たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

アサド政権弱体化でシリアは地獄の内戦に突入

2012-12-30 06:43:36 | シリア内戦

12月の初目にオバマ大統領とクリントン国務長官がシリア政府に対して警告を発しました。もしシリア国民に対して科学兵器を使用するなら、重大な結果を招くであろう、と。重大な結果とはもちろんアメリカとの戦争です。  

この背景には、この時期反政府軍の攻勢があり、追いつめられた政府側が反撃にそなえてサリンの前段階の化学物質を準備しているという情報があったからです。

実際、シリア北部では反政府軍が支配地域を広げており、中心都市アレッポも東部地区の一部を制圧しました。

一度敗退した反政府軍が再び攻勢に転じたのは、前回の戦闘に原因があります。政府側は空からの爆撃や戦車による砲撃を行うので、どうしても一般住民が巻き添えになる。それを見た若者が反政府の感情を抱き、反政府軍に加わる。また政府軍の兵士や将校も軍を脱走し、反政府軍に走る。

アサド政権としては国内の反政府軍の兵士の数を増やしてしまうことは解決の見   込みがなくなることである。

政権の側から見ると、今回の混乱の元凶は国外から送り込まれた原理主義イスラム戦士集団だったと思う。最初の戦闘は彼らとのものだけだったのだから。

戦車で攻めて来る正式の軍隊ではないとはいえ、一度追い払っても、また新たに武器と人員を整えて攻撃してくる敵はいかなる政権にとっても脅威である。

イスラム聖戦士をシリアに送り込んだサウジアラビアとカタールは今回の戦争の一番の責任者である。両国はシリアに対して見えざる戦争をしかけた。

武器を十分に与えられている外国人イスラム聖戦士集団が戦い続けたことが、国内の反政府軍の兵士の増加につながったと思う。

 

外国人イスラム戦士と国内の反政府軍の違いがよくわかる動画を見ました。北シリアの反政府軍を取材したものですが、画面に映っている兵士の顔がそもそも戦争をしている人間の顔ではなくて、目つきもおだやかで、全体的に普通の生活をしている人の雰囲気です。全然緊迫感がありません。それで、武器もお金もないことを嘆いて、「アメリカは嘘つきだ。援助すると言ったのに。それともトルコにいる反政府の代表部の奴らが、もらったものを自分のポケットに入れているのか。」と愚痴をいっています。

もっと傑作なのは、武器がないから、自前で武器を作るというのです。近くに軍需工場があるという話ではなくて、仲間に鉄管を作る職人がいるがいるから、彼に作ってもらうのだというのです。その彼が2メートル弱の長さの鉄パイプを手に持って、これで迫撃砲を作るのだ、というのです。笑い話並みの現実です。砲身は余程丈夫に作らないと爆発して、射手が吹き飛ばされるのでは、と私は心配になりました。

それでも、迫撃砲は出来上がって、実験だというので見物人が集まってきて、実験したそうです。実験の映像はなく、失敗だったという話です。

国内の反政府軍の様子がよくわかる動画でした。

 

地元の反政府軍はもともと武器を持たない普通の住民であるとしても、今後中央政府の力が弱まり、政府軍から離脱する将校や兵士の数が増えると、同時に政府軍の武器も流出し、各地の平民反乱軍が本格的な武装集団に成長するかもしれない。

 

シリア国内の各地で自生した反乱グループは100を超えるとい言われています。しかも各グループはバラバラでまとめるのが難しいといいます。バラバラなままで、各自が本格的な武装集団に成長したらどうなるのでしょう。

 

お馬鹿さんのアメリカはアサドに代わる新政権を構想し、「シリアの友」と称する国家の代表をモロッコに集めて新生シリア国家の体制づくりについて協議しました。これは笑い話しのレベルです。

アサドの軍は100ある小グループのどのグループに降伏するのですか。しかも軍がまとまって降伏するのですか。軍がまとまってアサドに代わる者に忠誠を示すのでなければ、軍は分裂し、将軍や兵士は武器・弾薬を持ってそれぞれの故郷に帰るでしょう。       

さらに、外国人イスラム聖戦士の集団があります。彼らはこれまでの戦闘で中心的な役割を果たしました。彼らは地元シリア人グループと共通の政府を構成する気があるのでしょうか。

どうも各地に軍事集団が割拠して、反政府軍同士の内戦に突入する気がする。もちろん外国人イスラム聖戦士部隊もいくつかに分かれてシリアの地に根拠地をつくるだろう。

 

今月のはじめに、日本のメディアは、アサド政権の崩壊が近いという欧米の予測を伝えていましたが、シリアが今より激しい内戦に突入するという予測はしていませんでした。

 

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イランの勝利で終わったイラク戦争

2012-12-16 09:02:03 | シリア内戦

 

田中宇氏の国際ニュースによれば、米国のイラク戦争勝利宣言から8年後の今日、イラクではシーア派のマリキ政権が確立し、米国の大手石油会社エクソン・モービルが追い出され,中国とロシアの石油会社との採掘契約が成立しているという。

シーア派マリキ政権がやはりイランとの結びつきが強く、反米の姿勢をはっきりと打ち出しているということです。

イラク戦争はイランの勝利に終わったということです。

田中氏の解説は中東におけるイランの影響力の増大という事実をはっきり感じさせます。アメリカはイラクで政治的に敗北した状態で、完全撤退します。

 

イラク帰りのアメリカ軍人が報告していましたが、劣化ウラン弾による被害が大きく、現地では新生児の死亡率が高く、また奇形児の出産が非常に多いということです。          

以前、NHKでベトナムでの枯葉剤による被害を報告していました。その時は奇形の様子を映像で見ましたが、非常に悲しい思いをしました。人生にはこんなことがあるのだと。   

ベトナムでやったのと同じことを、今度はイラクでやって、アメリカ軍は去っていくのだ。罰せられる事もなく。

皿屋敷のお七のように、イラクの犠牲者たちの幽霊が毎晩チェイニーとラムズフェルドの眼前に現れる時、両者は何と言い訳するのでしょう。

 

イラク戦争の動機については諸説ありますが、今店頭に並んでいる「軍事学の常識」という本の中で兵頭二十八氏がこんなことを述べています。    

アメリカの軍事関係者にとってパキスタンの核実験が脅威であった。あんなに貧しく技術水準の低い国が核を持ってしまうのなら、アメリカに敵意を持つ国が核を手に入れるのも容易だ。   

つまりキューバ危機の再現です。ただし、あの時は相手が一人で、しかもフルシチョフは意外に冷静で信頼できる人間だったが、今度は、あちこちの狂犬のような指導者たちが相手である。 

この恐怖はキューバ危機を知っていれば理解できると思う。

ケネディとフルシチョフの間では了解できていた。ただし、強硬派の空軍の爆撃機がキューバに向かえば、カストロは反撃としてアメリカ本土に向けて核ミサイルを発射していた。

強硬に爆撃を主張していた空軍が独断で行動しなかった。この一点が異なっていたら、アメリカ本土に原爆が落ちていた。

フルシチョフは、いかなる場合でも核ミサイルは発射するなと厳命していたけれども、キューバ現地のソ連軍ミサイル部隊の司令官は命令を無視し、カストロの考えに従って発射するつもりでいた。

イラクで核兵器が発見されなかったことで、戦争理由は否定されてしまったように言われているけれども、核攻撃される恐怖そのものは嘘ではなかった。

イラクでは秘密が守られていたので核開発の実態はCIAも全く把握できなかった。ただし危険性は否定できなかった。特 に、チェイニーは独自の情報網を持つので、それによって危険性が大と判断したのかもしれない。

敵国が核兵器を持つことへの恐怖という根本問題を提起した。これがイラク戦争が我々に与える教訓だと考えれば、まったく無意味な戦争とも言えない。

国の政治指導者と軍部の関係が良好であれば、戦争の起こる確率は1/3だけ減る。相手国も政と軍が一体であれば、さらに1/3だけ危険性は減る。そうして両国が真の了解に達すれば、戦争は起こらない。

結局戦争をするのは軍隊なのだから、一方が他方に戦わずして屈する以外に戦争をなくす方法はない。日本の室町時代の戦国の世を終わらせたのは文民の政治家だろうか。

世界的に現在は戦国時代である。一番強い武将の家臣となって生き残るしか道はない。

 

 田中宇の国際ニュース解へのリンク 

 

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