浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

多彩な洋琴家ダルベールによるユージン・グーセンス作曲「笑う小品」

2009年10月10日 | もう一つの顔
昔、友人Iが師匠のN氏からヴェリタス・レコヲドなるものを入手してきて、僕達に紹介してくれた。其の中にはゴドフスキやギーゼキングなどの電気前の復刻があった。全く知らない世界の神秘的な響きに聴き入ってゐたことを想い出す。探すのになかなか苦労したが、その懐かしいヴェリタス盤を棚から出して来た。

聴いてゐるのは、リストの弟子、ダルベールが独逸で録音した英國の作品で、作者は指揮者として有名なユージン・グーセンスである。人形芝居「パンチとジュディ」の音楽だが、グレゴール・ベンコ氏の説明によると、ダルベールが独逸人と名乗るやうになる以前の録音のやうである。この短い作品は、演奏するには全く大胆奇抜な音楽であり、まして当時、録音するなど誰も考えないことだったやうである。

録音技師に加えてダルベール本人も一緒になって笑ったり手を叩いたりしてゐるやうで、貧しい音の中からも明るく愉しい雰囲気が見えて来る。そして笑い声と拍手が止むやすぐに初めから弾き直すのである。聴いてゐて思わず笑みがこぼれる。こういったレコヲドはそう沢山あるものではない。これは、其の内の貴重な1枚である。

指揮者ユージン・グーセンスは70曲あまりの作品を残してゐるらしいが、それほど知られてゐないやうだ。しかし、この小品を聴く限り、作曲の才能もユーモアのセンスもたいしたものだと思ふ。あまりにも愉しい曲なので、皆さんにも聴いてもらいたい。

盤は、英國Veritas Records Inc.によるSP復刻LP VM110。


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