彦四郎の中国生活

中国滞在記

東シナ海、波高し―「台風銀座」・「政治的問題」、「魔の谷」、「魔宮」‥そして、中国渡航

2023-08-28 13:13:31 | 滞在記

 3日後の8月31日(木)の午後3時、日本の成田空港発の厦門(あもい)航空便で中国に戻る予定をしている。9月4日(月)から新学期の大学の授業が始まるからだ。成田空港➡福州空港(中国福建省)の直行便で4時間のフライトとなる。(早朝、京都の自宅から京都駅へ。新幹線で東京駅、成田エクスプレスで成田空港へ。)  

 だが、非常に強い大型台風9号が現在(28日)、フィリピン東北海上にあり、沖縄県の石垣島付近を通り台湾南部へ、そして、31日(木)には台湾海峡から福建省に上陸するという予報されている。31日(木)の午後から夕方にかけては、搭乗する厦門航空便が着陸する予定の福州空港は暴風雨となっているとの予報。おそらく、搭乗予定の航空便は欠航となる可能性がとても高い。欠航の場合の、廈門航空からの連絡は31日の午前中なので、新幹線か成田エクスプレスに乗車している最中になるかと思われる。さあ、困ったことになりそうだ。

 毎年、6月下旬から9月下旬までの3カ月間の東シナ海は台風銀座の季節、特にこの2〜3年の7・8月は、毎週のように台風が通過する。今回は、8月31日がその欠航のピンポイントの日になりそう‥。新たな航空券を入手する必要に迫られることにもなりそうだ‥。

 まあ、この台風もそうだが、中国と日本の間に横たわる"東シナ海の波高し"は、現在の中国と日本の間の政治的緊張関係でもまた、かなりの高波となっている。難破船や漂流の危機が常にあった、古代の時代の遣唐使とは比べられないが、現在、日本人が中国に渡航するということは大きな不安をともなうものとなるのだ‥。

 8月中旬から、中国のインターネット記事報道でのトップニュースは、日本の福島原発処理水の海洋放出問題となっていった。8月24日、処理水の海洋放出が開始されたことにより、これに対する中国政府の批判は一段と強まり完全に政治問題化することとなっている。連日のこの問題に関する多量の報道に、中国国民の海洋放出への不安感も高められ、「国民がスーパーなどで塩を求めて売り切れる」事態も報道されている。(※韓国政府はこの放出については容認しているが、韓国野党「共に民主党」(李在明代表)は、中国と軌を一にして批判・抗議行動を繰り広げている。)

 8月25日付朝日新聞には、「福島第一処理水放出―国産全水産物 中国が禁輸/日本政府批判、撤回求める」「"想定外"の全面禁輸 中国政治問題化 議論かみ合わず」の見出し記事。8月27日付同紙には、「"中国からの嫌がらせ電話"処理水放出巡り 日本大使館・飲食店(福島県内の) ・公的機関などへの着信多数」、28日付同紙には「日本人学校に投石―処理水放出に反発か」などの見出し記事が掲載された。

 この8月28日から予定されていた、日本の公明党(山口代表ら)の訪中は、中国政府からの通告で延期となった。中国のインターネット記事にも、「日本党首 訪華被延期―中方明確告知:時期不合適」の見出し記事。8月26日付朝日新聞には、この問題への中国側対応の問題点を指摘する社説記事。

 このような状況下、中国北京の在中国日本大使館は25日、東京電力福島第一原発処理水の海洋放出を受け、中国の在留邦人に対し、「外出する際は不必要に日本語を大きな声で話さないなど慎重な言動を心がける」といった注意を呼び掛けるメールを発信している。「不測の事態が発生する可能性は排除できない」とも発信しており、注意喚起を呼びかけている。

■この3月下旬、3年ぶりに中国に渡航し、驚いたことの一つに「中国での日本料理」の大人気ブームが起こっていたことだった。私が暮らす福建省の福州市内では、3年前の約5〜6倍は日本料理の店(中国人が経営)が増えていた。海鮮寿司などもそうだが、特に人気が高いのは「日本式すき焼き」。このように日本食ブームの中国だっただけに、今回の福島第一原発処理水海洋放出問題を巡る政治問題化は、とても残念なことだ。

 2014年に制定発布された中国の「反スパイ法」が、この7月1日には、さらに強化された「反スパイ法」となり、発布されることとなった。この法律には、具体的なスパイ行為の定義がないため、中国在住の外国人たちの不安はさらに大きくなった。(※「写真撮影や購読する書籍、会話内容などにも注意が必要」「反スパイ法はどこに"地雷"があるか分からない"ヤバイ法律"」などと、7月上旬の朝日放送報道番組「セイギのみかた」で述べられていた。)

 今年7月30日に、NHKスペシャル「ヒマラヤ"悪魔の谷"―人跡未踏の秘境に挑む」が放映された。

 地球上をくまなく探検し尽くしてきた感のある人類。しかし、この地球に、まだ人類が足を踏み入れたことのない場所がある。巨大な大地のの裂け目、"悪魔の谷"と人は言う。現地住民が「あの谷には水の悪魔が住んでいる。中に入ると命はない」と語る場所とは‥。世界の屋根・ヒマラヤの奥深く、標高7000m級の山々が並び、立ち並ぶ奇岩の足元。岩山の間が深く切れ込み、漆黒の闇がのぞいている。幅十数m、深さ200m以上~400m。人類史上、谷底を見た者はいない漆黒の闇の渓谷が数キロにもわたって続く。谷の名は「セティ・ゴルジュ」。この人類未踏の谷底に、ロープ一本で降りて挑む者が現れた。世界的な渓谷探検家の田中彰(1972年生まれ・50歳)と大西良治(1977年生まれ・46歳)だった。

 この"悪魔の谷"への挑みは、まさに命がなんぼあっても足りないと思わせる、超超超(超が十個ほどつきそうな)危険極まりない、恐ろしい挑みだったことが、この番組で伝えられた。「体力・気力・技術、挑戦への熱き思い」」、そして、経済力(NHKの全面支援)がなければ挑めないが、彼らが40代後半〜50歳という年齢にも驚かされた。そして、挑んだ"悪魔の谷"の渓谷の谷底を数キロ踏破し、命を失うことなくキャンプ地に帰還した彼等‥。

 "悪魔の谷"の渓谷から生還できた、ものすごい冒険(探検)だと思った。

 映画「インディ・ジョーンズ」のシリーズ、第二作目は、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(1984年)。インドにある魔宮に挑むインディ・ジョーンズが描かれた作品だった。私もまた、2002年に、モンゴル・ゴビ砂漠での恐竜発掘調査で、「地獄のヘルメンツァフ」と呼ばれる、かなり恐ろしい場所に行ったこともあった。

 "悪魔の谷" "魔宮"、"地獄のヘルメンツァフ"、おそろしい場所を彷彿させる名前だが‥。「東シナ海波高し」もまた、前期の3つの魔や地獄とは種類が違いはするが、このこと(おそろしさや不安)を少なからず彷彿させる場所である‥。

■短期渡航ビザ問題―相互主義の原則に基づき、中国人の日本渡航へのビザ(査証)問題の再考を求む

 2004年から、日本人やシンガポール人が中国に短期(15日以内)で観光や出張で行く場合、査証(ビザ)取得は免除されていた。つまり短期の場合は「ノービザ」で中国に渡航できていた。(※中国人が日本やシンガポールに行く際は、ビザ取得が必要で、相互主義の原則とはなってはいなかった。このため、私が2013年に初めて中国の大学に赴任した時に、学生からは「不平等」だの声があった。中国政府は、日本・シンガポールと南洋の小さな島国など4カ国のみの国民のノーピザを認めていた。)

 しかし、2020年の1月から始まった新型コロナパンデミックのため、中国政府は2020年春からこの「4カ国のノーピザ」の一時停止を発表した。そして、2023年の3月、中国は「ゼロコロナ政策」の廃止に伴って、シンガポールには「ノーピザ」を復活した。復活の条件として、中国人がシンガポールに短期渡航する場合の「ノービザ」が実現したからだ。これは相互主義の原則に基づくものだったので、当然の中国側の要求でもあった。だが、日本政府は、中国人が日本に渡航する場合の「ノービザ」を認める方向にはいまだ至っていない。このため、日本人が短期に中国に行く場合の「ノービザ」の復活の見通しは立っていない。これは、中国の要求が私には当然に思えるので、日本政府は再考をして、早く中国人が日本に短期の「ノービザ」で訪日できるようにしてほしい思っている。

 日本人の末裔が多く住むブラジルもまた、日本人がブラジルに90日以内渡航の場合は「ノービザ」だった。(ブラジル人が日本に渡航する場合はビザが要求された。)  このため、ブラジルのルーラ大統領はこの3月、相互主義に基づかないとして、このままでは、日本人の「ノービザ」を廃止する旨を日本政府に通知した。これに驚いた日本政府は、急遽、ブラジル人が日本に90日以内の渡航の場合の「ノービザ」を認めると発表した。ブラジル在住の日系人たちや、現在、日本で就労しているブラジル人たちの喜びは大きいものがあった。