<丹倉神社 あかぐらじんじゃ>
熊野市育生町・赤倉地区にある丹倉神社は、
見たこともないほどの巨岩をご神体と仰ぐ、
自然信仰の原型ともいえるような場所です。
神域へと続く急な石段から平地に降り立ち、
祭壇へと近づくと、さらに強い圧迫感とともに、
尋常ではない高さの岩壁が目前に迫ってきました。
参道の途中には、榊が添えられた小さな祠が、
山の斜面を仰ぎ見るようにして置かれ、
岩の手前のご神木の近くには、
きちんと手入れをされた手水場から、
沢の水がちょろちょろと音を立て流れ出ています。
深山の懐という厳しい環境からは想像できないほど、
「人間が参拝するための手順」が、
すべて整えられた丹倉神社の神域には、
代々この場所をお守りしてきた人たちの
崇敬心が充満しているのでしょう。
どんなに奉仕の気持ちがあっても、
日々聖域を管理するという行為は、
相当の労力を必要とするものです。
数えきれないほどの人間の願いを受け止めてきた、
目の前の巨大な磐座を見上げながら、
さらなる過疎化が進むであろうこの地域の今後と、
「聖地の行方」に思いを馳せてしまいました。