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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」139

2019年04月02日 | 物語「約束の夜」

「本当の、理由」

少し躊躇いつつも
ヨシノは頭を振る。

「そうね。本当のことを言わないと。
 砂先生に失礼よね」

せっかく危険を冒して
案内してくれていると言うのに。

ヨシノはツイナを見る。
いいでしょう?という確認。
ツイナもそれに頷く。

仕方がない。

そして、二人は砂のお兄さんを見つめる。

「実は、俺たち」
「砂一族の秘術を知りたいの!!」

あれぇ?

「私、毒………もとい、
 薬草の調合を
 嗜んでいて」

懐から謎の小瓶を取り出す。

「これ、オリジナルブレンドなの!!
 どう!!
 砂の本場の人から見て!!
 どう!!どう!!!??」

いっそ厳しく指導して、と
めっちゃ顔が近いヨシノ。

「ええ〜、落ち着いて君」

「ずっと前から
 この毒の本場に来ることが
 夢だったのよ」

「でも、ウチ
 基本情報外に出さないから」
「知ってるわ!!調べたから!!」
「調べたのか」

「それでも、来たい、
 目に触れたい、あまつさえ、
 もしかしたら、もーしかしたら
 ちょっとだけなら教えてあげるよ
 みたいなのあるかもじゃない!!」

ツイナは呟く。

「………聖地巡礼」

「そういう事なら」

いいのか。

ええーーー!!
アザのある仲間達。アザーズは!!?

ツイナはちらりと
ヨシノを見る。

キラキラと、
朗らかな表情のヨシノ。
そして振り返る今までの事。

分かっていたよ、
ヨシノの目的はそれだって事は。

「ちなみに、君の目的は?」

「目的。
 俺の目的ってなんだろう??」

ツイナは遠くを見つめる。

「みんなとの約束。
 それとも気になるヨシノの願いを叶えること?
 2つの目的は同時には果たせない??」
「おーい、戻ってこい」

ほわほわほわ~と
哲学中のツイナに砂のお兄さんが声をかける。

そうじゃないと
ヨシノに気付け薬という名の
怪しい薬を飲まされるぞ。

「おーい、仕方無いな」

少し離れた地面に
矢を放つ砂のお兄さん。

ドガン!!

「ぴえっ!!」
「まぁ!!」

凄い砂煙。

「ゲホゲホ、ぐは」
「前が見えないわ」

砂のお兄さんが笑顔で言う。

「今のが地点だ」

分かったか、と2人に尋ねる。

「これが砂一族。
 俺達は遠慮はしないし、配慮もしない。
 生半可な気持ちで行ったらどうなるか、覚悟してくれよ」

まあ。

「どういう形であれ、
 来訪者は歓迎するよ」

どういう形であれ、ね。

最後の念押し、気になる。

「俺達無事に帰れるのだろうか?」
「もう今さら引き返せないわ。
 行くのよ、ツイナ!!」

「そうだな。
 もう着いちゃうから」

強風が止み、
砂煙が晴れると、目の前には集落が。

「ここが!!」
「砂一族の村」

「さあ、約束は果たしたぞ。
 俺はここまで。
 あとは上手くやりなよ」

「お兄さん行っちゃうの?」
「ああ。
 だから、離れて!!
 きみ、離~れ~て!!」
「あ~れ~」

引きはがされるヨシノ。

「案内ありがとうお兄さん」
「いや、道中楽しかったよ」

握手した手を、あれ、と握り返すツイナ。

「………お兄さん、
 本当に砂一族?」

ほう、とツイナに耳打ちするお兄さん。

「むやみやたらに先視は良くないな。
 海一族の少年」
「………少年」

そして、最後にもう一言。

「砂一族の村で上手く過ごすには
 交渉の手札は多い方が良い」
「手札」

じゃあな、と去っていく砂のお兄さん。

「ツイナ、どうしたの?」

なに話していたのと聞くヨシノに
ツイナはちょっと涙目で答える。

「俺少年じゃないもん。
 青年だもん」

十四歳って多感。





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