TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」137

2019年03月26日 | 物語「約束の夜」

「わぁ、戒院。どなた??」

なんか、偶然にも程があり
戒院の想い人、晴子が通りかかる。

「ちょっ!!ちょちょちょ!!」

慌ててヨシノの手をふりほどこうとするも、
がっしり捕まれているので
なんか、2人で手を振る状態に。

「???」

とりあえず、晴子も手を振り返す。

「あら、こんにちは。東一族のお嬢さん」
「山一族の方ですか?」

こんにちは、と挨拶をして
晴子は戒院に向き直る。

「素敵な方ね」

あの、でも、と
晴子はこっそりと伝える。

「こんなみんながいる所で、
 その、こんなに、迫っちゃ、ダメよ」

ふふふ、戒院らしいけど、と
やんわりたしなめる晴子。
東一族は、恋愛はフルオープンではなく、
奥ゆかしくが王道なので。

「ちが、ちが、ちが、違っ!!」

「だから、俺は前々から言っているんだ」

そして、さらに偶然が重なり
その現場に晴子の兄、大樹が現れる。

「あぁいう輩は止めておけと
 俺は常々言っている。
 同じ顔なら、成院にしておきなさい」
「も、もう、何言ってるの兄様。
 私、そんな、戒院のことそんな」

それに、と晴子は言う。

「それに、成院にはちゃんと好きな人が」
「杏子様だろ。
 あれはアイドルが好き、と同じ感覚だから、
 叶うわけ無いから、きっぱりと諦めなさいだから」

一連の会話の流れに
心のダメージをうける戒院。

「俺ならずとも、
 成院まで被害が及んでいるパターン」

「お困りのようだね、お兄さん。
 俺達の力になるつもりは無い??」

更に重ねて手を握るツイナ。

「???
 3人はどう言う関係なの??」

私よく分からないわ、と
首を捻り、それじゃあと帰って行く晴子。

「違う!!
 晴子違うんだ!!!!」

「さあさあお兄さん」
「砂一族の村がダメなら
 砂漠の真ん中に、
 置いてきてくれるだけでいいのよ!!」

えーーー。

「むしろ、どうして
 それなら許可すると思ったのか!!?」

一応戒院も東一族の端くれ。
みすみす、危ない目に
合わせるわけにはいかない。

そして、女の子に乱暴出来ないので
強引に手も振りほどけない。

「ええっと、まず、
 囚われの知り合いが砂に居る、とか?」
「いいえ!!」
「ダメだよヨシノ!!それじゃ企画通らないよ」
「そうね!!
 ええ、そう!!
 生き別れの、兄弟姉妹の誰かが、
 砂に居て、私達会いに行きたいの!!」

「嘘つくにしても、俺に話す前に
 そこら辺、設定詰めてきて〜」

そんな事なら無理だなと
戒院は息を深く吸う。

「夜勤明けに、ちょっとキツイけど」

3人の足元が淡く光る。

「んん??」
「あらあ?」

「悪いな、他を当たってくれ」

ひゅん、と次の瞬間、
戒院の姿が消える。

「え、ええ??」
「逃げられ、た!!?」

東一族式、転送術。

(こんなホイホイと
 使うものじゃありません)

遠くから見ていた戒院の兄が
何やっとんだあいつはと
呆れ半分だけど、

それは置いといて。

「どうしましょう、困ったわぁ」
「おかしいな。
 あの兄さんに絡んでいれば
 どうにかなりそうだったんだけど」

俺の先視も鈍ったかな、と
頭をかくツイナ。

今まで、なんだなんだと取り巻いていた
東一族のみなさんも
パラパラと帰って行く。

「このまま帰っちゃ、
 満樹達に報告のしようが無いな」
「あきらめちゃダメよツイナ!!」

「満樹?」

「なぁ、君たち」

声をかけられて振り向くと
路地裏から手招きする人影。

「俺達?」
「そう、ちょっとこちらに」

うーん、と一瞬ためらいつつも
近づくツイナとヨシノ。

その人影はこう、耳打ちする。

「砂一族の村まで
 案内してあげようか?」

「え?お兄さんが?」

しぃ、と人差し指を立てて
彼はフードを少し浮かせる。

そこから見える髪の色。
独特の髪飾り。

「砂一族?」
「砂師匠!!?」

「なんで、
 東一族の村に?」

と、言いかけて、
ヨシノは気付く。

砂一族は、女子供をさらっていく。

「私達、女子供よ!!!」

「君さぁ、声が大きい」

「私、女よ!!どう??女よ!!」

勧誘なのか??

「ええーっと俺としては
 一人の男として見て欲しいけど、
 ん??ヨシノ??なんて??
 あぁ、うん。えーっと、はい!!
 子供だよ!!バブーー!!」

尊厳とは。

「君はそれで良いのか!?」

「そんな事より、お兄さん、さっき
 案内してくれるって言ったよね」
「ああ」

「「ややややったーーー!!」」

テンション上がる2人。

「なぁ、声のボリューム」

声かけたけど若干後悔している砂のお兄さん。

「君たちが大騒ぎしてくれたおかげで
 俺がこの村で動きやすくなった。
 そのお礼、かな?」

人が集まる前に、さあ、と
着いてこいと誘導する青年。

「うーん、大丈夫かな、これ」
「どういう事?」

ツイナはヨシノにこっそりと呟く。

「お兄さんにホイホイ着いていって大丈夫かなって意味。
 裏一族かもしれないじゃないか」
「それは、そうだけど」

と、2人は言う物の、
砂に攫われるのOKで、
裏は警戒する基準、何!?

「ん、警戒してる?
 俺の言葉、信用するしないは
 お任せするよ」

ふうん、とマントの下で
薄く笑う青年。

「どうする、ヨシノ?」
「どうって、そりゃあ、
 砂へ行くために手段は選んでられないわ。
 いざというとき、力はパワー?でしょ!!」


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