浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

アドルフ・ブッシュによるシューマンの提琴奏鳴曲第1番

2009年03月29日 | 提琴弾き
ここZ共和国ではこのところ鬱陶しい曇り空が続く。故郷を離れて不安な日々を送ってゐる僕は、今の心境に合った作品を毎日探し続けてゐる。シューマンの室内樂などはいかがなものだらう、と思ひついてブッシュとゼルキンによる提琴奏鳴曲のLPレコヲドを取り出した。 

この奏鳴曲は短い作品だが構成のしっかりとした真の独逸音楽である。第1楽章の憂ひのある主題をブッシュは感情たっぷりと表現してくれるので、僕はこの音楽に浸ることができる。現代の整然とし過ぎた演奏スタイルでは僕の体は受け付けないやうにできてゐるらしく、ブッシュの演奏くらいに適度のポルタメントを使用してくれた方が自然に感じることができるのである。また、ゼルキンとの息の合った厳しい表現も随所に聴かれ、「ライン交響曲」を想はせる第3楽章ではきびきびとした音楽運びに魅了される。

久しぶりに聴くLP盤だが、時間的にゆとりのないときは、ジャケットから中袋に入ったLP盤をそっと取り出し、ターンテーブルののんびりとした回転に慎重に針を乗せるといふ、この簡単な作業が億劫に感じられるのだから世の中、随分とせわしくなったものだ。今日は、せっかく新調したCD再生装置には見向きもせずにLP盤を聴いてゐたい気分なのだ。

盤は、国内コロムビアのLP DXM-177-RC。


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