この本、買いました。
この類の本は、「読む」というより、資料として使う方が多いと思います。もう買った方も多いと思いますが、いきなりルート図を弄り、この本を片手に(多分コピーして)岩場に出かける方も多いのではないでしょうか。でもちょっと待った!
今、マルチピッチをフリークライミングで登るということが、どんな意味のあることなのかを理解せずに登るのは、人里離れた山の温泉旅館でマグロの刺身に舌づつみを打っているようなものです。なんで山の幸の豊富な地でマグロの刺身をたべなくてはならないのか。岩の、またはそのルートの提示するクライミングの面白さを味わうことをせずに、ただ終了点まで抜けられただけでは、そのルートを理解したことにはならない。理解するまでにはいろいろな努力や経験が必要になる。それをしたうえでルートに取り付かなければならないだろう。そういった意味で、この本は序章をしっかり読んでから活用してほしいものだ。(著者に代わって・・・)
それにしても、マルチピッチのグレードはどんどん上がっていってしまう。わしも努力はしているが追いつかない。「5.11程度は・・・」と思っているが、マルチで5.11を登るというのは5.12の実力が必要だ。それでなくては一日で登って降りてこれないもの・・・。
この本にちょっとだけ不満。「錦秋カナトコルート」だが、もともと「山賊79黄昏」を登った際に、「もっと自然なラインを引ける」と思ったことが開拓のきっかけであったこと。核心のクラックは木の根がはっていて、単独のグランドアップでは人工交じりになってしまい、しかし、その後自らフリー化したこと。その後ほかのクライマーによって木の根が取り除かれ、フリーでもやさしくなったことなどは全く考慮されていない記述は残念。でも「良い本が出た」と思っています。改訂されるときには「一粒の麦」を是非載せてほしい。良いルートです。
開拓の年は2001年、フリー化が2003年。著書では2003年となっています。