<育生町・赤倉地区>
丹倉神社へと向かう林道の入り口には、
熊野市育生町赤倉という、
日本民話に出てくるような佇まいの
小さな山間集落がありました。
「民宿があるくらいだから…」 という、
当初の予想を大幅に裏切り、
その周辺一帯を取り巻く浮世離れした光景は、
まさに「孤高の里」という言葉がぴったりでした。
道路事情がよくなった現代社会においては、
「どこから行っても困難」という場所には、
滅多にお目にかかれないものですが、
この赤倉地区へと向かう県道52号は、
熊野市側からも北山村側からも、
急峻な山道を30分以上も登らなければならず、
この地で暮らす人々のご苦労とたくましさに、
心から敬意を示したくなるような道です。
狭いスペースで対抗した軽トラックのおじさんは、
私が「外地の人間」と判断するや否や、
離合しにくい場所で車を停めてしまったことを、
まるで自分の責任であるかのように、
運転席の窓を開けて頭を下げてくれました。
私たちが求めてやまない真の聖地は、
こうした人たちの力によって、
長い間守られ続けてきたのでしょう。