圭は部屋を行き来して、荷物を片付ける。
杏子は、その様子を見ながら、
先ほど取り込んだ洗濯物をたたむ。
ほとんどが、子どものもの。
杏子は、横で眠る真都葉を見る。
呟く。
「帰って、きたね」
そう、ほんの少し微笑む。
「杏子、」
圭が杏子の横に立つ。
「・・・えっと」
「圭、一息ついて」
杏子は立ち上がり、お茶を淹れる。
圭に差し出す。
「・・・ありがとう」
「家のことはいいの」
圭が云おうとしたことを、杏子はわかっている。
「少し休んで」
「杏子」
「家のことは、明日からでも大丈夫だから」
圭は、杏子の横に坐る。
お茶を手に取る。
「ありがとう」
「いいえ」
杏子は圭を見る。
云う。
「こちらこそ、ありがとう」
杏子は立ち上がり、真都葉に近付く。
真都葉は、旧い椅子に布を敷き、その上に寝かされている。
落ちないように、杏子が工夫している。
「真都葉」
杏子は、真都葉を抱き上げる。
真都葉は目を開いている。
「起きていたんだ」
「ええ」
「すごい・・・」
「え?」
「いや、起きていることに杏子が気付いたこと」
「ああ」
杏子は、真都葉をあやす。
「あの、・・・杏子」
圭は、お茶を置く。
「何?」
「真都葉を、抱いてもいい?」
杏子は頷く。
「もちろん」
杏子は、真都葉を圭に抱かせる。
「ほら、首を」
「こうかな」
「そう」
真都葉は目を見開いているように見える。
「えっと」
「真都葉、よかったわね」
杏子が云うと、真都葉は笑う。
「これからも、たくさん抱っこしてあげてね、圭」
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