すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第886号 映画「わたしを離さないで」を観て

2011-04-27 12:49:45 | Mie Report
【Mie】英国の代表的作家「カズオ・イシグロ」のベストセラー「わたしを離さないで(Never let me go)」が映画化され、名古屋で公開されたので観に行った。名古屋まで映画を観に行くのは滅多にないが、この映画は配給会社系列により、もしかしたら三重で公開されないのでは、と思ったからだ。

観終わっての感想を一言でいえば、「何と切なくて哀しい映画」だろう。最後の場面では涙がこぼれ、エンディングシーンが流れても、ほとんどの観客が席を立たず余韻に浸っているようだった。それほどに、3人の主人公が哀れでかわいそうに感じたからだろう。

原作者はこの作品を1990年に書き始めたが途中でやめ、その数年後にも書こうとして辞めてしまい、2001年ごろに3度目にトライしてやっと書き上げたという。それというのも物語のシチュエーションがうまく設定できなかったから。

ヒントになったのは、世界で最初にイギリスで誕生したクローン羊「ドーリー」。作者によれば、この出来事によって「若い人たちが短い時間しか生きられない」というシチュエーションが可能となり、物語は完成した。

インタビューで作者が語るには、この物語のメッセージは「皆が思うより、人生は短いということ。その中で最も重要で、やるべきことは何なんだろうか?」ということ。作者が日本へきて思うのは、この物語で描いている命のはかなさなどは、とても日本的だと思ったそうだ。

《もし、せいぜい30歳位までの限られた人生しか生きられないと分かった時、人はいかに生きるべきか?何が大切で、何をするべきか?》というのがこの映画のテーマである。その時に大切なのは、決して《金や権力、出世》などではなく、それは……。

3人の主人公を演ずる俳優たちがそれぞれの役柄を好演。《17歳の肖像》で今年のアカデミー主演女優賞にノミネートされたキャリー・マリガンがとてもいい。キャリーは表情で心の内面を表現することができる。またキーラ・ナイトレイも男優のアンドリュー・ガーフィールドも若くて才能に溢れている。

イギリスの美しい田園風景の中で展開する残酷なSFストーリー。全編を通して流れるレイチェル・ポートマン作曲の物哀しいメロディがたいへん効果的だ。作者はこの映画を、イギリス人の俳優が出ている日本映画のような気がすると語った。私のこの作品の評価は ★★★★☆。

(冒頭の写真は映画のチラシより)


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