<まないたさま>
「まないたさま」という
親しみやすいネーミングとは裏腹に、
熊野の山中にあるその古代信仰の聖地は、
まるで荒ぶる神が宿るかのごとく、
プリミティブな姿を保っていました。
鳥居の向こうに敷き詰められた滑らかな白石と、
岩と岩との間を流れる小さな滝の流れだけが、
未だ朝日も差し込まない深い森の谷底に、
そっと白い色味を添えています。
二つの巨岩が折り重なるようにして作られた
狭い空間(磐座)にはご神体があるようですが、
周囲を取り囲む巨岩の圧倒的な存在感と、
心の中の微かな「引っかかり」に阻まれ、
それ以上立ち入ることはできませんでした。
古代そのままの様相を残すこの場所は、
確実にすばらしいところだとはわかるものの、
なぜか「早くこころ立ち去らなければ」
という焦燥感にかられるのです。
ひと通り周りの風景を写真に撮ったあと、
この地に立ち寄らせてもらったことの感謝を伝え、
「長居は無用」とばかりに、その場を後にしたのでした。