すずめ通信

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第1106号 名古屋ボストン美術館・「日本美術の至宝」展

2012-09-18 20:30:01 | Mie Report
【Mie】先日、名古屋ボストン美術館の「日本美術の至宝」展を観た。以前にNHK「日曜美術館」で紹介され、もし日本国内にあればどれもが国宝級という日本美術がこれだけ一堂に会して観れるのは、所蔵するアメリカのボストン美術館でも不可能という。まさに《まぼろしの国宝》。

日曜日とあって観客が多く作品の前に行列ができている。中でも「平治物語絵巻」(鎌倉時代)と「吉備大臣入唐絵巻」(平安時代)は作品が長いため、行列の進行がゆるやかだ。この展覧会の最大の目玉は何といっても曽我蕭白の「雲龍図」。

6月に三重県立美術館で「曽我蕭白と京の画家たち」展を観た私は、この「雲龍図」が何としても観たかった。お目当ては展示作品のラストに、襖8枚分の大きさの巨大な龍が圧倒的な迫力で出現(冒頭写真)。

エネルギーに満ちた力強い描写と迫力のある構図が見ごたえ十分だが、この写真でも分かるように龍の顔がどことなく漫画チックでユーモラスだ。これに限らず蕭白の絵は顔の表情が豊かで、作品にユーモアとストーリー性がある。



この作品のほかに私の印象に残ったのは、狩野元信の「白衣(びゃくえ)観音図」。白い衣をまとった観音様が美しく、こんな観音様を観たのは初めてだった。アーネスト・フェノロサは、この作品を狩野元信の最高傑作と絶賛したという。他には長谷川等伯の「龍虎図屏風」が印象的で、全66点の作品はどれも見ごたえがあった。

ボストン美術館所蔵の日本美術を語る上で、アーネスト・フェノロサと岡倉天心、ウィリアム・スタージス・ビゲローの存在は欠かせない。フェノロサと天心はボストン美術館・草創期に在職して日本美術を収集。天心は1910年にボストン美術館の東洋部長となった。

また、フェノロサとともに来日した医師で資産家のビゲローは、日本の文化や伝統に魅せられて7年間も日本に滞在し、その間に日本の美術品4万点以上を収集してボストン美術館に寄贈。フェノロサのコレクションが絵画中心であるのに対し、ビゲローのコレクションは幅が広く、絵画、金工、漆工、刀剣甲冑、染織などが含まれる。

展示のプロローグには、この3人の写真と功績が紹介されている。日本美術界の発展に貢献し、膨大な日本美術を収集・寄贈して世界に紹介した功績は特筆に価する。フェノロサとビゲローの遺骨は、遺言により日本にも分骨され、三井寺には2人の墓が仲良く並んで建てられているという。



この展覧会は前・後期に分かれ、前期は9月17日に終了し後期は9月29日~12月9日まで開催される。後期は曽我蕭白の「雲龍図」以外、すべての作品が入れ替わるという。後期の見所のひとつは、チラシにあるように尾形光琳の「松島図屏風」だろう。




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