浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ヨハンナ・マルツィのバッハ協奏曲第2番 極めて良質の音楽

2007年08月19日 | 提琴弾き
神戸に帰ってゐる間に買い物に費やした時間は膨大だ。おそらく田舎での1年分よりも数倍多いと思ふ。神戸に住んでゐるときには、休みの日くらいは人ごみを避けてどこか緑の中でオゾンをたっぷりと吸いたいと思ってゐた僕が、足が浮腫んでも三宮を歩き回る。この変貌ぶりを誰よりも驚いてゐるのは嫁さんだ。

所詮は無いものねだりなのだらうか、困ったものだ。僕には「風来坊」が似合ってゐる。

歩き回るうちにこのCDを見つけた。正確に言ふと先に見つけたのは嫁さんだった。ヘッドフォンをかぶりうとうとしてゐる嫁さんが何を聴いてゐるのかと見るとこのCDがおいてある。マルツィのバッハと言へば、前にシャコンヌのあまりの美しさに絶句したことを書いたが、この協奏曲もライブでありながら、なんとも完成度の高い、しかも実に品格のある音色と自然な流れを持った最高級の演奏だった。

伴奏を務めるのはアンドレ・クリュイタンス指揮紐育フィルハーモニック交響團で、クレディットによると1957年11月10日の紐育カーネギーホールに於けるライブ録音となってゐる。録音状態も極めて良好で、会場の雰囲気も生々しく伝わって来る。

それにしても、マルツィはどうしてこれほど素晴らしいのだらう。特に強烈な個性を持つ提琴家といふわけでもないし、解釈も実にオーソドックスである。最近の人の演奏でもいいやうな気もするのだが、どこか非常に大きな違いがある。先ず思ふのは音色の違いだらうか。耳に優しい奥深いこの音色は彼女の持つ提琴の独特の色合いだらう。加えてその場の空気に合わすことのできる絶妙の表現感覚だらうか。だから、ライブでは時として激しい情感を表出させることもあるのだらう。クリュイタンスの伴奏も、紐育フィルとは到底思へぬほど端整だ。

盤は、独逸ArchipelによるリマスタリングCD ARPCD0298。



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