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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」24

2017年11月03日 | 物語「約束の夜」

前から歩いてきた者が、おう! と、手を上げる。



満樹には、その者の心当たりはない。
どう考えても、知っている顔ではない。

やっぱり判らない、とか、思う。

そんな、南一族の村。

「おう、東の兄ちゃん! 観光か!?」
「ええ。まあ・・・」
「よしよし、豆でも食べて行け!」

これが、南一族の気質だ。

東一族も、血がつながっていなくても皆兄弟のように育つ。
同じように、誰にでも声をかける。

けれども、

他一族の村でそれをされると、違和感がある。

あと、

思ったより、南一族は声がでかい。

「ほら坐れ! 東の兄ちゃん!」

東の衣装は脱いできたのにな、と、満樹は思う。

東一族は、8一族でもめずらしい黒髪。
南一族はさらにめずらしい、黒髪と白色系の混在。

何となく、南一族のふりが出来るかと思ったけれど
やっぱり、顔立ちが違うのだろうか。

「いや、テンションの高さだろう!!」
「・・・・・・」
「おい、茶も飲もうぜ!」
「今、心の声、読みました?」

大きな声で、南一族が笑う。

「兄ちゃん何をしに来たんだ」
「何って?」
「南一族の村にだよ。東一族がめずらしい」
「ああ。」

満樹はそつなく答える。

「豆を食べに来ました」

南一族は再度、大声で笑う。

満樹は南一族を見る。
見た目からするに、少し年上だろうか。

彼が持っているかごには、大量の豆が入っている。

それを見ていることに気付いた南一族が声を出す。

「すごいだろ、豆!!」
「ええ」
「今期も豊作なんだ!!」
「それはよかったです」
「収穫が毎日忙しくて!!」

それにしても、なぜ、こんなにも声がでかいのか。

満樹はもらったお茶を飲む。
云う。

「南はいつもと変りないですか」

「いやいや。最近は物騒だからな!」

南一族は、串にささった豆を取り出し、ほお張る。

「畑は荒らされるしな!」
「そうですか」
「知り合いの子も消えたし!!」
「消えた?」
「そう、いい子だったんだけどな!」
「いったいいつ?」
「あんな風にうちの畑の豆も消えたりしたら・・・」
「いや、あの」
「俺の畑にも、みすてりぃさぁくる的なものが描かれてな!」
「あ。うん。紋章術の陣ですね」
「いったい誰が、うちの畑を!!」
「それより、その、消えた子と云うのは、」
「よし!!」

南一族は突然立ち上がる。

「東の兄ちゃん見てくれ」

腕まくり。

「・・・?」
「南一族式魔術」
「・・・え?」
「俺の魔術がどんなもんか査定してくれ!」
「いや、え? 俺たちは紋章術だけど」
「行くぞ」
「行くの!? 本当に!?」

「~~~のに生まれし~~える仔羊」

慌てて満樹は止める。

南一族式の魔術は、単純。
それなのに、不思議なことに誰にでも使えるわけではない。

単純、かつ強力。

「そんなことをしたら、豆が!」
「はっ!!」

何だか、おかしなことを呟いていた南一族は、我に返る。

「そうだ、豆が!!」

南一族はかごを抱える。

「すまなかった。さあ、東の兄ちゃん行くぞ!」
「・・・?」
「今夜はうちに泊まろう!!」
「いえ、宿は探します」

満樹は首を振る。



ものっすごい力で、南一族は満樹を掴む。

「今夜は豆料理三昧だ!!」
南一族が云う。
「うちの子たちも喜ぶであろう!」

「えっ、ちょっと!」

「安心しろ! 今夜は西の子たちも泊まることになっている!」

「何が安心!?」



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