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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」160

2016年11月18日 | 物語「水辺ノ夢」

「杏子、入るわね!」

扉を開けて、沢子が家の中へと入ってくる。

「沢子」
「ほら、布を持って来たわ」
「ありがとう」

沢子は、子どもを見る。

「あら、おとなしく起きているわ」
「ええ」

杏子が云う。

「お腹がいっぱいなのね」
「抱いてもいい?」
「もちろん」

杏子は、受け取った布をしまう。
台所へ行き、お茶を運んでくる。

「ああ、真都葉。かわいいわね」

沢子が云う。

「早く、目が見えるようになるといいわねー」
「そうね」
「笑っているみたい」

杏子はお茶を淹れる。

「沢子、よかったら」
「ありがとう」

沢子は、真都葉を抱いたまま、椅子に腰かける。

「本当におとなしいわねー」
「今だけよ」
「泣くの?」
「しょっちゅうね」

「どっち似ているかしら」

沢子は杏子を見る。

「杏子かな?」
「寝顔は圭かしら」

杏子は笑う。

真都葉を受け取り、抱く。
沢子はお茶を飲む。

しばらく、たわいもない話をする。

「あら、こんな時間」

沢子は外を見る。

いつのまにか
真都葉は杏子の腕の中で眠っている。

「長居しちゃったわ」
「いいのよ」
「また来るわね」
「ええ」

沢子は立ち上がり、真都葉の頭をなでる。

「じゃあ、また」

沢子は荷物を抱え、家を後にする。

杏子は、真都葉を寝かせる。

部屋を見渡す。
少しずつ、家の中を片付けているのだ。

ここは、人の家。
あくまでも、留守の家。

けれども、おそらく、この家の住人は戻ってこない。

そう、云っていた。

ひとりを、
圭を、のぞいては。

杏子は再度、真都葉を見る。

片付けをはじめる。
住人の物は、ほとんどない。
部屋の隅の埃を払う。

沢子が運んできてくれるいろんな布を縫い合わせ、
カーテンやクロスを作る。

真都葉が泣きだすと、その世話をする。

そんな日々の繰り返しに

少しずつ

慣れてきている。



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