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(コバニ戦) ISIS、化学兵器を使用 10月21日

2015-12-21 23:04:51 | シリア内戦

     

10月21日の夜、コバニ市内で爆発があり、その後約20人が呼吸困難、目から出血、やけどや吐き気の症状をうったえた。

彼らを診察したワラト・オマール医師は、異常な症状に驚いた。原因がわからなかったが、彼は化学兵器を疑った。「患者たちは、爆発の後に異臭を感じており、症状はそのガスが原因のようだ」。

「皮膚に赤い斑点がある患者。やけどがある患者。呼吸困難な者。のどが痛み、吐き気がする者。目や鼻が炎症を起こしている者。一人は、体中が斑点とやけどに覆われていた」。

                  

 

6月にイラクに進撃したとき、ISISは占領したイラク軍の基地で、残存していた化学兵器を手に入れたた可能性がある。イラクに化学兵器はなかったとされるが、それは最新で現役のものがなかったということであり、劣化したり、空になった砲弾が基地に保管されていた。

イラクの国連大使の報告によれば、ISISがファルージャのムサンナ基地を占領した際、将兵を脅し、化学砲弾を奪った。

大使は41番の格納庫と13番の格納庫が心配だと語った。41番の格納庫には空の砲弾2000発が保管されていた。中身は空だったが砲弾はマスタードで汚染されていた。大使の心配な様子からすると、中身が詰まっているものがあるかもしれない。それに汚染された605個のマスタード容器。最後に汚染された建材。

ティクリトにも化学弾が保管されていた。また別の場所で、劣化したマスタード弾が放置されているのを、米兵が発見している。化学兵器の前段階物質が保管されている場所もある。これらの場所の多くは、現在ISISが支配している。ISISが実際に奪ったものと、支配地にある有毒化学物質は相当な量になる。

ISISはアルカイダの化学兵器に関する知識を受け継いでいる。さらにシリアでの2年間に、化学兵器を使用する技術を習得した。

先月(9月)、ISISはイラクの町で化学兵器らしき爆弾を使用し、11人の警察官が被害にあった。死者はいなかった。今回のコバニの場合と似ている。被害者の数は今回のほうが多い。

2003年以来、17人の米兵が神経ガスとマスタードガスの被害を受けたが、口止めされている。

     <7月12日、化学兵器による攻撃で3人死亡>

実は、コバニでの化学兵器の使用は今回で2度目である。前回の方が、被害者の症状が重く、死亡している。1回目に使用したのは7月12日である。

現在陥落の瀬戸際となっているコバニの闘いが始まったのは、9月23日である。これはISISにとって2度目の挑戦であり、最初にコバニを攻撃したのは、7月始めである。6月の華々しい電撃的な勝利の直後、早々とコバニ征服に取り掛かった。ISISにとって国境をさえぎるクルドは邪魔な存在である。コバニ獲得は重要課題だった。ISISはこの時、化学兵器を使用した。それでも勝利に至らず、コバニ作戦をいったん中断した。        

2か月後の9月、ISISは2000名の大兵力をそろえて、再びコバニに襲いかかった。そして10月21日、2度目の、化学兵器を使用した。 

最初のコバニ攻勢は7月2日に始まった。コバニの東方にあるアディコ(Avdiko)村が戦場となった。

ISISは機関銃と迫撃砲で攻撃したが、クルドの人民防衛隊(YPG)は10日間、粘り強く抵抗した。ISISは優越した武器で戦っているにもかかわらず、勝利できない。7月12日、ISISはさらに残忍な、決定的な手段を用いた。

         

3人の戦死者を診察した医師団は、死者に銃弾の跡がなく、いかなる外傷もないことに気付いた。「死者が出血しておらず、遺体にひどいやけどと白い斑点があるので、死因は薬品によるものと考えられた」。

やけどと皮膚が崩れた遺体の写真を見て、イスラエルの専門家は、マスタード・ガスによる症状だと思われるが、写真だけでは断定できないと語った。

                

写真を発表したのは国際問題中東評論(Middle East Review of International Affairs)である。

MERIAの発表が遅かったためか、7月12日の化学兵器使用についてネットが取り上げたのは、3か月後の10月13日である。

イランのPRESS TVはISISの化学兵器使用について報じた後、次のように述べた。

「シリアの国連大使は、トルコとサウジアラビアはテロリストに大量破壊兵器を供給している、と非難した。

10月10日、シリアのジャファリ大使は、国連の委員会で、トルコとサウジは過激な反乱分子に化学兵器を与えている、と述べた。大使は、トルコはテロリストの100団体を支援している、と付け加えた」。

以上、7月12日と110月21日の化学兵器使用事件について述べた。

          <10月22日ー27日の戦況>

      

10月22日の夜、、ISISはシャイル丘を攻撃し、数時間の戦闘の後、丘を占領した。

23日の夜、米軍が丘を空爆し、クルド軍は丘を奪い返した。

      

 10月26日、ISISは越境地点に4度目の攻撃をしたが、再び失敗した。越境地点を奪えば、コバニの包囲が完成する。クルドの敗北が決定する。

10月27日、ISISはビデオを公開した。英国人人質のジョン・カントリーが語った。「ISISはコバニの大部分を占領した。クルドはまだ数か所に潜んでいるが、コバニの戦いはほぼ終了した。ISISはクルドの残存兵を掃討している」。

ISISのビデオは、戦時日本の大本営発表と同じである。現実には、ISISのほうが苦しい。

10月13日以来、米空軍の爆撃は効果的であり、ISISは前進できない。そのうえ、19日には、クルドへ、大量の武器の投下があった。

21日の化学兵器の使用は、ISISの焦りの反映かもしれない。

クルドへの援軍として、もうすぐペシュメルガが到着する。心理的な圧迫を感じているのは、ISISだ。クルドは勇気づけられることが続いている。

     

(参考)


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