「罠って何よ」
「新手の詐欺か」
「近いっ、けど、違うっ!!」
もともと暗かった店内に、一気にスモークがあふれる。
・・・ズンドコズンドコ(効果音)
「バーに来て、ソフトドリンクしか頼めないとは・・・、とうっ!」
マスター、ものすごいジャンプでカウンタを飛び越える。
「私は、RPGでよくいる、砦のボス(のようなもの)!!」
ズンドコズンドコ!
「君たちの冒険ははじまったばかり! ・・・とうっ!!」
マスター、もう一度カウンタを飛び越える。
(つまり、もとに戻った)
「さあ、この私『ヘイマスター』を倒してみよ!」
「なんだってぇえええ!!」
「・・・・・へぇ」
「・・・なんなの、それ」
慌てふためいているのは、へび呼ロイドだけだ。
「だいたい、砦のボスって何だ」
アヅチはストローを加えたまま、云う。
「倒すって、どうやるのよ」
マツバはまだ、枝豆をつまんでいる。
シャカシャカシャカシャカ。
ヘイマスターは、シェイカーを振っている。
「さあ、坊やたち! SDをどんどん注ごうじゃないか!」
アヅチとマツバの目の前に、高級なSD(ソフトドリンク)が並ぶ。
「こ、これは!」
「なんて、おいしそう!!」
海一族産デコポン100%使用、果実入りデコポンジュース!
東一族産ハイリンゴ100%使用、リンゴジュース!!
・・・などなど。
「ふたりとも、罠だよっ」
「・・・ふっ」
「気を付けて! 睡眠薬とか入ってるかもっ」
「私(ヘイマスター)が、そんな卑怯なことをするとでも?」
シャカシャカシャカシャカ。
不敵な笑みで、ヘイマスターはシェイカーを振る。
「ただし、気を付けたまえ、アルコール入りがロシアンだ!」
たくさん並ぶSDの中に、アルコール飲料もまじっているらしい。
「ふたりともっ!」
「大丈夫よ」
マツバも不敵な笑みで返す。
「においでわかるから!!」
・・・だよね。
アヅチとマツバは、おいしく高級SDをたいらげている。
ものすごい、スピードだ!
「こしゃくな!」
「このままでは、・・・このままではっ」
へび呼ロイドが、くっ、と声を出す。
「破綻してしまうよ!!」
お財布が。
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