たぬきニュース  国際情勢と世界の歴史

海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

シリア反政府軍はクサイルの戦いで完敗

2013-07-02 20:08:48 | シリア内戦

 反政府軍シリア北部でのの戦いがゆきづまり、打開策として、アメリカの支援のもとに、新たに南部ヨルダンの根拠地から攻勢を開始した。しかし結局さしたる成果をあげることができなかった。

この間アサド政権はシリア中心部の安定化につとめた。つまりホムス・ダマスカス間の危険を除去することである。ホムスから反政府軍を一掃することは、ダマスカスの安定に直結する。ホムスの西側はアサドの支持基盤であるアラウィ派住民が多く住む地帯であり、ホムスから西に走る道路は海港タルトゥスに通じている。タルトゥスにはロシア海軍の施設があり、ロシアからの補給物資の荷揚げ港として重要である。

      

 ホムスの南西に位置するクサイルという小さな町はレバノンに通じており、反政府軍の拠点となっている。外国からの支援がレバノンを通り国境を越えてこの町に入る。クサイルはホムスの反政府軍にとって補給の中継地点である。アサド政権としては、ホムス以前にまずこの小さな町の反政府軍を壊滅させなければならない。これがクサイルの戦いである。

   

クサイルでは5月初めから戦闘が続いていたが、519日、政府軍の総攻撃がおこなわれ、反政府軍は敗退した。

クサイルでの反政府軍の敗北が完敗に近いものであったことが、いくつかのメディアで報じられている。再起不能を思わせる負け方であり、少なくとも短期間での再反撃は絶望的である。                       思っていることをすぐに口に出してしまう米共和党のマケイン議員も述べている。「完全な負けだ。認めるしかない。新たに武器を与えても、事態は変わらないだろう。アメリカが直接乗り出すしかない。地上軍の投入は難しいとしても、パトリオットミサイルと戦闘機で、反政府軍の支配地を保護すべきだ。」

米軍の投入なしに、反政府軍だけでは勝利は不可能だ、というマケインの判断は注目に値する。

反政府軍の敗退で、再び米軍の直接介入が現実問題となり、緊迫した状況が続いている。

地図はBBCの「クサイルの重要性」という記事にあったものです。

   

 

 ①赤線は反政府軍が支配する道路。緑の線はアサド政府軍が支配する道路。

②オレンジ色の破線は、両者が支配をめぐって争っている道路。

③青色の小さな正方形は国境検問所。

 

地図の解説

①北部の道路がすべてオレンジ色、つまり反政府軍の支配するところとなっている。

②シリアの経済と政治の重心は西部にある。重要な都市を北から南に順にあげると、アレッポ・イドリブ・ハマ・ホムス・ダマスカス・ダラの5つである。

③ホムスに注目すると、ホムスから出る4本の道路のうち三本(東・西・北)は係争中であり、南に延びる一本のみアサド政権が確保できている。

 ④したがって、政府側はダマスカスから北に向かってホムスまでは行けるものの、そこで行きどまり。東に行けないのは我慢するとしても、北にはハマ・イドリブ・アレッポと重要な都市が並んでいる。また西の海岸部にには海港タルトゥスがあります。

⑤ホムスの反政府軍は孤立しており、レバノンからの補給に頼っている。ホムスはレバノンの北端の国境に比較的近い。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 軍閥化する自由シリア軍 | トップ | ゴッホ展―空白のパリ時代を追う »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

シリア内戦」カテゴリの最新記事