たびたび神社

ライターあかりの神社ブログ

心を宿した巨人

2017-06-23 10:33:57 |  無社殿神社2

<引作の大楠 ひきづくりのおおぐす>

 

熊野の巨樹信仰の名残を今に伝える、

引作の大楠を間近で目にしたとき、

思わず「巨大な恐竜の足だ…」と

心の中でつぶやいてしまったほど、

岩壁のようにゴツゴツとした肌を持つその古木は、

植物というより動物に近い波動を放っていました。

「境内にある大きな木」はたくさん見てきましたが、

もはや境内がどこにあるかすらわからないくらい、

圧倒的な大きさを誇る巨樹は、

なかなかお目にかかれるものではありません。

 

その「逆転現象」とでも表現すべき、

特異な神域の様子を眺めておりますと、

神社の境内や建物が祈りの対象なのではなく、

自然物そのものが信仰の大元であるということが、

誰に聞くまでもなくはっきりと伝わってきます。

日没間近の薄暗くヒンヤリとした空気の中で、

白黒のマンモスと化したその木は、

まるで永遠の心を宿した巨人のように、

足元にいる私のことを静かに見下ろしていました。