高子が、真都葉の腕を見る。
「ほら、真都葉」
「これ、いたいんだよぅ」
「ケガをしたら、痛いのは当たり前」
高子は傷の消毒をする。
「とう」
真都葉は、圭にしがみつく。
高子は真都葉の腕をとり、手早く処置をする。
「はい、終わり」
真都葉は、再度まかれた包帯を見る。
「真都葉」
真都葉は圭を見る。
「ほら。痛いの治してもらうんだよ。なんて云うの」
云われて、真都葉は高子を見る。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「まつば、おうちかえるの」
「あら。帰るの?」
「えっ、真都葉??」
「かあのとこ、かえるの」
「まあ。そうなの」
圭は慌てて、高子を見る。
高子は頷く。
「大丈夫よ」
云う。
「薬を処方するから、それを家で飲んで」
「真都葉を連れて帰っても?」
「ええ、大丈夫」
高子は診療録を書きながら云う。
「家での生活の注意事項を伝えるから、それは守って」
真都葉は笑顔になる。
「かあ、まってるかな」
「よかったな、真都葉」
高子は立ち上がる。
「病院を出るのは、日が落ちてからにするでしょう?」
「あ、そうか・・・」
「そのときに、もう一度消毒をするわね」
高子は部屋を出ていく。
真都葉は圭を見る。
「はやくかえらなきゃ!」
「そうだね」
「とう、かえろう!」
「真都葉」
圭は、真都葉をなだめるように云う。
「先生がもう一度、消毒をしてくれるから」
「しょうどく?」
「それが終わったら、帰ろうね」
「うん!」
真都葉は聞き分けよく、返事をする。
それから、圭は、また真都葉と病室で過ごす。
昼食の後、真都葉はうとうととする。
圭が見守る中、眠りにつく。
圭は立ち上がり、部屋を出る。
一度、家に顔を出すつもりだ。
杏子は心配しているだろう。
けれども、真都葉の帰宅を知れば、少しは安心するはず。
圭は、家へと向かう。
真都葉がいつ起きるかわからない。
圭は足早になる。
と、
道の先に誰かいる。
圭は気にせず、進むつもりだった。
けれども、圭はその姿にハッとする。
「・・・悟」
そこに。悟が立っている。
NEXT