Chimney角屋のClimbing log

基本的にはクライミングの日記ですが、ハイキング、マウンテンバイク、スキー、スノーボードなども登場するかも・・・。

クライミングをしない人に聞かせたいクライミングの話(その2)

2016-12-10 01:19:11 | 山とクライミングの話

クライミングが2020年のオリンピック種目に決まったことを、喜んでいないクライマーもいます。

私個人としてはうれしいと思っていますが、このことを喜んでいないクライマーの気持ちもわかります。クライミングの楽しさってなんなんだろうと考えてみると、「誰かに勝つ」ということは全く大きな要素ではないんですね。今できないこと、難しいことを鍛えて考えて、少しずつ克服してクリアする過程が楽しいのです。それも自然に囲まれた癒される場所でできたら、さらに楽しいのです。そして気の置けない仲間と競うだけではなく、一緒に励ましあいながら登れたらもっと楽しいのです。だからクライミングが「誰かに勝つ」という競争にしたくないのではないでしょうか。

そして、オリンピック種目になることで、クライミング人口が増えることは、クライミングに対する認知度が上がり、理解が深まることはよいのですが、岩資源の少ない日本、冒険的な文化が遅れている日本では、オーバーユースの問題も含んでいます。登れる岩場が少ないのにクライマーばかり増え、ルールやマナーに疎いクライマーが増えてしまったら、岩場に立ち入り禁止の看板が立ってしまう。そういうことも懸念しているのです。昔はクライマーといえば世間から異質の人種に思われていたかもしれませんが、数が少なかったせいで目立たないし、少々社会の流れに逆らった生き方をしていても、それほど一般社会に対する影響はなかった。でも今は違います。クライマーだってちゃんとした社会人でないと、世間から批判される対象になってしまいます。今年ちょっと話題になった「天然記念物にクサビ」問題もそうです。「クサビ」はクライマーが目立たなかった時代、岩が天然記念物に指定される前に打たれたものであっても、クライミングが世間一般に認知されるようになると、こういうことも表ざたになってきます。

だから私も、目立たないようにひっそりとクライミングを楽しんでいたい。あまりクライミング界を騒がしくしてほしくないという気持ちがよくわかります。でもそのままにしていたら、自分の世代は楽しめるかもしれないけど、やっぱりこの国におけるクライミングの認知度を上げて、冒険的な文化を成熟させないと、いまクライミングを初めて頑張ろうとしている子供たちに、クライミングが楽しめる環境を残せないかもしれないと思うのです。

安全が確保できるエリートスポーツとしても、自分の命を自分で守る冒険としても、誰も成し遂げられなかったことを成し遂げるチャレンジとしても、クライミングという文化は残していきたいと思うのです。


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