ひよりの音楽自己満足

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深町純さん 春の夜の夢

2010-04-10 07:15:42 | 70's J-プログレ
 独自の音楽観と類まれなるセンスで作曲家として、さらに凄腕キーボード奏者としても活躍され、アルバム制作・ミュージカル・ドラマ・映画・CMなど幅広く手がけられている日本音楽界の大御所<深町純さん>。1978年にはニューヨークの凄腕ミュージシャンを集めてレコーディングし、「On The Move」というアルバムを発表。さらにこの年にその凄腕メンバー皆を連れ添っての凱旋帰国ライブを敢行。そしてそのときのライブ音源を収録した名盤の誉れ高いアルバム「深町純&The NewYork All Stars Live」を発表しています。
 この年に深町さんはそれらと全く対極に位置する、深町さんおひとりでのシンセサイザーと多重録音を駆使した実験的なアルバム「春の夜の夢」を発表しています。それは76年頃から構想を練っていたという、「平家物語」を音楽で表現するという壮大な計画です。
 「平家物語」は“祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれるひとも久しからず。唯春の夜の夢のごとし”とはじまります。深町さんは“唯春の夜の夢のごとし”を「春の夜の夢」として音に託して、“盛者必衰の理”を新しい音の型として描きだしたそうです。また、「平家物語」という日本の古典でありながら、この作品で深町さんは和楽器は一切使わずにシンセサイザー・ドラム・パーカッション等を独りで演奏して作り上げ、固定観念にとらわれない独自の世界で表現されています。
 このアルバムは8章で構成されています。アルバム1曲目は「序章」。強風が吹き荒れる音からはじまって、うねるシンセサウンドとシンバル・太鼓の音がゆったりと神秘的に不気味に響きます。そしてピアノの美しい音色とムーグのゆったりとした音色がしっとりと響き、その後、波の音のような水の音がながれてFin。
 2曲目は「祇園精舎の章」。琵琶のような電子サウンドとシンセの音色がダークに響ます。太鼓の音もいいアクセントになってますね。その後、ドラのような音も加わってダイナミックになるも、一転静かになって横笛のような音がゆったりとしっとりと響きます。中盤には琴のような音色も加わっておごそかな雰囲気に。終盤では豪雨のような音が響いたあとシンセの幽玄な音色が幻想的に響いて。
 3曲目は「栄華の章」。ピアノのアップテンポのパワフルなリフがながれ、そこにドラムも加わって軽やかにリズミカルに展開していきます。がバックには人の笑い声が不気味に響いて。そしてムーグの明るく爽やかなフレーズがリ軽快なリズムにのってながれ、パワフルなピアノリフで盛大にFin。
 4曲目は「落日の章」。暗闇のなかにピアノのゆったりとした音色が幻想的に響き、そしてシンセの浮遊感のある音色がたおやかに優しくながれて。無重力空間を漂っているかのようです。とっても心地よい心安らぐ曲ですね。
 5曲目は「修羅の章」。空気を切り裂くような音から力強いピアノリフが響き、そして合戦のような音がバックにながれ、そしてスリリングに展開していきます。さらにドラムがはいってアップテンポで攻撃的な曲調に。手に汗握る展開、緊迫感が伝わってきますね。中盤には刀を振り下ろすような音が左右からビュンビュンと鳴り、そして再び馬の嘶きや歓声もあがって。終盤では波のような水音が聞こえてきて、そして再びスリリングにパワフルに盛り上がって。時代劇の合戦の様子が目に浮かんできますね。ラストは大波の音が響き渡ってFin。
 6曲目は「水屑の章」。海の波の音が響き、そして美しいピアノのリフレインがしっとりとながれて。その後、哀愁ただようムーグの音色がピアノをバックにメロウにながれ、ラストはしっとりとFin。どことなく“空しさ”や”儚さ“を感じますね。
 7曲目は「水霊の章」。コーラスのようなサウンドがゆったりと不気味にながれて、あっという間にFin。
 8曲目は「終章」。真っ暗な洞窟に風が抜けるような不気味な音からダークにはじまって、そこに琵琶のような音や太鼓の音が神秘的に響いて。そして強風吹き荒れる音がながれてFin。 
 斬新な方法で音楽化された「平家物語」。日本の歴史の重みが伝わってくるようです。が、暗く重いだけでなく、大衆に受け入れやすいように聴きやすくなっていると思います。制作に2年間を費やされた、緻密に計算しつくされた一代絵巻抒情詩。70年代プログレッシブロックの名盤と賞賛されています。

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