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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」132

2019年03月08日 | 物語「約束の夜」

彼らの思惑通りというのなら、
今、満樹達にも
危機が迫っているのでは。

「どうしよう」

手分けをして、と言い出したのは京子だ。

「みんなが危ない目に」

皆、北一族の村を離れて
あちこちに向かったばかりだ。

「追いかけて知らせなきゃ」
「落ち着け京子。
 それもはったりかもしれないぞ」
「で、でも。
 みんなが!!私のせいで!!」

「京子」

チドリが言う。

「耀らしき人物が谷に向かったと
 その情報を仕入れたのは俺だ」
「チドリ」
「責任は俺にもある」

それに、とチドリは続ける。

「満樹もツイナも
 耀だって、それぞれに実力はある。
 簡単にはやられないさ」

信じて、約束の日を待とう、と。

「……ヨシノも毒の専門家だもんね」
「そうそう」
「それにしても、ちょっと
 ぐちゃぐちゃしてきたわ~」

一度に沢山の情報が来て
何が何やらになっている京子。

「それならちょうど良い。
 はい、どうぞ」

チドリはとある家の前で立ち止まると
はい、と扉を開ける。

「えっと?」
「俺の家。
 お茶でも飲んで落ち着こう」
「あ、そうか。
 チドリは北一族だったわね。
 家も、そりゃそうか」

おじゃましまーすと
入っていく京子に若干の不安を覚えるチドリ。

「……京子、一応警戒しよう。うん」
「え?なに?」
「満樹の気持ちが分かるという話」
「んんん?」

「お茶を入れるよ」

「手伝わなくて良い?」
「それじゃあ、好きなカップを取って
 後は座ってて」
「はーい」

カチャカチャと食器の音が聞こえる中
京子は椅子に座り
ぼやーっと辺りを見回す。

兄の部屋に雰囲気は似ているが
置いてある品がシンプルで片付いている。
小物が多い京子の部屋とは大違い。

「どうぞ」
「わ、ありがとう」
「好みでミルクと砂糖を入れて」
「至れり尽くせり!!」

ん?と京子は首を捻る。
入れられたお茶は一杯のみ。

「チドリの分は?」

「ちょうどミルクが切れたんだ。
 買いに行ってくるから、好きにしていて」
「そんな悪いわ」
「どうせ必要な物だから。
 それと、俺が帰ってくるまで
 誰が来てもドアは開けない」
「はーい」

すぐ戻るから、と
チドリは出掛けていく。

1人残された京子は
ゆっくりをお茶を飲む。

「うん。あったまる」

カップを置き一呼吸。

少し1人で考える時間が欲しかった。
チドリも気を使ってくれたのだろう。
手伝いをしたとき、
ミルクがまだ沢山あるのを京子は見ている。

「1人だったら
 今頃大混乱だったわね」

チドリが側に居てくれて良かった。

兄の、耀のことは結局何も分からないまま。
それでもヒントのような物が
分かった気がする。

あとは、満樹達を信じて祈るしかない。

「みんな、どうか無事でいて」



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