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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」86

2015年12月15日 | 物語「夢幻章伝」

「それにしても、
 広いよね~、南一族の畑って」

畑に向かいながらへび呼ロイドは
辺りを見回す。

「そりゃあ、南一族は
 農業で発展した一族だからな」

ふふん、と
嬉しそうに話すアヅチの兄モモヤは
前と後ろに収穫用のカゴを背負い、
更に手押し車まで押している。

「特に豆は
 南一族一押しの名産品で
 この時期は1ヶ月近く収穫が続くんだぞ」

ちなみに先日
モモヤが北一族の屋台で売っていたのは
今期一番収穫の豆です。

「時期をずらして植えているとはいえ
 畑の規模が他の村とは違うからな」

そう言うアヅチは
兄とほぼ同じ格好で畑に向かう。

「本気を出して、
 とりあえず、
 出来るだけ収穫を頑張れば」

ぶつぶつぶつぶつ。

そう、今後の旅立ちは
今日のアヅチのがんばり次第です。

「そうね、4人居るんだから
 畑1つは終わらせたい所ね」

マツバも頑張る。

「マツバ」
「何よ?」

アヅチは少し気まずげに言う。

「ウチの畑の収穫だから
 来なくて良かったのに」

ふん、と
マツバは軍手を引き締める。

「忙しい時に
 近所を手伝うのはいつもの事じゃない」

「……助かる」
「別に。
 私の家は農家じゃないから
 自分の家が忙しいとか無いし」

はわわわわ、と
そのやりとりを後ろで見ていたモモヤが
良い感じじゃん、と
隣を歩く姉に言う。

「アヅチ、なんだか
 旅で成長したよな」

兄は何だか嬉しい。

「何言ってるのよ。
 旅って言うか、数日の旅行だし、
 それにモモヤ、あんた」

じとっと刺さるような眼差しを向ける
アヅチ姉。

「彼女との関係がモヤモヤしている時に限って
 他人のこと応援するクセどうにかしなさいよ」

色々と重い一撃を食らい
地に膝をつく
モヤモヤモモヤ!!!

「おいら達
 ここで出会ったんだよね~」

それはさておき、
思い出にふけるへび呼ロイド。

「マツバに飛ばされたおいら達が
 豆を収穫しているアヅチにぶつかって」

あの時は同僚達の事で精一杯で
周りを見て回る余裕の無かったへび呼ロイド。

「それにしても、
 こんなに沢山の豆が並んでいて
 よく同僚達の餌食にならなかったよね~」

そう言えば、
今までの通過経路で
分子達の食物被害に遭わなかったのは
谷一族と南一族の村。

谷一族は
そう、あそこは、鉱物の村だから
仕方ないとして。

「不思議だよね~」

なんで、
ここだけ、
被害に遭わなかったのかな。

「おい、バカ
 フラグを立てるんじゃねぇ」

アヅチの心配が的中したのか
アヅチ姉が遠くの畑に何かを見つける。

「あれ?なにかしら?」

「え?なに?どこ?」

「あそこ、
 ユウジさん他と共同開発している
 新種の豆の畑よ!!」

「ユウジさんって誰?」

突然の固有名詞に戸惑うへび呼ロイド。

「村長、だ、よ」

復活したモモヤが答える。
村長と新種豆を共同開発する
アヅチの姉とは一体。

「こ、これは!!」

アヅチ達がその畑に駆け寄ると
そこにいたのは
同僚達と言えるような
言えないような。
なんか、黒い物体。

新種の豆を、狙っている。

「これはっ!!」

おののくへび呼ロイド。

「新章に繋がる際に現れる
 新種の敵!!??」

そして、

「実は今まで戦っていた敵は
(例えば、ギャーズンとかが)
 彼らの中ではもっとも最弱、とか」

「なんだってーーー!!」

怒りでわなわなと震えるアヅチ。

「どうでもいいが、
 このままじゃ
 収穫時間が更に短くなるじゃないか!!」

早く、豆を収穫せねば。


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