TOBA-BLOG

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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」131

2019年03月05日 | 物語「約束の夜」

「守り役、守り役って」

むぅっと京子が言う。

「子守かーい!!」

「あら、京子」

今それなの、と
美和子がぽかんとした顔をする。

「いや、京子。
 変な意味じゃなく、うーん。
 ナイト?騎士?みたいな」

チドリもよく分からないフォローに回る。

ははは、と
美和子が笑う。

「相変わらずね、京子。
 そういう所は結構好きよ」

もっと、
西一族の村に居た時に
話していれば良かった、と。

「良い事を教えてあげる」

チドリが渋い表情を浮かべ、
杖を握り直す。

「私達は、裏一族は」

パン、と
何かが弾けるような音がして
今まで辺りを覆っていた膜のような物が
ガラスのように散らばり落ちる。

「―――達を探しているの」

「え、美和子、
 ………いま、なに?」

辺りの景色が元通りになる。

「悪い、京子。
 術が解けた」

チドリが杖を構え直すが。

いつの間にか美和子は
チドリの魔法を破った仲間達と合流し
距離を取っている。

「その守り役は想定外だったわね。
 今日はここまで。出直すわ」

「待って美和子。
 まだ、聞きたいことが!!」

去り際に、ひとつ美和子は付け加える。

「京子さっきのはだめよ。
 子守扱いが不満なら、
 もっと上手に甘えなきゃ」


一瞬。
彼らの姿は見えなくなる。

あぁ、と京子はうなだれる。

「行っちゃった」

「大丈夫か京子」
「えぇ、ありがとう」

よし、と言って
チドリは辺りを見回す。

「あいつらは去ったが
 まだ追っ手が居るとも限らない。
 いったん移動しよう」

手を引かれ、
京子はその後に付いていく。

「そういえば、さっきの美和子の言葉
 聞こえたか?」

チドリの術が解けたあの時。

「少しだけ」
「美和子は何て?」
「私には、『子ども達』って聞こえた、けど」

京子は首を振る。

「肝心な所が分からなくて」

「子ども達、ね。
 京子や満樹を子ども達って言うのもおかしいな」
「子守りとかけてるのかしら?」
「悪かったって」

冗談よ、と京子は笑うが、
じわじわと元気が無くなり、
うつむいてしまう。

「京子?」

自分の手のひらを
京子はじっと見つめる。

「ねぇ、このアザ。
 生まれつきあるものなのよ」

さっき美和子は言っていた。

魔法で体に仕組まれた物だと。

「私達、
 一体いつから狙われていたの?」

生まれたその時から?

「私達、どこまで
 裏一族の思うように動かされているんだろう」




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