TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」14

2017年09月01日 | 物語「約束の夜」

「おい」

走り出そうとする京子を、誰かが制止する。

「勢いで追いかけるなよ」
「いやいや、でも!」

京子の視線の先は変わらない。
盗人の姿は遠くなっていく。
バックを取り返さないと、西に帰られない。

「私の大切なっ」

「俺たちが取り返してやるよ」
「急がないとっ!」

「まあ、待てって。な、満樹」
「仕方ない」

他一族の村内では、武器や魔法の使用は控えるよう云われているが。

京子は、そこで、はじめて
自分を静止した者たちを、見る。

・・・東、一族?

満樹は弓を出す。
それと、矢。

「ちょっ!? 危ないでしょ、それ!」

満樹は矢じりを外す。

矢を構える。

人通りの多い中、盗人は走り続ける。

「無関係の通行人に当てたら、」
「当てたら?」
「宗主様の尋問だ」

戒院の言葉に、満樹は笑う。

「当てないって」

満樹の手から、矢が離れる。

わああぁあ!?
ええぇええ!!?

人々の悲鳴。

矢は

行きかう多くの人々の間をすり抜け

走る

盗人の背中へ。

「ぐっっ!?」

盗人は

――倒れる。

「・・・!!」
「な?」
「さすが」

歓声。

「おい。盗人が倒れたぞ!」
「取り押さえろ!」

「私のバック!!」

京子は走り出す。

「返しなさいよ!!」

そこに、多くの人々が集まっている。
気絶している盗人から、京子がバックを取り上げる。

「本当に、油断も隙もない!」
「よかったなぁ、嬢ちゃん」
「北の大通りで盗みを働くとは!」
「許さんぞ!」

盗人は、北の商人たちにどこかへと連れられて行く。

京子は息を吐く。

これで一安心、と。

「いやぁ、しかし、東のもんはすごいなぁ」
「西の嬢ちゃんでも助けてやるとは」
「めずらしいことだ!」

気付けば、集まっていた人々は、いない。

北一族の、いつもの大通りの風景。

「・・・あれ?」

東一族の姿も、もはや、ない。



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