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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」134

2016年02月12日 | 物語「水辺ノ夢」

雪が止み、久しぶりの晴れ間。

けれども、西一族の村は雪で覆われている。

巧は、早くから出かけていて、いない。

杏子は、暖炉の前で針仕事をする。
巧が持ってくるたくさんの布。
これを仕立てるのが自分の仕事だと、杏子は黙々と針を握る。

自身の服。
巧の服。

そして、・・・。

しばらく手を動かした後、杏子は立ち上がる。
お湯を沸かそうかと。

けれども、

立ちくらみがして、杏子は坐りこむ。

軽い貧血かもしれない。

杏子は、近くの長椅子に横になる。

大丈夫。
少し休めば、大丈夫。

身ごもった身体にも、慣れてきたところだ。

杏子は、目を閉じる。


・・・こつ

こつこつ


「・・・・・・?」


・・・こつこつ


「・・・あ、」

杏子はふと、目を覚ます。

いつの間にか眠っていたようだ。

こつこつこつ。

この音、は?

杏子は体を起こす。

「巧?」

杏子は呼びかける。

「巧・・・」

巧が、現れる。

「起きたのか」

「ええ・・・。いつ帰ったの?」
「さっき」
「・・・あの、ごめんなさい。食事の支度がまだで」


そこで、杏子は部屋の中の匂いに気付く。

「疲れているなら、横になってろ」

杏子は台所の方を見る。
巧が、食事の支度をしていたのだ。

巧は、台所へと戻っていく。

杏子は再度、横になる。
天井を見る。

外にも行けず、たいして体を動かすわけでもないのに
疲れている。

杏子は息を吐く。

巧が皿を持ってくる。

「ほら」

杏子は、横に置かれた皿を見る。
いい匂い。

粥が入っている。

「肉の出汁は食えるんだろ?」

「・・・肉を、もらってきたの?」

「その話はいいだろ」

巧は、自身の皿も持ってくる。
食べる。

「貧血だろうから、動物性のものも少しは食え」

杏子は起き上がり、皿を手に取る。

「ありがとう」

「あまり、無理はするな」
「・・・・・・」
「疲れやすいのは、当たり前だ」

巧が云う。

「ふたり分の命を抱えてるんだから」



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