浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

コルンゴールド「からさわぎ」自作自演 提琴独奏はトッシャ・ザイデル

2007年09月20日 | 自作自演
忘れられた作品・作曲家にしようか、提琴のカテゴリーに入れようか悩んだ挙句、自作自演に入れることに決めた。今日の録音はかなりの珍品のやうだ。

維納のかほり漂ふ作品をハリウッドで書き続けた異色の作曲家、エーリッヒ・ウォルフガンク・コルンゴールドは今回2度目の登場となる。この演奏は、1941年7月31日にVictorによって録音されながら、永らくお蔵入りになってゐたものだ。こうやって聴くことができるのも、英國の楽器商ビダルフ氏のお蔭である。

作品は、もともと管絃樂と提琴の為に作られたものだが、作者自身によって洋琴伴奏に編曲されたものと思はれる。その伴奏にコルンゴールド自身が当たってゐるのだ。しかも提琴独奏は個性溢れるザイデルということだから、お蔵入りにした会社の考えが理解できない。

シェイクスピアの「からさわぎ」を基にした作品で、「結婚式の朝」「時計の行進曲」「庭の場面」「仮面舞踏会」の4曲が収められてゐる。中でも「結婚式の朝」と「庭の場面」での甘美な旋律はクライスラーの小品と並び、高く評価されるべき芸術作品だ。「時計の行進曲」で見せる威厳のあるしかめっ面にも維納の風情が感じられる。「仮面舞踏会」は長い序奏に続いて軽快なパッセージが登場するが、常動曲のやうな目まぐるしい動きの中にも上品さを忘れていない。4曲とも美しく個性的で、組曲としても実によくまとまってゐると思ふ。演奏會で取り上げられることはあるのだらうか。

盤は、英國BiddulphによるSP復刻CD LAB138。


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