必要になります。人為的に操作された株価の暴落、コンピュータへのウイルスの侵入も兵器になります。この株価の暴落なども、兵器の新概念の列に加えられるのです。敵国の為替レートの異常変動、ネット上に暴露された敵国首脳のスキャンダルもすべて兵器になります。「兵器の新概念」は、軍事領域をこえて戦争に利用できるものをすべて兵器とみなすのです。現代の戦争は、一般人や軍人を問わずに、その身の回りにある日常的な事物を戦争のための兵器に豹変させているのです。日本は、中国からレアアースやマスクが絶たれたことがありました。でも、このような事態にあっても、ある程度耐える生産体制を整えておくことが、現代戦争には必要のようです。戦略物質が絶たれても、それに対応した行動を取れるようにしておくわけです。日本では、マスクの供給が絶たれれば、マスクを洗って使えるようにする姿が映し出されました。高性能のマスクは、医療従事者に優先的に供給する光景もありました。非常時には、現在の生活レベルを落として、危機に備える体験も必要なのかもしれません。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、連日、多くの市民の犠牲が伝えられ、核戦争の脅威も現実味を帯びるようになっています。楽観主義者の立場からは、国と国のつながりが深まれば平和がおとずれると安易に考えていました。主要国の間で、全面的な戦闘行為が起きるとは想像もできないことでした。ところが、ロシア軍が戦車をつらねて他国に軍事侵攻していく映像に、世界中の人が驚きました。国と国の相互依存関係が深まれば、争いがなくなるという楽観論は、ロシアのウクライナ侵攻によって打ち砕かれました。現実は、自分の国は自分で守らなければならないという教訓が残ったわけです。日本を取り巻く軍事情勢は刻々と変化してきています。武器を持たなければ、他国から攻められることはないという楽観主義が崩壊しつつあります。持たなければ、陰に陽に圧力をかけ続けられるという現実が、2014年のロシアによる東部ウクライナ侵攻から現在にいたるまでの実情です。世界の国々を見ると、国を守るためには、軍事的にも、経済的にも、政治的(外交的)にも、盾と矛を持たなければ、国民の安全は守れないように見えます。日本は、戦後70年に及ぶ平和を享受してきました。平和憲法のもとで、軍事費を少なくし、経済に資金を投下してきました。この成功体験は、貴重なものでした。でも、成功体験に安住し過ぎると、失敗がやって来ることは歴史の教えることです。今が、もう一度、戦後の成功体験を再考する時期にきているのかもしれません。
 戦争は、相手を物理的のそして心理的に傷つける行為でもあります。でも、攻撃を効果的に行い、最終的に勝利を得ても、相手からの何らかの反撃により損害は免れないものです。軍隊には、一定数の健康な男女を従事させるために、社会にとって無視しえない負担になります。健康な男女がほかの労働に従事し、農作物や工業製品を生産すれば、社会は豊かになります。戦争の経費を、社会福祉や研究開発支援の資金にまわせば、国民は豊かになります。政府が他の政策を実行しないで、戦争を行うことは機会費用の意味で損失を生むことになります。戦争を行わなければ、損失を生まずに、繁栄がやってくることになります。その大きな盾が、外交になります。外交交渉を行い、戦争のリスクを避ければ、大きな損失をもたらしません。外交には、裏も表もあります。1962年に、キューバ危機がありました。旧ソ連が、キューバに中距離ミサイルを配置しようとした事件です。アメリカのケネディ大統領は、海上封鎖をしてこれを阻止しました。この時の取引は、トルコに配備されていたアメリカの中距離ミサイルを撤去することでした。アメリカはキューバからミサイル撤去し、ソ連はトルコからミサイルを撤去させたことで満足したわけです。考え方によると、ソ連の有利な取引でした。設置していたミサイルの脅威は、現実のものです。設置予定は、将来の脅威になります。でも、海上封鎖によるミサイル配置の阻止は、アメリカ側の勝利として大きく報道されました。この交渉は、公開されない外交ルートが使われたようです。公開されない外交ルートで問題を処理する枠組みを持っていることは大きな財産になります。いわゆるバックチャンネルを持っていることは、実はきわめて大きな財産になるわけです。避難応酬する中でも、バックグランドの人材養成や確保は重要な外交になるわけです。
 余談ですが、武器だけが戦争遂行に役立つわけではないことを証明した事例があります。日本が第二次世界大戦で敗れた理由の一つに、語学がありました。軍全体として、語学という重要な武器の使い手を十分に育てることができなかったのです。日本軍は、インテリジエンス活動に使えるような実用的英語が弱点になりました。さらに、戦争や軍事に役立てられた文系学問は、語学だけではありません。文化人類学なども、戦争や軍事に役立てられました。このことに役立てられた典型として、ルース・ベネデイクトの「菊と刀」があります。ベネデイクトは、1944年6月に日本研究の仕事をアメリカ軍から委嘱されました。この研究は、日本人の行動特性や慣習を明らかにしました。日本軍の行動特性を把握し、米軍の損害をできるだけ少なくすることに貢献しています。さらに、戦後の占領政策を円滑にすることにも役立ったようです。人文学的研究がアメリカの戦争遂行に密接な関係にあったことは事実として重要です。軍隊を強くするには、宗教的儀礼や慣習は軍隊の維持と強化に有効な手段になります。逆の立場からみると、相手側の宗教的儀礼や慣習を把握し、その力を弱体化する戦略や戦術も採用されるということです。ウクライナとロシアにおけるクリスマスの宗教行事の利用などを見ると、その様子が透けてくるようです。
 戦争が常時襲ってくるかもしれないと身構えている国が、永世中立国のスイスです。スイス国民は、戦争に巻き込まれれば、国土の大部分は初日から戦場になるだろうと想定しています。今日では、大規模な空挺作戦が可能なので、国土は瞬時にして戦場となり得ると備えているわけです。開戦当初の空襲で、多く被害がでると想定しています。でも、被害者を全て救助することは、困難だと割り切っています。この被害を最小にするために、個々の家々では、防空壕を備えているのです。戦争被害は、同情だけでは問題が解決しないとしているのです。スイスが外国の占領下におかれた場合、外国の軍隊から住民にたいして暴力的な懲罰が多く起きることを覚悟しています。ロシア軍が最初の侵攻で、拘束したウクライナ人を射殺した死体と路上に放置した映像が流されました。このようなことは、想定済みのようです。国土を占領した敵国の軍隊に抵抗することは、厳しい努力が必要になります。日本人には、まだまだ実感のわかないものです。でも、徐々にその流れが身近にやってくる気配もあるようです。