今年の2月まではシリア内乱に対して不干渉の立場を堅持してきたオバマ政権が
3月になって反政府軍に対して「非軍事的援助」を決定した。
非軍事的という条件をつけながら、じつは米政府は反政府軍全面援助を決定したのかもしれない。いくつかの情報が全面援助を示唆している。
1 アメリカ特殊部隊がシリア国内に入った。今回は偵察目的ではあるが、将来反 政府軍と一体となって行動することになる。
2 イギリスはEUの決議を待たずに既に武器援助をおこなっている。
3 反政府軍の上部組織である最高軍事会議の参謀長が、今回の援助が「非軍事的」であることに不満としながら、今後本格的な軍事援助があることを確信していると語った。
1と2の情報はネットで一度目にしただけなので確認が必要。3については米CBSテレビのインタビューで参謀長が語った。付け加えると、彼は昨年夏前に政府軍を逃亡して反乱軍に加わった元将校(たしか元大佐)である。彼が言うには「医薬品をもらってもしょうがない。うたれたら死ぬだけだ。重火器と弾薬がほしい。それがないために、あと一歩のところで勝利を逃してしまった。対空ミサイルと対戦車ミサイルさえ手に入れば、一か月でアサド政権を倒せる。」ということである。
今年の二月まで、オバマ大統領はシリアに対して軍事干渉を避け、ロシアと協調して政治解決をめざしてきた。しかし、ここにきてオバマは選択をせまられた。イランとロシアの勝利を認めるか、それともあくまで反政府軍を支えるか、のどちらにするかという選択である。アサドを勝利させる、つまりアサドがイランとロシアの力を借りて反政府軍を退治するという形での解決をうけいれるという決断をせまられて、オバマは敗北を受け入れる決断ができなかった。
前回の当ブログで述べたように、アメリカの国務省と国防省には戦争の成果に疑問を持つ人々が増え、できるだけ戦争を避け、かつてのように冷戦体制のなかで突出した戦力を維持することを目標にする人々が増えていると思う。しかし、彼らとて中東からの全面撤退という決断を前にしたら、迷うのではないか。
一方、国務・国防の積極派(ネオコンとその同類)は、もともとイラクでの威信の再建を考えているのであるから、シリアに親米政権が誕生すればおのずとイラクでの威信も回復するので、シリアの戦いは天下分け目の戦いとうけとめている。