Chimney角屋のClimbing log

基本的にはクライミングの日記ですが、ハイキング、マウンテンバイク、スキー、スノーボードなども登場するかも・・・。

スポートクライミングが全盛なのに、なぜこんなルートを登るのか。

2016-05-29 01:06:32 | 山とクライミングの話

先日登った岩場。遠くから眺めて、気になっていたのだが、実際にそこに行くまで何年も経過してしまった。行ってみると、古い残地支点が見つかったものの、その先は登られていないようだ。ほかのラインも手つかずのように見える。実際登ってみて、ほかに残地支点がないということは、完登されていない岩場だと思われる。

首都圏から近い岩場の中ではスケールが大きい。しかし、高難度なフリークライミングを行うような傾斜でもない。アプローチも1時間ほどかかるし、道もない。そこで繰り広げられるとしたら、ワイルドなトラディッショナルなクライミングしかないのだと思う。花崗岩なのにクラックは閉じてしまっているので、グランドアップで登る場合、ピトンや手打ちのボルトも必要になる。時にはボルトを打っている途中に墜落することもある。たとえ満足にナチュラルプロテクションが取れなくても、グランドアップでフリークライミングをするのがトラディッショナルだと思う。だから、この岩場はそのスタイルで登りたい。この岩場にふさわしい登り方だ。

若いクライマーがたった数年で5.12とか5.13とかを登ってしまう。フリークライミングがオリンピック種目にもなろうとしている。多くの子供たちもクライミングスクールに通い始めている。そんな時代に、なぜこんな時代遅れの登り方にこだわるのか?

私には譲れない理由がある。私は今のところせいぜい頑張っても5.12しか登る実力がない。もっと登れるように努力はしているのだけれど、そもそも登れるようになりたい理由は落ちたくないからだ。本来クライミングというのは落ちたら大変なことなのだ。もとをただせば、クライミングとは山登り。山登りに険しい岩場が出てくる。ここで落ちるわけにはいかない。だから、もし登る自信がなければ、登る自信がつくまで岩登りの練習をして、再度チャレンジするものなのだ。

私のクライミングの原点にはこういうことがある。落ちてもいい環境でクライミング技術を高める。だけど本来の目的は、落ちてはいけない岩場を登りきること。今回のような、まだ誰も登ってない岩を下からプロテクションを構築しながら登りきること。いくらスポートクライミングが上手でも、それだけでは成し遂げられないクライミングだ。しかしこれがクライミングの本質だと思う。だから私はこういうルートを登るし、登れたら、できるだけ発表して、若くて上手なクライマーにも、体験してほしいと思うのです。つまりジムナスティックなだけではなく、登る技術に裏付けされながらも、精神力の強さと知恵や経験を総動員しなければ登れないようなクライミングを衰退させたくないのです。

この先の1手を出していいのか、出してはいけないのか。そういうことを常に考えながら進んでいく、または引き返してくる。そういうクライミングは絶対受け継いでいくべきだと思うのです。


初登

2016-05-25 00:57:02 | 無雪期山岳クライミング」

5月23日、以前から気なっていた岩場を訪れることができた。遠目に眺めて「かなり大きな岩場だ」と思っていたが、いろいろ調べてみてもクライミングの記録は見当たらない。地形図を眺めてはアプローチの方法などを考えていたが、何年も先延ばしにしてしまっていた。

月稜会の仲間であるIが興味を持ってくれたので、決行した。前夜発でアプローチの起点近くで仮眠をとり、朝7時に歩き始めた。地形図上の破線をたどり踏み跡が途絶えると地形を頼りに進む。1時間弱で樹林越しに岩が見えた。「でかい!」。思っていたよりスケールが大きい。岩は上下2つに分かれていて、それぞれ2~3ピッチ分はあるようだ。つまり100mあまりの岩峰が上下2本立っている感じである。

まず、岩場を裏側の樹林帯から巻いて、上部岩壁のピークに立ってみた。

ピークには何かのしるしだろうか、岩に文字が刻まれていたが、そのほかに人工物はない。

下って上部岩壁の基部に行ってみる。

基部を見回ってみると、古いリングボルトとハーケンがそれぞれ1本見つかった。

さっそくそこから取りついてみる。

 

岩は花崗岩だが、小川山や瑞牆の花崗岩と違って、あまりクラックはなく、カムが使えるところが少ない。ハーケンが有効だが、あいにく今日は持参していなかった。

岩は古期花崗岩というのだろうか。滝谷のような感じである。

上部岩壁を見上げる。

 

まず取りついたラインは岩場の一番右端で、4級程度のやさしい内容だが、ことごとくホールドが浮いているし、支点が取れないので、クライミングのグレード以上に恐ろしかった。

下から見えたハーケンを過ぎると、そこから先には残地支点はなく、登られた形跡は見つからなかった。

40mほどでテラスについたので、後続をビレーしたいが、全く支点が取れない。バックロープでボルトキットを挙げてボルトを打った。

もちろんできることならボルトなど打ちたくないのだが仕方ない。

 

2ピッチ目の出だしは岩が固く快適。しかしすぐにすっきりしない凹角に入り、右のリッヂに上がると、20mほどでさっき来たピークの右端についた。

後続のIが到着。本当のピークより低いところなので40m+20mで終わった。帰りはクライミングシューズのまま歩いて下った。

 

基部に戻ってから下部岩壁に移動した。

 

下部岩壁は、上部岩壁よりさらにすっきりしている。すっきりしすぎていて、NPが使えなさそうだ。

 

じっくり岩を眺めて弱点になりそうなラインを見極めて取りついた。

取りつきから10mほど登るとテラスになるが、全くNPが使えない。さらにここからは難しくなりそうなので、仕方なくボルトを打つ。

岩は固く、逆相のスラブの中にもホールドがちりばめられていて、登ること自体は実に快適だが、カムを使えるところを見落としてはいけない。

20mほど登ると核心部に行き当たる。心もとないマイクロカムと効きの悪いキャメロットの3番をセットするが、そのまま突っ込む勇気がわかない。

微妙な体制でバックロープを引き上げ、ボルトを打つ。打っている途中に墜落しそうだ。

岩が固いうえに体勢も悪いので、時間がかかりつかれる。やっとの思いでボルトを設置し、核心に突っ込む。

登ってみれば5.9程度のむずかしさだったが、グランドアップで初登するとはこういうことだ。

27mほどで安心できるテラスについた。もう今日はこれ以上は無理だ。

このテラスにも支点になるようなものはない。少し左下に太い木があるがルートから外れてしまう。また下降支点をボルトで作った。

この日合計6本のボルトを打ったが、岩が固くて手首が腱鞘炎になってしまったようだ。

ロワーダウンしてみるとロープが足りない。今日は50mロープだった。

バックロープをつないで着地した。

 

開拓途中の下部岩壁1ピッチ目をトップロープで登るI。

 

今のところ場所は公表できません。初登がかかっているからとか言う理由ではなく、これだけの岩場がなぜ今まで登られなかったのかということに、何か理由があるような気がするからです。

それがわかって問題なければ発表できるのですが。

 

それにしても久々の開拓、というより初登。やっぱり私はこういうクライミングが好きなんだ。

ボルトに守られた高難度のクライミングより、やさしくても冒険的で総合的な知恵と経験が必要なクライミング。

こういうクライミングを、私は「クライミング」と呼ぶのだ。


北アルプス 焼岳

2016-05-11 00:41:42 | 山登り・トレラン

5月9日(月)。月稜会の会山行で北アルプスの焼岳に登りました。メンバーは私のほかに4名。

日帰りの我々のほかにも1泊で、涸沢から奥穂組と、前穂北尾根組が入りました。奥穂組は翌日の天候が悪く涸沢に1泊して引き返したようですが、前穂北尾根組は女性2人のパーティーですが、翌日の天気が悪いことを予測して、沢渡を早朝のタクシーで出発し、ルートを北穂東稜に変更し、その日のうちに登り切り、北穂の小屋に入ったようです。わが会の女性は元気で強い。

我々日帰り組は中の湯の上の林道を7時50分に出発しました。曇り空で午後2時くらいからは雨の予報です。

焼岳のコルに到着してお釜をバックに撮影。今回は強いメンバーだったので、午前中に終わってしまう感じ。

 

北峰の噴煙を背にして撮影。見上げる先は南峯。

 

北峰に到着。11時くらいだったか。

 

ピナクルに立つ私を撮影してもらいました。

 

ちょっとバリエーション的なルートに入りました。

 

岩登りの後は雪壁。

 

同じ雪壁を登る。

 

最後は岩稜でピークに立ちました。下りもバリエーション的なルートで1時くらいには下山。予報通り下山とともに雨が降り出しました。

 


私の山仲間

2016-05-03 00:38:36 | 災害ボランティア クライマー派遣

今日は月稜会の集会日でした。会長はじめ会員が、「被災地にクライマーを送る会」の活動に賛同してくれて、寄付金を集めてくれたり、山道具のオークションによって寄付金を集めてくれました。

この日の集会日で17万円を超える寄付金が寄せられました。

自分のできる範囲でできることをしてくだされば十分です。OKMさんという仲間がいるのですが、この人は5年前の東日本大震災の時に身内を亡くされています。そういう中で多額な寄付をしてくださいました。今回も同様に多額な寄付をしてくださいました。こういう善意は金額の多さが善意の大きさだとは思いませんが、でもこの人の気持ちは強く伝わってきます。きっと同じ山仲間に災害に苦しんでいる方々の力になってほしい、寄り添ってほしいと強く願っているのだと思います。被災者の気持ちをわかっていて、そのために活動してほしいという願いが伝わってきます。

だから、私はそういう人の気持ちにもこたえたい。もちろん被災者のために、というのは前提だけど、善意のある方の期待にも応えたい。みんなが一つになるために。