満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

horn & electronics vol.Ⅲ。終了。

2019-09-25 | 新規投稿

9.24(tue)horn & electronics vol.Ⅲ。終了。6年前に山内桂氏(sax)のソロ演奏を初めて聴いた時の強い印象は確かな記憶とともにある。単音を繰り返しながら徐々に音圧を増していく独特の奏法は徐々に音量を上げながら、鼓膜にビリビリ響く金属音のような音響に変化していった。一つの音から様々な音階や破片が飛び散るような鳴り方をする。正にエレクトリックな感触だったと思う。そこで思い立ったのがhorn & electronicsという企画で、主に電子音楽の演奏者と山内氏を配合させる試みだった。本企画3回目の今回、江崎將史氏に参加していただく事によって、山内氏の音に対する異化、更には抽象音による対比を試みたのだが、結果的に私の目論見は成功したと思う。即ち江崎氏のトランペットをいわば物体的対処するかのような演奏法はエレクトロニックな全体のサウンドを異なる局面へと導く発火点となっていたからである。江崎氏はトランペットのバルブをカチャカチャ鳴らしたり、紙をクシャクシャにして被せ、ミュート演奏をしたり、果てにはエアポンプで空気を注入し、その音を確かめながら、同時に吹いたりと、全く奇想なアイデアを演奏に持ち込んでいたのである。「今日の為の実験などしてたら出るのが遅くなってしまいました。すいませんが到着遅れます」というライブ前の江崎氏からのメールを見て、逆に嬉しくなった私の気持ちを分かっていただけようか。
さて、今回、出演者が7名と多く(山内桂sax江崎將史trumpet石上加寿也synthesizer、electronics宮本 隆bass、samplarオカハシノブヒロelectronics児嶋佐織termin松元 隆drums,electric percussion)私は以下のような細かいセットを20分ずつの演奏で連続していく構成をとった。①山内、江崎、宮本、オカハシ②山内、江崎、松元、児島③山内 石上、オカハシ④江崎 宮本、石上、児島、松元⑤山内solo⑥江崎,石上⑦ALL。この中でオカハシノブヒロ氏が今回、初参加という事もあり、微音的なボリュームについてオカハシ氏に事前に指示したのだが、氏は見事なアンビエンスを披露。中でも全体のサウンドが無機質なホワイト金属音の波が続く最中に放ったストリングスの音響はオカハシ氏のセンスを感じ、これを聴くに事前の打ち合わせは不要であったと反省した。オカハシ氏は自ら主宰するナニワアンビエントで見せる大音響のエレクトロサウンドと違う即興コラボを自然に対応していたのである。それはドラマー、松元隆氏にも言えるかもしれない。何せ彼はサイケハードロックバンド秘部痺れをメインの活動とするドラマーで寧ろ大音量を誇るパワードラマーなのだから。その彼が実は繊細な即興演奏もやる事を秘部痺れのファンは知らないかもしれない。しかも今回はアンビエンスな即興からフリージャズ的なグルーブまで幅広い演奏を披露。大いに場面転換の起点になっていた。更に石上加寿也、児嶋佐織という本企画に欠かせない演奏者の余裕のパフォーマンスがイベント全体を支えていた事も記しておく。

act:
Yamauchi katsura山内桂(sax)
Ezaki Masafumi江崎將史(trumpet)
Ishigami Kazuya石上加寿也 [synthesizer、electronics]
Miyamoto Takashi宮本 隆 [bass、samplar]
Nobuhiro Okahashi オカハシノブヒロ(electronics)
Kojima Saori児嶋佐織 (termin)
Matsumoto Ryu 松元 隆(drums,electric percussion)
コメント
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