たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

5巻23-25章

2023-10-31 19:07:35 | 世界史

【23章】

悪い予兆の原因が除去され、将来が期待された。ヴェイイとデルフィの予言者の説明が常識の範囲だったので、何をすればよいか、はっきりしていたからである。偉大な司令官、M・フリウスを執政副司令官に選び、やるべきことはすべてやった。長年決着がつかず、何度も敗北したヴェイイ戦に勝利し、ヴェイイの占領が発表されると、市民は喜んだ。市民は勝利をあきらめていたので、奇跡が起きたように感激した。元老院が感謝の祈りを命令する前に、多くの女性が神殿に集まり、神々に感謝した。元老院は四日間祈りを続けるよう命令した。通常感謝の祈りの期間はもっと短かった。今回の勝利は以前の勝利をはるかに超えて偉大な勝利だった。独裁官が帰還すると、身分を問わず、多くの市民が彼を見ようと集まった。勝利の帰還をした司令官を、市民は熱狂的に歓迎した。数頭の白馬が引く馬車に乗り、カミルスが市内に入ってきた。彼は人間を超えた英雄に見えた。しかしローマ人には生きた人間を神聖化する習慣がなく、この様子は人間にふさわしくないと思った人も少なくなかった。独裁官が主神ユピテルのように白馬に引かれて現れると、人々は神を冒とくする行為ではないかと思った。独裁官の姿は輝かしいものだったが、人々の心が彼から離れる遠因になった。ローマに帰ると、独裁官は、女王である神ユノーの神殿と母神マトゥタの神殿をアヴェンティーヌの丘に建てる命令書にサインした。神々と国家に対する任務を完了し、カミルスは独裁官を辞任した。しかしアポロ神への約束が残っていた。カミルスは戦争の直前の祈りで、アポロに戦利品の十分の一を捧げると誓っていた。カミルスがやり残した宗教的な義務について、神官団は市民が果たすべきと決定した。しかし兵士たちに略奪品の一部を返還させるのは難しかった。最初から戦利品の一部をこれに充てるべきだった。結局容易な方法に頼ることになった。権威ある神アポロと彼の壮大な神殿にふさわしい黄金の王冠を献呈するために、兵士や家庭に献金を求めた。ローマ人の宗教心に訴えたのである。

彼らが獲得した戦利品の十分の一に相当する額を国庫に納めることになった。アポロへの献金を要求され、平民はカミルスを嫌うようになった。

ちょうどこの時ヴォルスキとアエクイの使節がローマに来て、和平を求めた。ヴォルスキは平和の約束を何度も破っていたので、ローマは彼らと妥協したくなかったが、長年の戦争で疲れていたので、彼らの要求を受け入れた。

【24章】

ヴェイイ占領の翌年、6人の執政副司令官が選ばれたが、その中に二人のプブリウス・コルネリウスがいた。コッスス・プブリウス・コルネリウスとスキピオ・プブリウス・コルネリウスである。残りの4人は M ・ヴァレリウス・マクシムス(2回目の就任)、カエソ・ファビウス・アンブストゥス(3回目の就任)、L・フリウス・メドゥリヌス(5回目の就任)、Q・セルヴィリウス(3回目の就任)だった。

二人のコルネリウスがファリスク人をとの戦争に決着をつけ、ヴァレリウスとセルヴィリウスがカペナを処理することになった。どちらの場合もローマ軍は戦闘も包囲もせず、郊外で略奪し、農家の作物を持ち帰った。果実はすべてもぎ取られ、畑には何一つ残らなかった。カペナは損失に打ち砕かれ、ローマに対する抵抗をやめた。彼らは和平を求め、ローマは了承した。しかしファリスク人はローマとの戦争を続けた。

この時ローマの国内で二つの大きな問題が発生した。最初の問題はヴェイイへの移住だった。この問題を解決すために、政府はヴォルスキとの国境地帯に植民地を建設することにした。3000人の市民が植民に応募し、それぞれに幅12ユゲラ(1ユゲラ=30メートル)、長さ37ユゲラの土地を与えることになった。土地の区割りをするため、三人の役人が任命された。しかしローマ市民は土地の供与を問題のすり替えとして、政府を軽蔑した。それは子供だましのあめ玉だまであり、人々が本当に求める物を忘れさせるためのごまかしだったからである。「どうして平民はヴォルスキの地方へ追放されなければならなないのだ。もっと近くに、裕福なヴェイイに土地があるではないか。ヴェイイの土地はローマの土地より地味がよく、広い」と人々は思った。軍事力を失ったヴェイイは安全なだけでなく、公共の建物や個人の家そして広場も立派であり、ヴェイイはローマ以上に素晴らしいとローマの人々は考えていた。後に、ガリア人によってローマが蹂躙されると、ヴェイイに移住したいという願望を持つ市民がさらに増えた。また、少し違った考え方をする人もいた。ヴェイイへの移住を一部の平民と一部の元老だけに制限し、ヴェイイとローマを一つの国家に統合するのが現実的だというのである。しかし、貴族はヴェイイへの移住に反対し、国家統合にも反対した。彼らは言った。

「このような提案が市民会議で票決されたら、我々は人々の面前で自決する。一つの都市でさえ、国内が分裂しているのに、二つの都市になったら収拾がつかなくなる。諸君は征服する側となるより、征服される側になりたいのか。敗北したヴェイイが敗北前より強い国になるのを望むのか。ローマ市民の多くがローマを捨て、ヴェイイに行ってしまい、貴族と愛国者だけが取り残されるだろう。しかしそうはならない。いかなる大国も、ローマ市民に故郷を見捨てさせることはできない。T・シキニウスはローマ市民を連れて、ヴェイイに行き、ヴェイイに新しい国家を建設しようと考えているが、誰も彼について行かないだろう。シキニウスはローマを建設したロムルス、神の子であり自身も神であるロムルスを見捨てようとしているのだ」。

【25章】

もう一つの問題はアポロへの奉納金だった。奉納金を市民に負担させようとした結果、おぞましい喧嘩が起きた。元老院が護民官の一部を味方に引き入れたので、平民は暴力に訴えようとした。これに対抗して、貴族は配下の若者たちを差し向けた。叫び声に続き乱闘が始まろうとすると、元老の重鎮が駆け付け、手下の者たちに「思う存分痛めつけろ。殺してもかまわん」とけしかけた。群衆は喧嘩相手が地位が高く家柄の良い若者だったので、暴力を加えるのをためらった。群衆は他の貴族に襲い掛かることもなかった。カミルスはあちこちで演説した。「市民が怒るのは、やむを得ない。彼らはあれこれ心配事があり、宗教的な任務のためにお金を出す余裕がない」。

神への奉納は国家がすべきことなのに、十分の一税というかたちで、市民に負担させ、国家は義務を放棄した。これについて、カミルスの良心は知らんふりできなかった。「私はアポロに戦利品の十分の一を奉納すると約束したが、戦利品には兵士が持ち帰らなかった、ヴェイイの市内の不動産が含まれる。また兵士はヴェイイの郊外と支配地には手を付けなかった。郊外と支配地の動産と不動産も戦利品に含まる」。

カミルスが厄介な問題を提起すると、元老院は困り果て、神官団に判断を委ねた。カミルスは神官団と話しあうことになり、その結果、神官団は次のように決定した。

「ローマが所有することになった、ヴェイイの全ての財産の十分の一をアポロに奉納しなければならない。」。

神官団はカミルスの主張を認めたのである。国庫が資金を提供し、執政副司令官が黄金を購入することになったが、国庫には十分な資金がなかった。女性たちが話し合い、宝石類を国庫に寄付するとにした。元老院は女性たちの寛大な行為に心から感謝した。言い伝えによれば、女性たちが聖なる祝祭や競技に行くとき馬車が用意され、祭日も平日も彼女たちは二輪車で送り迎えされたという。彼女たちが寄付した宝石は適正な金額で売却された。黄金の深皿が作られ、デルフィまで運ばれた。アポロへの奉納という教的な大問題が解決すると、護民官は煽動を開始した。人々の不満が国家の指導者たちに向けられた。中でもカミルスが最大の標的になった。「ヴェイイで獲得した戦利品を、カミルスは国家と神々与えてしまった」と人々は言った。戦利品をこのようなことに振り向けることは、平民にとって無駄遣い等しかった。

 

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5巻20ー22章

2023-10-24 10:51:55 | 世界史

【20章】

勝利が確実になり、間もなくローマ軍は裕福な都市を手に入れるだろう。これまでの勝利で獲得した戦利品の合計をはるかに超える富を獲得するだろう。この時独裁官は困難な問題に直面した。兵士に惜しみなく分配しないなら、兵士たちは怒るだろう。しかし兵士たちに気前よく分配すれば、元老院が怒るだろう。彼は元老院に使者を送り、次のように伝えた。

「天の助けにより、また私の配下の兵士のたち粘り強い奮闘により、数時間以内にヴェイイはローマの軍門に下ります。ついては、戦利品の配分について指示をいただきたい」。

元老たちの意見は分かれた。執政副司令官 P・リキニウスは最初に父の意見を求めた。彼の父 P・リキニウス・カルブスは答えた。「戦利品が欲しい者はヴェイイ正面のローマ軍陣地に行くように、と市民に知らせるのがよい」。

アッピウス・クラウディウスはこれに反対した。「そのようのように寛大な提案は慎むべきだ。そのような寛大さは前代未聞である。そんなことは無駄使いであり、不公平で、無謀だ。敵から奪った財貨を国庫に納めるのを不正とするなら、度重なる戦争の結果国庫は空になる。戦利品の売却で得た資金はすべて国庫に納め、その中から兵士の給料を払えばよい。そうすれば平民の税負担が少なくなる。全市民が得をしたと感じるだろう。また、勇敢な兵士が獲得した戦利品が、怠け者に横取りされずにすむ。怠け者はいつも獲物を狙っている。それとは逆に、真っ先に労苦を引き受け、危険を顧みない人間は戦利品の分配にそれほどこだわらない」。

リキニウスは反論した。「戦利品の売却で得たお金はいかがわしく、忌まわしい。加えて、平民が訴訟を起こす原因になり、反乱や革命の引き金になる。膨大な戦利品を平民に贈り物として与え、平民との関係を良好ににしたほうがよい。何年もの間税金に押しつぶされ、疲弊した人々は戦利品を得て、楽になり、人生の幸福を思い出すだろう。彼らは戦争で疲れ果て、老人のようになったのである。彼らが自分の手で敵から勝ち取ったものの一部を家に持ち帰るなら、護民官のおかげで何倍もの利益を得るより、喜びが大きく、国家に感謝するだろう。独裁官カミルスがこの問題の解決を元老院に委ねたのは、自分が人々の誤解と憎しみの対象になるのを避けるためだった。元老院も人々に憎まれたくないなら、平民に譲歩し、勝利がもたらした戦利品を彼らに与えたほうがよい」。

これが安全な方法であり、元老院の人気を高めると思われた。元老院の決定が市民に通知された。「戦利品を得るにふさわしい者は陣地にいる独裁官のところに行くように」。

【21章】

大勢の市民がローマ軍の陣地に押し寄せた。しかし戦争はまだ終了していなかった。独裁官は神々の加護を祈ってから、兵士に戦闘の準備を命令した。独裁官は次のように祈ったのだった。「デルフィのアポロ神様、私はあなたが与える霊感と導きに従い、ヴェイイを破壊します。そして戦利品の十分の一をあなたに寄贈します。ヴェイイの守護神である女王ユノー神様、我々の勝利後、輝ける町ローマにお移りください。あなたを迎えるにふさわしい神殿を用意しております」。

数より兵数が多いローマ軍は全方位からヴェイイを攻撃した。これは肝心な作戦、地下道から市内に出る作戦から敵の目をそらすためだった。ヴェイイと外国の予言者たちはヴェイイの敗北を警告していた。またヴェイイで戦利品を得るために、神々が招待されていたし、ヴェイイの神々はヴェイイを去り、敵国の新しい神殿に移るよう求められていた。ヴェイイに最後の日が迫っているにもかかわらず、ヴェイイの市民は注意を払わなかった。城壁はもはや役に立たず、最後の拠点である市内の砦の地下にはローマ兵があふれていたが、ヴェイイの市民は城壁の安全を信じていた。市民は武器を持って城壁に駆けていき、祖国を守ろうと必死だった。ローマ兵は何日も包囲を続けるだけで、何の動きもなかったのに、突然気が狂ったように四方の壁を登り始めたので、彼らは不思議に思ったが、ローマの将軍の作戦には思い至らなかった。この時、ある噂が広まった。ヴェイイの王が神に犠牲を捧げている時、予言者が言った。

「生贄(いけにえ)の動物の身体の一部を切り取った者に勝利が与えられるだろう」。

予言者の言葉を、地下道にいたローマ兵が聞いた。彼らは地上に出て、生贄の一部を切り取り、独裁官に持って行った。しかし、遠い昔のこうした話はあり得る話というだけで、真偽はわからない。このような話は出来事の特異性を強調するために語られるとが多い。

選抜された兵士たちが地下道に集まっていた。彼らは地上に飛び出し、女神ユノーの神殿を攻撃した。ユノーの神殿は砦の中にあった。(日本訳注:砦は城壁が破られた後の最後の防衛拠点であり、市内で最も防衛に適した場所にある)。

ローマ兵の一部は砦の後側の壁を攻撃し、別の兵士たちは門を押してかんぬきを壊そうとした。さらに別の兵士たちは近くの家々に火をつけた。女性や奴隷が家の中から石や瓦を投げてきたからである。威嚇する声や絶望的な苦しみの叫び声が入り乱れ、女性や子供の泣き声がした。間もなくヴェイイの市民は市壁と門の外へ追い出された。ローマ兵は密集して城内に入った。別のローマ兵は城壁をよじ登った。城壁の上に守備兵はいなかった。市内の至る所で戦闘が起きていた。しばらく残酷な殺戮が続いたが、やがて戦闘はまばらになり、独裁官は伝令を派遣し、武器を持たない市民を攻撃してはならないと兵士たちに命令した。戦闘が終了し、非武装の市民が最初に降服した。兵士たちは独裁官の許可を得てから、戦利品を探しに行った。彼らは予想以上に大量の、しかも高価な戦利品を獲得した。この様子を見た独裁官は天に向かって両手を上げ、次のように祈ったと伝えられている。

「神々の中の誰かがローマと私の幸運が大き過ぎると判断し、妬む気持ちからローマと私に同じような災難を与えるかもしれない。災難が避けられないにしても、破滅的でないことを願います」。

言い伝えによると、彼が祈りながら振り向いた時、何かにつまづいて転んだ。これは数年後カミルスが断罪され、ローマが占領されることの予兆だったと考える人々がいた。

この日ローマ軍は多くのヴェイイ兵を殺し、ぼう大な富を獲得した。

【22章】

翌日独裁官カミルスは非武装の自由民を奴隷として売却した。彼は売却金を国庫に納めた。平民は不満だった。彼らは戦利品が自分のものになったので、捕虜を売却して得た金も自分たちのものだと思うようになった。独裁官は元老院の支持が欲しくて機嫌取りをした、と平民は思った。戦利品を兵士に与える決定をした元老院に対して、平民は感謝しなかった。彼らが感謝したのはリキニウス家の人々に対してである。戦利品に関して、兵士に配慮すべきと提唱したのは老リキニウスであり、彼の息子が元老院の決定を促したからである。兵士たちはヴェイイ市中の財貨をローマに持ち帰っただけでなく、神殿に納められた奉納物をもローマに運んだ。そして最後に、略奪者としてではなく、神を崇める者としてヴェイイの神々をローマに移した。ユノー女神の移動については、全兵士の中から特に選ばれた者たちがこれに従事した。彼らは沐浴してから、白い衣装に着替え、うやうやしく神殿に入り、恐る恐る神像に手を触れた。エトルリアの宗教においては、特定の家の神官だけが神体に触ることを許されていた。この時、兵士の一人が若者のの気軽さと陽気さから、女神に話しかけた。「ローマに来ませんか」。

すると女神がうなづいたので、兵士たちは驚いた。それだけでなく、女神はしゃべったと伝えれている。「喜んで行くわ」。

ともかくユノー女神は無理やりではなく、自分の意思で足取り軽くローマに移ったのである。彼女は支障なくアヴェンティーノの丘にやって来て、そこを永久の住まいとした。ローマの独裁官カミルスがここに女神をお呼びしたのであり、彼は約束通り神殿を建てた。

以上がヴェイイ陥落の経緯である。ヴェイイはエトルリア連盟の中で最も繁栄した都市であり、最後の段階においても偉大さを発揮した。10年にわたる包囲に耐え、多くのローマ兵を死傷させてから、ついに運命に屈した。正面からの攻撃に敗れたのはでなく、地下道を掘るという奇策に敗れたのである。

 

 

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