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平民の不満が爆発

2020-12-30 17:38:19 | 世界史

 

==《リヴィウスのローマ史第2巻》==

    Titus Livius   History of Rome

                   translated by Canon Roberts

         【21章】

その後3年間、あまり平和ではなかったが、とりあえず戦争はなかった。一年目の執政官はクロエリウスとラルキウス、二年目はセンプロニウスとミヌキウスだった。この年(二年目)、サトゥルヌス神に神殿が捧げられ、サトゥルヌスの祝祭が初めて開催された。三年目の執政官はポストゥミウスとヴェルギニウスだった。数人の著作によれば、レギッルス湖の戦いが起きたのはこの年だという。そしてポストゥミウスは同僚執政官のヴェルギニウスの忠誠心を疑い、辞任したという。その後独裁官が任命された。執政官の順番にが定まらないため、この時代の出来事が何年に起きたかについて、しばしば誤りがある。遠い昔の出来事であり、歴史書も昔に書かれたので、執政官の順番と出来事が起きた年を確定することは不可能である。

翌年の執政官はクラウディウスとセルヴィリウスだった。この年は記念すべきことがあった。タルクィヌスが死んだのである。彼はギリシャ人の都市クマエで死んだ。ラテン人がローマに敗北した後、彼はクマエの僭主アリストデムスに保護を求めた。

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タルクィヌスの死を知ると、ローマの元老院と平民は喜んだ。しかし元老院の貴族たちの喜びは度を越した。これまで彼らは平民を丁重に扱ってきたが、これ以後横暴に振舞うようになった。

この年シグニア(アニオ川の北)のローマ人植民者を増やすために、ローマ人を移住させた。この町に植民地を建設したのはタルクィヌス王である。

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ローマの部族の数が21に増えた。

5月15日マーキュリー神の神殿が建てられた。

【22章】

ラテン人との戦争の時、ヴォルスキ族はローマを攻撃しなかったとはいえ、彼らは敵対的だった。ヴォルスキ族は兵を集め、ラテン人の援軍としてローマと戦うつもりだった。独裁官がすばやくラテン人に勝利したため、ヴォルスキ族は参戦せずに終わった。ヴォルスキ族とラテン人の両方と同時に戦うことになるのを避けるために、独裁官はラテン人に対する勝利を急いだのである。

ヴォルスキ族を罰するため、執政官は軍を進めた。ヴォルスキ族はローマの断固たる動きを見て、慌てた。彼らはローマとの戦争を考えたとはいえ、戦闘に至らなかったので、ローマが復讐するとは思っていなかった。彼らは応戦できず、貴族の子供300人を人質として差し出した。これらの子供たちはコラとポメチアから集められた、ローマ軍は一戦も交えずに帰還した。(訳注:コラはヴォルスキ族地域の南西部に位置し、ポメチアはコラの南にある。ポメチアの正確な位置は分からない。)

 

 

ヴォルスキ族は危険が去ると、以前の政策に戻った。彼らはヘルニキ族と軍事同盟を結び、密かに戦争の準備をした。それだけでなく、ヴォルスキ族はラテン地域の様々な町に使節を送り、対ローマ戦争に参加するよう求めた。しかしラテン人はレギッルス湖の戦いで負けたばかりだったので、ローマとの戦争を主張する者を処罰した。彼らはヴォルスキの使節を同様に扱った。ヴォルスキ族の使節たちは逮捕され、ローマに送られた。使節たちは執政官によって尋問され、ヴォルスキ族とヘルニキ族がローマとの戦争を準備している証拠が得られた。この問題は元老院で審議された。元老たちはラテン人の措置に満足し、捕虜となっていたラテン人6千名を釈放した。これらの捕虜は既に奴隷として売られていた。元老院はラテン人の高官たちに条約の締結を求めた。ラテン人はこれまで条約の締結を拒否してきた。ラテン人は捕虜の釈放に感謝し、平和条約の提案を名誉なことと考えた。彼らは黄金の王冠をカピトリーヌの丘のユピテル神殿に寄贈した。王冠を持って来たラテン人の代表団と一緒に、釈放された捕虜が大勢やって来た。彼らは奴隷として働いていた家を訪問し、かつての主人に感謝した。主人は彼らの不幸な境遇を思いやり、親切に接したので、両者の間に信頼関係が生まれた。こうしてラテン人とローマ政府の間に、政治的にも個人的にも友好な関係が生まれた。

       【23章】

ヴォルスキ族との戦争が迫っていた。危機を目前にして、ローマは分裂した。貴族と平民が激しく対立した。対立の原因は平民が困窮し、借金に苦しめられていたからである。彼らは大声で苦情を言った。ローマが自由のため、そして帝国建設のために戦っている間、国内の平民は富裕市民の奴隷となった。平民が戦場で敵を相手にしている時は自由であるが、平時に同国人の間にいる時は自由を失った。平民の不満が次第に大きくなり、我慢の限界に達した時、一人の平民の不幸を契機に不満が爆発した。

見るからに貧困に打ちひしがれた老人が、中央広場に現れた。彼の服は薄汚く、彼の身体はさらにおぞましかった。彼は死人のように青白く、痩せこけていた。櫛をかけたことのないひげと髪は野蛮人のようだった。通りかかった人々は彼を哀れみ、立ち止まった。このように変わり果てた姿にもかかわらず、人々は彼が百人隊長であり、いくつかの功績があった人物だとわかった。元百人隊長は胸を開いて傷跡を見せた。それらの傷跡は彼が複数の戦闘に参加し、勇敢に戦った証拠だった。哀れな老人の周りに多くの人が集まり、民会の時のような人数になった。人々が彼のひどい身なりと痩せこけている理由について尋ねると、彼は答えた。

「サビーニ戦争に従軍していた間に、私の土地が敵によって掠奪され、作物をすべて失った。それだけでなく、敵は農地を焼き、財産を奪った。牛たちはどこかへ追い立てられた。その後、戦争税が要求されたが、私は払うお金がなく、借金した。利子のため借金がひどくふくらんで、私は父が祖父から受け継いだ農地を失った。それから私は残りの物を失い、最後に疫病らしき病にかかった。債権者たちは私を連れ去り、地下の仕事場で働かされた。そこは生き地獄だった。奴隷として売られても、もっとましな場合が普通なのに」。

そう言って老人は鞭で打たれた跡が生々しい背中を見せた。元百人隊長の痛ましい姿を見て、また彼の話を聞き、群衆は怒りの声を上げた。人々の興奮は中央広場の範囲を超え、市内のあらゆる場所に伝わった。借金のため奴隷となっていた男たちや奴隷から解放された者たちがあちこちから道路に集まってきた。彼らはローマ市民の保護を要求した。多くの市民が抗議に参加した。彼らは叫びながら道路を走り、中央広場に向かた。広場に至るどの道路も人がいっぱいだった。たまたま広場にいた元老院議員が群衆と出会うなら、生命の危険があった。この状況が暴動に発展せずに済んだのは、執政官のおかげである。セルヴィリウスとアッピウス・クラウディウスはすぐに事態に対処し、暴動を未然に防いだ。二人の周りに集まった群衆は、鎖につながれた跡など、それぞれが体験した様々な屈辱の痕跡を見せあった。

「これが国家に貢献したことへの報いだ」。こう言って、彼らは過去に従軍した複数の戦争を指導した執政官たちの名前を挙げた。これは現在の執政官に対する当てつけだった。そして人々は元老たちを集めるよう要求した。彼らはこれを請願したのでなく、横柄に要求したのである。元老院の周りは群衆で埋め尽くされた。群衆は自分たちが主権者となり、社会政策を決定しようと決意していた。執政官が集めることができた元老はわずかだった。残りの元老は中央広場に行くのが怖しく、元老院に行くのはもっと怖かった。主席者が少なすぎて、元老院は何も決定できなかった。人々は騙され、引き延ばし戦術を使われていると感じた。

「多くの元老が欠席している理由は、やむを得ない事情や恐怖のためではなく、平民の窮状を救済することに反対しているのだ。執政官は彼らの不幸をあざ笑い、策略を用いているのだ」と人々は思った。

 群衆の怒りは頂点に達し、執政官の権威も彼らを抑制できなくなった。欠席していた元老たちは、欠席してることはかえって危険ではないか、と迷い始めた。結局彼らは元老院の建物に入った。議場が満席になり、議論が始まると、元老たちのたちの意見が割れていることが判明した。

また二人の執政官の考えも同じではなかった。激情的な性格のアッピウス・クラウディウスは執政官の権力を行使すべきだと主張した。「群衆の中の一人か二人を裁判にかければ、残りはおとなしくなるだろう」。

セルヴィリウスはおだやかな解決を望んでいた。「怒っている人々を力で押さえつけるより、彼らに譲歩したほうが容易だ」。

        【24章】

こうした騒ぎの最中に、新たな事件が起きた。ラテン人が早馬で駆けつけ、不安な知らせをもたらした。ヴォルスキ族の軍隊がローマに向かっているというのである。この情報に対し、平民と貴族は異なる反応をした。このようにローマの社会の分裂は深刻だった。平民は喜び、「神々は貴族の暴政に復讐しようとしているのだ」と彼らは言った。そして平民は徴兵を拒否しようと呼びかけた。一人ずつ孤独に死ぬより、皆で一緒に死んだほうがましだ、と彼らは思った。

「貴族たちが武器を取り、一般兵として戦えばいいのだ。戦利品を得る者たちが危険に身をさらせばいい」。

敵がローマに向かっている時、元老院は国内に 敵を抱えることになり、 不安のあまり憂鬱になった。ローマは危険に取り囲まれていた。結局元老院は平民に同情的だった執政官セルヴィリウスに、ローマを救ってほしいとと頼んだ。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          セルヴィリウスは元老院を閉会し、平民の会議に行った。彼は平民に伝えた。

「元老院は平民の関心について話し合うことを切に望んでいる。しかし彼らはもっと重大なことを考えなければならない。その問題はまだ小さいが、国家全体に関わることだ。元老院は国家が滅ぶかもしれないという恐怖で頭がいっぱいで、平民の問題は後回しにした。敵はローマの門の近くまで来ており、戦争に対する準備が最優先されるべきである。敵の攻撃が迫っていない場合でも、代償が支払われるまで祖国のために戦わないという態度は平民にとって不名誉である。また、もし元老院が善意により平民の困窮を救済するのでなく、戦争の脅威のためにそうするのなら、それは元老の自尊心にふさわしくない」。

セルヴィリウスは民会の人々に自分の誠意を信じてもらうため、平民を保護する命令を布告した。

いかなる場合でも、ローマ市民を鎖でつなぎ、奴隷労働をさせててはならない。市民が奴隷となり、兵士になる資格を失ってはならない。

②市民が従軍している間、彼の財産を差し押さえたり、売却してはならない、また彼の子供や孫を拘束してはならない。

この命令が布告されると、債務のある市民が名乗り出て、兵士として登録した。続いてあらゆる地区の市民が大勢集まってきて、兵役の登録をした。彼らは自由を奪われた家内奴隷だったが、債権者はもはや彼らを拘束できなかった。自由になった人々は中央広場で一緒に兵士として宣誓した。彼らは大きな戦力となり、ヴォルスキ戦争において顕著な勇気を示し、功績をあげた。

執政官に率いられ、ローマ軍は出陣し、ヴォルスキ軍の正面に布陣した。

【25章】

その日の夜、ヴォルスキ軍はローマ軍の陣地を攻撃した。ヴォルスキ軍はローマの国内分裂をあてにしていた。「ローマ兵は夜の闇に乗じて逃亡したり、寝返ったりするだろう」と、彼らは計算していた。

見張りをしていたローマ兵がヴォルスキ軍の攻撃に気づき、味方の陣営に知らせた。警報が鳴り、ローマ兵は一斉に武器を取った。ヴォルスキ軍の計画は失敗に終わった。

その後両軍には動きがなく、静かだった。翌日の夜明け、ヴォルスキ軍の塹壕は兵で埋め尽くされた。彼らはローマ軍の防御壁を攻撃した。防壁はいたるところで破壊された。これを見たローマ兵、特に借金を抱えていた兵士は直ちに反撃の合図を求めたが、執政官は数分間命令を遅らせた。これはローマ兵の士気を審査するためだった。執政官は自軍の兵士の熱意と覚悟に満足し、攻撃を命令した。ローマ軍は鎖を解かれた猛獣のように敵に襲い掛かった。最初の衝突で

ヴォルスキ軍は敗北した。ローマの歩兵は逃亡するヴォルスキ兵を追いかけた。続いてローマの騎兵が逃げ惑うヴォルスキ兵を追っていき、ヴォルスキ軍の野営地に至った。ヴォルスキ兵は陣地を捨てて逃げた。間もなくローマの歩兵部隊が追いついて、敵の陣地を取り囲み、逃げ遅れた敵兵を逮捕し、物品を略奪した。この略奪によって貧しい兵士はわずかな富を得た。執政官と兵士は栄光に満ちてローマに帰った。途中でヴォルスキ族の町エケトラ(Ecetra)の使節が執政官に会いに来た。ポメチア(ヴォルスキ地域南端)が占領されたので、エケトラは自分たちも同じ運命になるのではないかと心配になったのである。エケトラの領土の一部をローマに割譲する代わりに、エケトラは平和を保障される、と元老院は約束した。

(エケトラは消滅しており、位置を示唆する記録も存在しない)

 

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