すずめ通信

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第1863号 「あついぞ!熊谷」にミストを浴びに行く

2023-07-02 16:52:59 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】熊谷のイメージが「日本一暑い街」と定着して久しい。今年も天気予報でその名を耳にするようになり、頭上から冷えたミストが降り注ぐ駅前広場の映像が紹介される季節になった。この霧を浴びるとどれほど涼しいのか、体験したくてやって来た。だが今日は生憎というか幸いなのか、「気温28度以上・湿度75パーセント未満・風速3メートル未満・降雨なし」というミスト運転条件が満たされていないのだろう、装置は休養日のようである。



ただ何気なく撮った写真に、その仕掛けが写っていた。熊谷駅北口のタクシー乗り場付近である。陽除けなのだろう、歩道はすべて半透明のパネルで覆われ、直射日光を遮っている。写真を拡大してみると、パネルの下にパイプが通じ、ところどころから爪のような装置が歩行者を見下ろしている。これがミストの噴き出し口なのだろう。その小さなノズルに加圧された水が送られて来て、細かな霧状のドライミストになって噴き出し、周囲の熱を奪う。



「暑い街・熊谷」が知れ渡ったのは、猛暑日日数が28日と日本一になった2004年ころかららしい。市民にとってはあまり嬉しくない「日本一」だったのだろうが、市はこの暑さを逆手に取り、「あついぞ!熊谷」作戦を開始する。緑のカーテンや遮熱舗装事業に取り組み、ついに2018年7月、最高気温41.1度の日を迎える。これはその後の浜松市での数値とともに、今も国内最高気温だ。駅前のミストは、この年から盛大に噴き出したようだ。



熊谷には地方気象台が置かれている。その統計によると、年間猛暑日日数では鳩山町が超える年もあるけれど、最高気温の熊谷トップは揺るがない。埼玉県の平野部がなぜ高温になるのか、気象台は「ヒートアイランド現象」と「フェーン現象」の二つの要因を挙げている。前者は東京で生まれた人工的な熱が、海からの風に乗って関東平野の奥に向かって流れてくるための気温上昇で、後者は日本海側からの風が下降することで暖かくなるためだ。



最近は東京の人工熱がますます過熱しているのか、熊谷にとどまらず、館林や佐野、あるいは前橋まで、予想最高気温の常連になっている。それら自治体や家計の暑さ対策の経費総計は、毎年、巨額になると想像される。だから「余計な熱の発生源として責任があるでしょう」と、東京に「ヒートアイランド税」を請求したらいいものを、気温だけでなく人情も篤いのだろう、熊谷市民がそうした要求を出したとは聞かない。「うちわ祭」で発散するのだ。



駅前広場に「熊谷うちわ祭」の大きな幟が立てられている。「関東一の祗園」を謳う熊谷の夏祭りで、4年ぶりの開催まで1ヶ月を切っているらしい。江戸期の中ごろに始まったという八坂神社の祭礼で、各町内を神輿が練り歩き、3日間に渡って街が沸き返る。うちわで暑さを退散させるのかと思ったら、疫病退治に振る舞われていた赤飯が、明治のころに「うちわ」の配布に切り替えられたからだという。「あついぞ!熊谷」に似合いの祭りである。



中山道の宿場町として発展してきた熊谷は、埼玉県北部の中心都市として「熊谷県」が置かれたこともある。人口は20万人を突破したこともあるけれど、現在は193000人ほどだ。「あついぞ!熊谷」作戦で街の知名度はグンと上昇したが、熱いのは気温だけではない。50年以上昔の国体でラグビー会場となって以来、ラクビータウンとしてますます熱い。駅を埋め尽くすフラッグやポスターは、いささか暑苦しいほどである。(2023.6.30)











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