外へ出ると、空では月が輝いている。
満樹はひとり、歩こうと、辺りを見る。
が
待ち構えていたかのように、誰かがいる。
「何だ」
「待ってた」
満樹は、彼を見る。
「戒、・・・。いや」
云い直す。
「成院か」
同じ顔に、満樹は、この兄弟を見間違えることがある。
性格は似ても似つかないのに。
満樹は歩く。
「何か用か?」
満樹に、成院も続く。
「次は何をするよう大将に云われたのか、気になって」
「気に・・・?」
満樹は息を吐く。
「何だよ。お前ら兄弟で俺を見張っているのか」
「そう云うことじゃなく」
成院は首を振る。
「俺もたまには外での務めがしたい」
「ついてくるのか」
「そう」
「戒院と同じこと云うなよ」
満樹は嫌そうな顔をする。
「成院は村の守りを任されているんだろう」
「でも、たまには」
「やめておけって」
満樹が云う。
「他一族と下手に接触すると、病をもらうぞ」
「必ずしもじゃない」
「戒院はふらふらしているから、案外、何かもらっているかもな」
「それなら満樹だって!」
「俺は、うん。大丈夫だ」
「何!?」
特に根拠はない。
満樹は立ち止まり考える。
その様子に、成院も立ち止まる。
空を見る。
月が輝いている。
「大将に云ってみたらどうだ」
「何を?」
「外で務めがしたいと」
「いや、云ってはいるんだけど」
「ならいいじゃないか」
満樹が云う。
「いつか、外での務めを任される日が来るさ」
「そうかな・・・」
「ところで」
満樹は、話題を変える。
「戒院からもらったのか?」
「戒から? 何を?」
「おみやげ」
「おみやげ!?」
成院が声を上げる。
「おみやげ?? って?」
「何か買っていたぞ」
「え、何だろう。もらってな、」
「お前から杏子に渡す用って云ってた」
「杏子に!!」
成院の声が裏返る。
「あん」
「ず」
「ええぇええええ!?」
「まだ受け取ってないぞ!」
「そうか」
うーんと、満樹は首を傾げる。
「じゃあ、杏子に直接渡したのかな」
「何!!」
「晴子と杏子用だと云っていた」
「おい! あいつ!!」
務めの話を忘れ、成院は走り出す。
その後ろ姿を見ながら
よし
このまま東を出て、南の務めに行こう。
と、満樹は思った。
思ったが
一応、最後に声をかける。
「戒院が買っていたの、砂一族製のおみやげな」
「あいつはばかか!!」
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