Chimney角屋のClimbing log

基本的にはクライミングの日記ですが、ハイキング、マウンテンバイク、スキー、スノーボードなども登場するかも・・・。

新ルート登攀記1

2016-06-20 22:36:54 | 無雪期山岳クライミング」

2016年5月23日に初めて訪れた岩場。期待を越えたスケールで心が躍った。

この日は月稜会のいとしゅーをパートナーに、アプローチの確認、岩場全体の概念を把握、そして登れそうなところに手を付けてみた。

この岩場は上下に二つの岩峰に分かれていて、それぞれ100m近い高さを持っている。まず残地のリングボルトとハーケンがある、上部の岩場の右端を登ってみたが、残地があったのは取りつきだけで、完登はされていない様だった。あまりすっきりしない内容で40m+20mのやさしいクライミングだった。やさしいと言っても、グレード的にはやさしいが、岩のもろさと支点をとれるところの少なさで、緊張するクライミングではあった。

そのあと、下の岩峰に移動し、岩の堅そうな、すっきりしたラインを選んだ。

岩はことごとく逆相で、花崗岩だがクラックは閉じてしまっている。どこにプロテクションが決まるのか判然としない。この日用意したプロテクションはキャメロットの0.5~3番まで2セット、エイリアンの赤から緑まで2セット、ナッツ1セット、カットアンカーのボルトキットだ。クラックは閉じてしまっているので、ナイフブレードが有効であるように見えるが、あいにく持参していなかった。

私がリードで取りつく。10mほど登りレッヂに立つが、全くカムやナッツを効かせるところがない。ここまでは5.7くらいだが、この先は少し難しくなりそうだ。少し考えて、バックロープでボルトキットを上げてボルトを設置。岩が固く、1本打つのに小川山や瑞牆の3倍くらいの時間がかかる。もちろんボルトなど打ちたくはないが、仕方ない。ボルトを打つなら、最低限グランドアップで手打ち。これだけは守りたい。「トラディッショナル」なクライミングというものはそういうものだと思うからだ。

ボルトを打った先は、カムを使える場所を見落とさないように、しかもホールドをつないでルートを見極める。少し直上した後に右にトラバース。また直上して左に戻るが、この辺りはフットホールドが高くカチや縦ホールドやアンダーホールドで乗り込むムーブが連続する。カムは小さいサイズをクラックとは呼べない岩の隙間にセットしていくので、思い切ったムーブを起こすには勇気が必要だ。

核心部をこなして直上するとテラスがありそうだった。しかしアンダーホールドに決めたカムは信用できず、この直上の1手が出ない。手の届くところの岩は明らかに浮いている。その上にガバカチがあるが、手を出す勇気がない。手前のかろうじて手を放せるところで再びバックロープを引き上げボルト2本目。ここは傾斜もきつく足場も大きくないので、打っている途中に墜落しそうで恐ろしかった。バランスを崩さないように静かにハンマーを振る。ハンマーを振る腕がパンプスる。手首が痛く、ハンマーをしっかり握れないが、もうこの場所からはどうしても登りきらないと無事には帰れないのだ。そう思うと手首くらい壊れても仕方ないという覚悟が生まれる。カットアンカーの先が数ミリ入ると、ホルダー自体がホールドになるので安心できる。あとは力の続く限りハンマーを振るだけだ。死に物狂いでボルトを打ち、カラビナにロープをクリップすると、死の淵から戻ってきたような気持ちになる。

「この上がテラスであってくれ!」と祈って突っ込む。手を出してみたら、実はそれほど難しいムーブではなかったが、これが「初登」というものだし、ボルトの魔術でもある。このボルトが残ることで、次から登る人は、私が感じたことと同じことを感じることは不可能になってしまうかもしれない。しかし良い感性の持ち主であれば想像はできるだろう。そこが妥協点だ。

ワイドクラックともいえる凹角を抜けると果たしてテラスだった。左下に太い松の木があるのだが、足場が悪く、ビレー点には使えない。今日は時間的にもここで終了となるので、ボルトのビレー点を作る。一安心でロワーダウン。しかしこの日のロープは50mだったので着地ができない。途中でバックロープをつないでの着地になった。

1ピッチ目のグレードは5.9 27m。 プロテクションはキャメロット3と0.5各1 エイリアン赤以下緑まで。ボルト2本。

*取りつきから15m直上。右にトラバース後、数m直上。左に戻り顕著な凹角を登りテラス。

 

 

6月20日。約1か月ぶりにこの岩場に戻ってきた。この日のパートナーは月稜会のみじかいさんとアンジェラ。女性2名だ。まずはもっと楽なアプローチはないだろうかと探ったが、結局時間がかかってしまった。しかし帰りにわかったのだが、本当は最短だっただろう。岩場の近くでうろうろしてしまっただけのようである。このアプローチは使える。

 

今日はプロテクションにナイフブレードを追加してみた。ナッツもペッカーもスカイフックも用意した。使わずじまいだったけど。

先月登った1ピッチ目をリードする。やはり2度目は落ち着いていける。しかし、プアなプロテクションには変わりないので緊張はする。フォローのみじかいさんは、核心のトラバースで落ちて振られ、ラインの左からフリーで登りなおした。つまり左からも登れるということだが、ボルトを打たない限り相当なランナウトになるライン。

1ピッチ目フォローのみじかいさん。5.11aくらいは登るのだが・・・。

 

続いてアンジェラもテラスに到着し、いよいよ未知の2ピッチ目。出だしはやさしいが、やはり1ピッチ目と同じく、プロテクションはプアである。岩の隙間を見つけてエイリアンの小さいサイズを決めていかなくてはならない。10m弱登ったところでブッシュに入り、ブッシュを抜けると右上にある上向きの大きなフレークに立つ。ここで先のラインを見極める。右に行くのは簡単そうだが、岩のもろい地帯に突っ込んでしまうラインなのであきらめる。残るは目の前のスラブを2mほど登り、左のオープンブックからカンテにのっこすラインだ。しかしスラブを上がるまでのプロテクションが取れない。またボルトの出番だ。

スラブにカチホールドを拾い、水平クラックを左にトラバース。オープンブックの向こうのカンテを目指すが、右手がアンダー、左手がカンテで左足の小さなフットホールドが不意にかけてしまった。手前のカムが浅効きだったので、思わず大声を出してしまった。落ちるかと思った。何とかカンテに立ちこんだ。ここがテラスであることを願っていたが、自分一人がやっと立てるだけだった。しかもその上には15m以上はテラスがなさそう。もう頻繁に使う小さめのカムが足りない。しかし幸いなことに、そのレッヂはエイリアンの赤がバチ効きだったので、セルフビレーを取り、ボルト1本を設置して、今日はここまでで終了とした。このボルトは、登るためには必要ないので、次回は撤去する予定。ナイフブレードもバックアップで打ってあるが、これも撤去予定。

2ピッチ目(途中)のグレード。5.9 20m。 プロテクションキャメロット2 エイリアン赤から緑1.5セット。

*ビレー点から直上。左上のブッシュを通過し、右上の大きなフレークに立つ。数手のスラブを登り、水平クラックを左へトラバース。オープンブックからカンテを乗越して1人用のレッヂ。

 

2ピッチ目出だしの私。

 

2ピッチ目をトップロープで登るみじかいさん。

 

実にアルパイン的な岩場である。

たかが5.9と思われるだろうが、クライミング技術だけでは登れない。

クラックシステムとは言えないスラブ・フェースクライミングなので、当然プロテクションはクラックより難しい。

「トラディッショナル クライミング」という言葉が一番ふさわしいかもしれない。

何年も前にSさんとともに登った「一粒の麦」のように、全く残置物を残さないで登れたら理想的だったが、

どうやら今回の岩場は別物のようだ。

でも、それは「また違ったプレゼント」をもらったようで、すごくうれしい。

 

「ボルト」という妥協の産物を残さなければ登れないことは残念だ。(フリーソロができるのなら良いのだが)

ただ登りながら最小限のボルトを打つことは、「トラディッショナルクライミング」の範疇であろう。

これは非常にスリリングなことだ。

次に登る人はボルトがあることによって、このスリルは味わえないが、

こういうルートは感性豊かなクライマーにこそ登ってほしい。

初登者の気持ちを想像しながら登れるクライマーにこそ登ってほしい。

まだ完登してないけど・・・。

 

 

 


KBT岩フリークライミング

2016-06-08 01:04:35 | フリークライミング

6月6日。KBT岩に行ってきました。月稜会の集会日で、午後2時までしか登れません。この日は月稜会のメンバー6人にゲスト1名の7人でした。私はひじの痛みが治っていないので、やさしいのを登ることにしました。

 

やさしいのはクラックなので5.8から5.9の4本を登り、後は5.10a

のフェースと5.11bのフェースを登りました。

「林」5.9はワイドムーブのある楽しいクラック。カムがキャメロットの3番までしかなかったので、ボルトを使ってしまいました。

「風」5.9は、とても面白かった。レイバックからハンドジャム、高いフットジャム。

「小春」5.9は出だしが厳しかった。グレードは辛い。

「十月」5.8は快適なNPフェース。

「はじめの一歩」5.10aも快適なフェース。

「祝退職」5.11bも面白かった。終了点直下の返しはジムっぽい。