たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

シリア内乱に対するアメリカの不干渉主義の背景

2013-02-07 03:55:55 | シリア内戦

アメリカは変わったと思います。私だけでないと思いますが、ブッシュの単独行動主義の印象があまりに強く、今度のシリア内戦でも、いつまでも軍事的に不干渉の立場をとり続けるとも思えず、時期を見て必ずシリアに襲い掛かるのではないかと思っていました。

しかし、いくつかの記事や論文を読んでいるうちに、軍事干渉に対するアメリカの慎重さは本物ではないかと思うようになりました。アフガニスタンとイラクでの10年に及ぶ戦争がアメリカを変えたのです。

従軍した兵士とその家族・友人の間に厭戦気分と強い反戦感情が広まっているのは当然としても、国務省や国防省の政策決定者の間にも戦争の成果に対して疑問を持つものがふえているのではないか。

つまり、従軍兵士は悲惨な体験に心打ち砕かれ、戦争の策定者たちは10年にわたる戦争が何の成果も生んでいないことに深刻な疑念を感じているのではないか、ということです。

アフガニスタンでは今も戦争が続いているし、イラクでは安定化に成功したものの、アメリカは軍隊のイラク駐留権を得られなかった。アメリカ軍のイラク撤退はアメリカ自身の判断によるものでなく、アメリカが望んだにもかかわらず、イラク政府によって拒否されたのです。軍事的な安定化までに長い時間を要し、多くの犠牲を出したにもかかわらず、戦後のアメリカの影響力保持の支えである軍の駐留権を得られなかったことは、軍・政の関係者に無力感を与えたと思います。

ブッシュのアメリカ・戦争するアメリカであるなら、トルコ国境へのパトリオット・ミサイル配備は間違いなく戦争への布石です。しかし、現在のアメリカにとって、それはあくまで抑止力であり、言葉通り防衛的なもののようです。

12月末のパネタ国防長官の発言「シリアに地上軍を投入することはない。」は長官はじめ多数の軍関係者の本心のようです。

アフガニスタンでは、アメリカは勝利と目的達成をすでにあきらめ、我慢できる形での脱出のみを考えている有様で、軍上層部と国務省の内部に失望感と無力感が広がっているということは、わたしにとって新たな発見でした。

なにしろ、イランとの戦争の準備として、アメリカはシリアに親米政権の樹立を画策しているのではないか、と私は疑っていたのですから。シリアの軍事力を無力化するか、シリアとイランの同盟関係を切り崩す。そしてイランを孤立化する。そのためのアサド政権打倒・親米政権樹立ではないか。

親米国家イスラエル・サウジアラビア・カタールとイランとの対立の根は深く、イランはこれらの親米三国にとって自らの存在そのものを脅かす脅威です。

単なる反政府デモを本格的な内戦に発展させた大きな要因の一つは国外からシリアに入った武装集団の活躍です。彼らは自動小銃は当然のこと、重機関銃・対空ミサイル・対戦車砲を装備していました。そのうえ彼らは戦闘意欲の非常に高い集団でした。彼らイスラム聖戦士集団(ジハード戦士団)が戦いを本格的な戦争にかえました。

彼らジハード戦士団に資金援助をしたのがサウジアラビアとカタールといわれています。これはたぶん本当でしょうが、だとすれば、現在のシリア内戦はサウジアラビア・カタール対イランの代理戦争戦争かもしれません。

現在のアメリカがブッシュの時のアメリカと違って、戦争に対してかなり消極的なのは間違いありません。しかし中東はいつ爆発するかもしれない火薬庫であり、アメリカは自らの意思ではなく、戦争に巻き込まれる可能性はあります。

 

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