Chimney角屋のClimbing log

基本的にはクライミングの日記ですが、ハイキング、マウンテンバイク、スキー、スノーボードなども登場するかも・・・。

やさしいボルトルートについて考えた

2016-09-28 00:51:11 | フリークライミング

9月26日。未開拓の岩場でルート開拓作業をした。

今まで私が開拓したルートは、下から登りながら支点を構築し登るスタイル。つまりトラディッショナルなルート開拓を基本にしてきた。しかし今回はスポートクライミングのエリアであることや、ラインが難しそうであることに加えフェースなので、ラッペルボルトの開拓になりそう。ロープにぶら下がって、あらかじめドリルを使った支点構築をするのは初めて。

ただ私は「ラッペルボルト」を否定しているわけではない。そうやって開拓されたルートをだって頑張って登るし、上手になるためにはトラディッショナルなルートばかりではだめなのもわかっているから。それに加え、ボルトルートは、純粋に登ることに集中できて楽しい。

だから今回は、今までトレーニングとして利用させてもらってきたボルトルートを、自ら開拓してみようと思う。

目標のラインは、少しかぶった25mのラインで、トップロープで登った感じでは、グレードは5.11c位だと思う。この日は岩の裏から回り込んで下降しながら、ホールドがつながっているかどうか確認し、作業用のフィックスロープを張り、作業用に手打ちの中間視点を打った。そしてトップロープで試登。

試登でもパンプしてしまったので、このルートの作業はここまでにしましたが、初心者にうってつけのラインがあったので、ルートを作りました。

10mほどの小さい岩峰ですが、登れば岩の上に立てます。

上級者が登ればボルトなどいらないかもしれません。しかしボルトを3本打ちました。

なぜなら、上級者が感じる「落ちない自信」は初心者に対しては通用しないからです。

どうせボルトを打つなら、そのレベルの人の安全を考慮して設計したほうが良いと思ったのです。

 

私は、初心者を岩場に連れて行くことが多いのですが、初心者にリードさせられるルートが少ないのです。

簡単なルートも上級者が作るので、「落ちっこないからボルトはいらない。」という気持ちで作ってしまいます。

でもそのグレードの人は、そんなルートをリードできないし、見ているほうもひやひやです。

だから初心者が登るルートは、ボルトの設定も初心者用にしたほうがいいと思ったのです。

 

本来私は、「落ちてはいけない」というクライミングを追及しているのですが、

一方で、落ちながら練習することも大切だと思っています。

トラディッショナルなルートでは「絶対落ちてはいけない」という場面も出てきます。

でもそういうルートを克服するためには、落ちながら腕を磨くことをしなければ、克服するのは難しいでしょう。

 

ですから、初心者でも死なずに練習できるルートは必要です。

開拓者は、このルートを登るであろう人を思ってボルトの数や位置を決めることが必要です。

 

しつこいようですが、私はあらかじめ支点が構築されているルートよりも、

自分で支点を構築しながら登るほうが好きですし、それが目標です。

でも、トレーニングとして、またはスポーツとして登るルートは安全であることを考慮しなくてはなりません。

 

この初心者用のルート。5.7 10m 中間のボルト3本。

「いいんですか」

 

「ボルトが多すぎる」という人がいると思いますが、初めてリードを体験する人の気持ちを、またはそういう人を連れて行く気持ちを考えたら妥当だと思うのです。

私はフリーソロでも構いませんが。

 


奥秩父東沢 東のナメ沢

2016-09-12 22:23:58 | 無雪期山岳クライミング」

9月12日。3年ぶりの沢登りに行ってきました。

 

月稜会の会山行で、東沢に日帰り4パーティー(鶏冠谷右俣3名・左俣3名・東のナメ沢3名・西のナメ沢2名)、1泊1パーティー(西俣3名)で行きました。

 

駐車場を全員で7時ちょっとすぎに出て東沢に向かいます。みんな前夜の宴会で夜中の2時過ぎまで飲んでいたのに元気だ。私は「6時起床」と言ってあったのに6時前に起こされて不機嫌。

西俣組は行程が長いのでどんどん先行していきます。残りのメンバーはのんびり歩き、鶏冠谷の出合で分かれます。

 

東沢のアプローチが思いのほか悪かったのと、多少水量が多くて、渡渉でいちいち裸足になっていたので時間がかかりました。

東のナメの取りつきに9時着。

 

私は特にバリエーションルートでは、ガイドブックはあまり読まないし、下調べもしないようにしています。

地形図を頼りに登りたいからです。

でもなぜか、この沢の大ナメはクライミングシューズがいいということは以前から知っていたので、クライミングシューズで取りつきました。

 

傾斜のないスラブの水流の右をぺたぺたと150mほど登り、平らなところで水流の左にわたります。そこから20mほど登ったところにビレー点があり、ここからビレーしてもらいます。

50m登りましたが、プロテクションはナッツで1か所取ったのみでした。

 

残地ハーケン2枚のビレー点から次のピッチに取りつきます。出だしでバンドを右にトラバースすると、そこにはもっとしっかりしたビレー点がありました。

さらにトラバースしようと思いましたが、ぬれていて滑るので、真上に見える垂壁を目指して直上。しかしロープの流れが悪くなり、20mほどで灌木を使って後続の二人を迎える。

 

さてここから垂壁基部に沿って目指す釜に向かうが、ほんの数mだけ非常にぬめっていてトラバースできない。

行きつ戻りつした後に、あきらめて垂壁を登ることにしました。

みじかい垂壁の上にはよくハーケンが効きそうなリスがあったので、そこにハーケンを2枚打って下降支点とし、、スラブに降りてテンショントラバース。

後続の2名も振り子トラバースに似た要領で到着。

あ~、怖かった。

 

最後の傾斜の強いフェースはホールドも残地支点も豊富で難なく登り、そのうえで左岸の樹林に入った。実質的にこれで大滝は終了。

その上には似たようなスラブの滝が2つあるが、巻いて登った。もう12時になってしまった。少々手こずってしまった。

今日のパートナーはぼくりんと山ちゃん。

大ナメの登攀を終えたところ。

 

そこからの遡行はごく初歩的な沢登りで、地図を読みながら、また地図ではわからないところはカンでルートを選び詰めていく。

滝も終わり、水も涸れ、詰めにかかる。シャクナゲが多くなってくる。

次第に踏み跡がはっきりしてきて稜線も近づいた感じがしたころ、上から別パーティーのコールが聞こえた。

わが会の鶏冠谷左俣パーティーでした。登っていくと鶏冠尾根の登山道に出て合流。

いいタイミングでした。

何時だったか忘れた。

 

鶏冠尾根の下山は、心配していたほど迷いやすくも悪くもなく、いつもの通りだが、全員鎖もトラロープにも触らず下山。

今日はもともと雨の予報だったが上々の天気だった。でも下山でとうとう降り出したが、よくもってくれた。

強力な晴れ女が参加していたからだろうか。

鶏冠谷出合を経由し、西沢渓谷の観光道路を歩いていると、前に西のナメ沢パーティーが歩いていた。

 

4時半に駐車場に着くと、鶏冠谷右俣パーティーは車で寝ていた。彼らは13時に戻って昼寝をしていたらしい。どんなルートか知らないが早すぎるだろう。

日帰り組は順調に山行を終えました。

 

私も会山行でなければ、沢に行く機会など滅多にありませんが、久しぶりに楽しみました。


カサメリに新ルート開拓

2016-09-06 00:16:09 | フリークライミング

9月5日(月)。瑞牆カサメリ沢に行ってきました。目的は7月に掃除したラインを開拓すること。ラインはモツランドの「たぬき」と「ジャガバター」のあいだのライン。イワタケだらけでしたが、掃除をすればきわめて自然に登れるラインでした。7月に「たぬき」から回り込んでトップロープを掛けて掃除をし、そのまま登ってみました。その時は岩がぬれていたので5.11はあるように感じましたが、同時にNPでも登れる可能性も感じていました。

今日は九州に台風が上陸し、天気予報もよくなかったのですが、行ってみたら快晴。岩もバリバリに乾いていました。

 

 

小さめのカムを準備して、まずはNPでトライ。ムーブを楽しむならボルトを打ったほうがいいと思いましたが、もしNPで登れるならNPで登ったほうが自分らしいと思ったのです。「高グレードだけがクライミングじゃない」という自分にはそのほうがふさわしいと思ったから。でもトップロープでリハーサルしているから、登ること自体は問題ない。しかしフェースルートで満足なプロテクションをセットできるかは未知の要素です。

 

登り始めてみるとプロテクションの効きはよくない。かなりリスキーなクライミングになります。やはり「ここでは落ちてはいけない」ということを感じながらのクライミングになります。

 

やはり「ここで1手出していいのか」ということを考えながら登ります。でも結果的には登りきることができました。今日はコンディションが良かったので5.10cだということもわかりました。

 

プロテクションは信用できないので、あっちこっちから取りヌンチャクで連結し、こんな感じになっちゃいます。プロテクションが取れるところを見逃してはいけません。

ごく自然なラインです。出だしはちょっとジムナスティックかもしれませんが、難しいわけではありません。

出だしは縦、横、斜めのカチの連続で、後半はポケットやスローパー。終了点はステミングでしっかり立って終われるルートです。

 

「海賊の娘」5.10c NP

今年の3月に初孫が生まれました。名前は「景(きょう)」。少し前に「本屋大賞」になった「村上海賊の娘」という小説の主人公である村上水軍(海賊)の娘の名前を取って「角屋 景」です。

同じカサメリには「医者の娘」「漁師の娘」というルートがあり、登らせていただきましたが、それに肖って「海賊の娘」にしました。

 

どうぞ登ってください。ただし先に書いたように、プロテクションは決して安心できるものではありませんので気を付けてください。

私らしいルートができたと思います。


高グレードにしか目が向かないのではさみしいクライミング

2016-09-02 01:10:46 | 山とクライミングの話

スポーツとしてのクライミングは盛り上がっているようだ。確かにクライミングはスポーツとして楽しめるアクティビティーだ。そしてスポーツクライマーの登るレベルは飛躍的に向上していて、始めて1年で5.12を登ったり、ボルダリングの初段を登ったりすることも珍しくないらしい。

しかしその反面、それだけ登れるクライマーが、岩場でのアプローチでつまらない怪我をしてしまったり、プロテクションのプアなルートで敗退したり、ぬれた岩の5.9/30mをリードするのに2時間かかったりするのはいかがなものか。またロワーダウンの途中でロープがスタックしてしまって降りられなくなったとき、解決方法がわからなかったりする。

こういうことを書いて発信するのは、登れなくなったクライマーの僻みと思われるかもしれないが、あえて発言してみる。クライミングというのは単なるスポーツではなく、冒険だ。冒険とは目的を果たすためのチャレンジであり、目的が果たせなくとも必ず生きて帰ってくることに対してのチャレンジだ。だから「勇気」「冷静な判断力」「豊富な知識」「賢さ」などが必要だ。ただの体操だったら、クライミングというオリンピック種目はいらない。体操床演技の垂直種目でいい。

私も子供たちのスポーツクライミングを指導する立場だけれど、クライミングをただの体操として教えたくない。クライミングの「精神」や「文化」は学んでほしいと願っている。