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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」85

2018年07月10日 | 物語「約束の夜」

パタン、とドアが開く音がして
京子は振り返る。

「………京子」
「お母さん」

驚いた顔をして、母親が駆けてくる。

もう、大げさなんだから。
数日家を空けていただけ、
裏一族を追うと決まった時点で
遅くなると手紙は書いた。

それでも、
兄が失踪して自分までも、と
心配をかけたかも知れない。

「京子、あなた!!」
「お母さん心配かけてごめ」

「美和子ちゃんとケンカしたって!!?
 お母さん恥ずかしいやら
 申し訳無いやら、ちょっと、ねぇ!!」

怒濤のお説教。

「あ~、うーっと、
 もう解決しているから、その件はほっといて!!」

村でそういう事になって居るなら、
方が付くまで
言われるままにしておこう、と
思ったものの。

なんだか、とっても、
もやもやする!!

「ところで、京子、
 あなた何してるの?」

ふん!!ふん!!

「腕立て伏せ、だけど」

筋トレ、続いてていた。
目指せムキムキ。

「うーん、お母さん、
 京子がやりたい事はさせてあげたい派だけど
 この方向性間違えて斜め45度に走り出す所」

さてはて

「一体、誰に似たのかしら?」

ねぇ。と
首を傾げる母親に、
そもそも村に戻ってきた目的を思い出す。

「もしかして、私
 ……お父さん似とか」

物心ついた時には
もう家に居なかったのだから
顔も覚えていない父親。

ふと、
色々考えてしまうことはある。

兄の耀は
顔立ちが母親によく似ている。
京子は多分、父親似。

それならば、自分と同じで、
実力不足に悩んだり、
他人と自分を比べて落ち込んでしまったり。

同じコンプレックスを抱えていたり
したのではないだろうか、と、

勝手に親近感を抱いてみる。

「貴方達の父親は、
 狩りの腕は抜群だったし、
 判断力も決断力もあり、
 人に寄るけど、お母さんの好みの顔つきだった」
「…………おお」

そこら辺は、耀が引き継いで居た。残念。

「そんな人、最近会ったような。
 は!!もしかして」

えええ?と
京子は、少し混乱する。

凄腕の実力。
諜報員だから、
本当の事情を告げずに家族の元を離れている。

「もしかして、
 私のお父さんって、千さん!!?」

朝の出会いは、
運命的な物だったのでは。

「セン?誰それ」

…………。

「いやいや、そんなわけ無かったわね」

よく考えれば、年齢が違う。
センは兄よりも少し年上に見えた。
父と間違えるには若すぎる。

「名前も違うし」
「でしょう」

よく知らない父親だけど、
何も聴いていないと言うわけではない。
名前は、そう。

「確か、……翼(ツバサ)」



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