<まないたさま>
熊野市有馬町の池川という集落にある
まないたさまという自然信仰の聖地は、
どこまでも深く険峻な崖の際に沿って、
ひたすら山道を下った先にありました。
まさに「谷底へと転げ落ちる」
という表現しか浮かばないような状況の中、
足元を確認しながら慎重に足を進めて行きます。
幸い地元の人々の厚い信仰心のおかげで、
参道のほとんどに頑丈な石段が敷かれてあり、
荒天のときでもなければ、さほど心配はないようです。
参道の行き止まりを前にして、
木々の隙間から見えてきたのは、
これまで歩いてきた森の景色とはかなり趣の異なる、
巨大な岩々がゴロゴロと転がった荒々しい様相でした。
一番手前の岩と岩の間には、
天然の木をそのまま利用した
小さな鳥居が置かれています。
その粗削りでワイルドな「絵面」には、
一瞬近づくことをためらうほどの、
野生的なパワーがみなぎっていました。