たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

6巻25-27章

2024-08-14 05:36:41 | 世界史

【25章】
捕虜を調べた結果、何人かはトゥスクルム人であることが分かった。彼らは他の捕虜と区別され、執政副司令官の前に連れて行かれた。取り調べにおいて、トゥスクルム人は「国家の承認のもとで我々は戦争に参加した」と述べた。現在の戦場であるサトゥリクムと違い、トゥスクルムは比較的ローマに近かったので、カミルスはトゥスクルムと戦争になれば厄介だと思った。トゥスクルムがローマとの同盟に違反した事実を一刻も早く元老院に知らせるため、彼はトゥスクルム人捕虜をローマに連れていくことにした。同僚の L・フリウスは陣地に残り、引き続き戦争を指揮してくれるだろう。今回の戦争の結果、カミルスは自分の戦術に固執すべきでないと悟った。自分以外にも優秀な指揮官がいることを知ったのだった。一方で、 L・フリウスとローマ兵たちは、カミルスが重大な過ちを見過ごすはずがないと考えていた。国家に最悪の災難を引き起こしたかもしれない失敗を、カミルスは決して忘れないだろう、と彼らは考えた。ヴォルスキ戦でローマ軍が最初敗北し、後で勝ったことについて、軍の兵士も首都の市民も、敗北の責任は L・フリウスにあり、勝利に導いたのは M・フリウス・カミルスだと考えていた。
トゥスクルム人捕虜を尋問した元老院は、トゥスクルムとの戦争を決定し、カミルスを司令官に任命した。カミルスが副将軍をつけてほしいと言うと、許可され、好きな人物を選んでよいと言われた。誰もが驚いたことに、カミルスは L・フリウスを副将軍にした。この寛大な行為により、カミルスは L・フリウスの汚名を消し去った。人々はカミルスを称賛した。
しかしトゥスクルムとの戦争は起きなかった。トゥスクルムはローマ軍に勝てないと判断し、同盟に永遠に忠実であることを誓い、和平を願うことにした。ローマ軍がトゥスクルムの領域に入ると、道路の近くの住民は逃げずに、耕作を続けた。町の門は開いており、市民は軍服ではなく、平服を着ており、ローマの司令官を歓迎して集まってきた。市内と郊外の市民は軍用の備蓄を物惜しみせず、ローマ軍の陣地に運んできた。カミルスは城門の近くに陣地を定め、郊外は平和な様子だが、市内も平和であるか認かめることにした。彼が市内に入ると、家々のドアは開いており、売り台にはいろいろな品物が並んでいた。働き人は仕事に忙しく、学校では子供たちが元気な声で音読していた。通りは女性や子供でいっぱいで、それぞれの用事で歩き回っていた。彼らはカミルスとローマ兵を見ても、驚かず、怖がらなかった。カミルスは念のため、戦争の兆候がどこかにないか探したが、無駄だった。平和を取り繕うため持ち去られた物はなかったし、運び込まれた物もなかった。すべてが穏やかで、平和な様子であり、戦争の足音がこの町に迫ったとは思えなかった。
【26章】
トゥスクルムの平和に偽りはなさそうなので、カミルスは町の長老たちを呼んだ。カミルスは彼らに言った。「あなたたちはローマに対する戦争を考え、ローマの怒りに対し武力で対抗しようとした。ローマの元老院に出頭し、あなたたちが処罰に値するか、元老院の判断をあおぎなさい。あなたたちは現在反省しているので、許されるかもしれない。ローマの国家が決定する前に、私はあなたたちを許すことはできない。私にできるのは許しを求める機会を与えることだ。元老院が最善の決定をするだろう」。
トゥスクルムの長老たちがローマに到着し、元老院の入り口に立った。数週間前までローマの忠実な同盟者だった者たちがうなだれてるのを見て、元老たちは哀れに思い、彼らをもはや敵とみなさず、友人としてもてなした。トゥスクルムの独裁者が代表して語った。「あなたがたは我々に戦争を宣言し、軍隊を派遣しました。我々はローマの将軍と兵士の前に呼び出され、彼らの命令に従い、我々は平服でローマに参りました。我々が着ているのは貴族と平民共通の衣服です。あなたがたに援軍を求められ、武器を提供された時しか、我々は軍服を着ません。ローマの将軍と兵士は我々の説明をうのみにせず、自分の目で確かめた結果、我々に戦争の意図がないと確信しましました。我々を信用してくれたことに感謝します。ローマとトゥスクルムとの同盟に我々は忠実でした。同盟の継続をお願いします。我々はローマの敵ではありません。ローマは真の敵国と戦ってください。実際にローマと戦って痛い経験をすれば、ローマの実力を思い知るかもしれませんが、我々は戦わなくても、ローマの強さを理解しています。これがトゥスクルムの決意です。忠実なトゥスクルムに神々が幸運を与えますように。あなた方が戦争を始める原因となった問題、実際に起きたことに対して我々は反論できません。しかし、あの者たちの行為が事実であるとしても、我々は彼らを許すべきと考えています。現在彼らは深く反省している証拠が十分あります。我々がローマを裏切ったことは認めざるを得ません。今更謝られても無意味かもしれませんが」。
トゥスクルムは平和を獲得し、間もなく完全なローマ市民権を得た。
【27章】
問題が解決し、カミルスは辞職した。彼はヴォルスキ戦で優れた戦術と勇気を発揮し、トゥスクルムの問題を幸福な終結に導いた。どちらの場合にも副将軍 L・フリウスに特別な配慮を示し、またフリウスが失敗した際、忍耐強く対応した。翌年の執政副司令官は以下の6人だった。ルキウス・ヴァレリウス(5回目の就任)、プブリウス・ヴァレリウス(3回目の就任)、C・セルギウス(3回目の就任)、L・メネニウス(2回目の就任)、P・P・パピリウス、Ser・コルネリウス・マルギネンシス。
この年、査察官の任命が必要になった。C・スルピキウス・カメリニウスと Sp・ポストゥミウス・レギレンシスが査察官になった。二人は新しく資産を評価しはじめたが、ポストゥミウスが死んだために、仕事が中断された。査察官の場合、一人でだけ新しい人物に代えてよいものか、わからなかった。その結果スルピキウスは辞職し、新たに選びなおすことになったが、選挙に不正が起きた。三度選挙を繰り返すことには宗教的な恐怖があった。この年の査察に神々が反対しているように思われた。このような失態は我慢できない、と護民官は元老院を批判した。
「元老院は執政副司令官の助言に従い、途中までなされた査察の結果を公表を恐れた。査察表には市民の不動産が記載されており、どれだけ多くの市民の土地が借金の抵当に入っているかわかるのだった。市民の半分が残りの半分によって破滅させられている実態が明らかになるだろう。元老院は様々な口実をあげ、戦争を繰り返している。兵役は富裕市民だけでなく平民にも課せられる。平民は負債を背負いながら、日々連戦している。ローマ軍はアンティウムからサトゥリクムまで進軍し、続いてサトゥリクムからヴェリトラエ、さらにトゥスクルムへと転戦した。そして今度はラテン人やヘルニキ族そしてプラエネスウテが攻撃されようとしているというではないか。これはきっとでっち上げで、貴族の本当の目的はローマの平民に復讐することだ。平民は従軍させられ、疲れ果て、首都に帰って休息できない。彼らはのんびり余暇を楽しめないし、市民集会に参加できない。護民官が借金の利息の軽減を要求したり、その他平民の窮状を訴えるのを聞くことができない。彼らの祖先が勝ち取った自由を思い出す気力が平民にあるなら、ローマ市民が借金の抵当として奴隷として売られるのを許さなないだろう。債務の実態が調べられるべきだ。債務を減らす方法が決まらないかぎり、平民は徴兵を認めないだろう。債務者が自分の借金の残額を知り、自分が抵当として奴隷になるべきか、それは利子が原因ではないかを知らなければならない」。
護民官が債務者に救済の道を示したので、平民の抗議運動は活発になった。多くの市民が債務の抵当として債権者に引き渡さていた。これは市民にとって切実な問題だった。一方元老院はプラエネステとの戦争のために新しい軍団の編制を決定した。護民官はプラエネステとの戦争に反対し、徴兵を妨害した。平民全員が護民官を支持した。政府は債務者に対する抵当権の執行を認めたが、護民官はこれを無効であると主張した。徴兵対象者の名前が呼ばれたが、誰も返事しなかった。元老院にとって、債権者の利益より軍団の編制のほうが、はるかに重要だった。プラエネステ軍が既に進軍を開始し、ガビーの郊外に到着しているという知らせがあったのである。このような状況になっても、護民官は徴兵に反対した。彼らの決心は、ますます固く、市内の騒動が続くうちに、敵はローマの城壁まで来てしまった。

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