平成31年4月18日(木)
昨日県庁に登庁した際、茶農家を営む同期県議と今年の茶の育成や取引予測についてお話を伺いました。あまり明るい表情ではなく、連休前の出荷でなんとか乗り越えたいという様子が、昨年と同様の茶農家経営の厳しさを連想させます。
静岡茶市場では、明日に新茶初取引が行われる予定であり、生産量や流通量が日本一であることから、その成り行きが注目されます。報道によりますと、茶園の新芽の育成は4月初旬の冷え込みで例年よりやや遅れていたものの、順調に育っているということで、後は価格がどうなるのかが気になります。近年では日本食ブームに伴って、抹茶などが海外で人気があるそうで、販路も広がっているようです。
さて、本県地域外交局が発行している「海外トピックス」(静岡県海外駐在員報告)の4月号が届きました。シンガポールを拠点とした東南アジア、中国、韓国、台湾の駐在員から最新の現地情報です。
その中から、「シンガポールと共同で進める農業の海外展開」についてが目に止まりましたので紹介します。
シンガポールでは1980年以降、政府主導による産業構造の変化に伴い、食糧自給率が急激に低下しました。これにより、未曾有の経済発展を成し得ましたが、近年、フード・セキュリティ(食料安全保障)を強化する戦略に転換しています。これは、単に食糧自給率を増やすだけでなく、食料生産モデルを海外に輸出できるような、都市型農業・水産養殖技術のハブを目指すとしています。連想するのが、近年、水のないシンガポールが自国の水を確保するとともに、世界中の優秀な水処理技術を集めて、海外に輸出するプロジェクトを立ち上げた記憶を蘇らせました。
シンガポールが目をつけたのは、静岡県が目指す「農業の生産性の向上や関連産業のビジネス展開を目的とした『AOIプロジェクト』(最先端農業プロジェクト:拠点は沼津市)」で、現地の高等教育機関との間で覚書を交わし、農業分野における研究開発や、開発される技術や製品のグローバル市場への展開及び事業化の支援、研究スタッフの相互交流などの協力が行われます。これにより、本県農業の海外展開を推進するプラットフォームが整ったとしています。
そのほか、本県の補助事業を活用した、種苗及び次世代栽培システムの海外展開トライアル事業がシンガポールで進んでいるといい、同国に設置するコンテナ型植物工場で現地のニーズに合った生鮮野菜を栽培し、テストマーケッティングを実施する事業です。
本県発の先端技術が世界に貢献すると結んでおり、夢のある話題で大きな期待を寄せますが、県内農業について先ほどの茶農家の現状を見ると、厳しさだけが目につき、海外で期待される技術を県内農業にどう生かしていくのかは、まだ見えてきません。
「食料安全保障」という言葉が出てきましたが、改めて国民の安全を守るための戦略的な国内農業のあり方を、本県を基盤として考えていかねばならないことを気付かせるレポートでした。