田中宇氏の国際ニュースによれば、米国のイラク戦争勝利宣言から8年後の今日、イラクではシーア派のマリキ政権が確立し、米国の大手石油会社エクソン・モービルが追い出され,中国とロシアの石油会社との採掘契約が成立しているという。
シーア派マリキ政権がやはりイランとの結びつきが強く、反米の姿勢をはっきりと打ち出しているということです。
イラク戦争はイランの勝利に終わったということです。
田中氏の解説は中東におけるイランの影響力の増大という事実をはっきり感じさせます。アメリカはイラクで政治的に敗北した状態で、完全撤退します。
イラク帰りのアメリカ軍人が報告していましたが、劣化ウラン弾による被害が大きく、現地では新生児の死亡率が高く、また奇形児の出産が非常に多いということです。
以前、NHKでベトナムでの枯葉剤による被害を報告していました。その時は奇形の様子を映像で見ましたが、非常に悲しい思いをしました。人生にはこんなことがあるのだと。
ベトナムでやったのと同じことを、今度はイラクでやって、アメリカ軍は去っていくのだ。罰せられる事もなく。
皿屋敷のお七のように、イラクの犠牲者たちの幽霊が毎晩チェイニーとラムズフェルドの眼前に現れる時、両者は何と言い訳するのでしょう。
イラク戦争の動機については諸説ありますが、今店頭に並んでいる「軍事学の常識」という本の中で兵頭二十八氏がこんなことを述べています。
アメリカの軍事関係者にとってパキスタンの核実験が脅威であった。あんなに貧しく技術水準の低い国が核を持ってしまうのなら、アメリカに敵意を持つ国が核を手に入れるのも容易だ。
つまりキューバ危機の再現です。ただし、あの時は相手が一人で、しかもフルシチョフは意外に冷静で信頼できる人間だったが、今度は、あちこちの狂犬のような指導者たちが相手である。
この恐怖はキューバ危機を知っていれば理解できると思う。
ケネディとフルシチョフの間では了解できていた。ただし、強硬派の空軍の爆撃機がキューバに向かえば、カストロは反撃としてアメリカ本土に向けて核ミサイルを発射していた。
強硬に爆撃を主張していた空軍が独断で行動しなかった。この一点が異なっていたら、アメリカ本土に原爆が落ちていた。
フルシチョフは、いかなる場合でも核ミサイルは発射するなと厳命していたけれども、キューバ現地のソ連軍ミサイル部隊の司令官は命令を無視し、カストロの考えに従って発射するつもりでいた。
イラクで核兵器が発見されなかったことで、戦争理由は否定されてしまったように言われているけれども、核攻撃される恐怖そのものは嘘ではなかった。
イラクでは秘密が守られていたので核開発の実態はCIAも全く把握できなかった。ただし危険性は否定できなかった。特 に、チェイニーは独自の情報網を持つので、それによって危険性が大と判断したのかもしれない。
敵国が核兵器を持つことへの恐怖という根本問題を提起した。これがイラク戦争が我々に与える教訓だと考えれば、まったく無意味な戦争とも言えない。
国の政治指導者と軍部の関係が良好であれば、戦争の起こる確率は1/3だけ減る。相手国も政と軍が一体であれば、さらに1/3だけ危険性は減る。そうして両国が真の了解に達すれば、戦争は起こらない。
結局戦争をするのは軍隊なのだから、一方が他方に戦わずして屈する以外に戦争をなくす方法はない。日本の室町時代の戦国の世を終わらせたのは文民の政治家だろうか。
世界的に現在は戦国時代である。一番強い武将の家臣となって生き残るしか道はない。
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