満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

Bugs cry what (吉本裕美子+狩俣道夫) レコ発ツアー in大阪,終了。

2019-09-08 | 新規投稿

Bugs cry what (吉本裕美子+狩俣道夫) レコ発ツアー in大阪。終了。
出番トップは宮本隆(bass+田中康之percussion)+山田いづみdance)+踝打無guitar。私が重低音でループさせながら、ドローン的に始まる。田中氏、カホンをメインに小刻みなビートをつくり、そこに踝打無が粘り気のあるギターフレーズを乗せていく。やや幽玄といった趣きか。やがてダンサー山田いづみが純白の衣装で登場し、オーディエンスの注意は音からダンスの動きへと傾いていく。津田氏のカラフルな映像と相俟って、おそらく客席から観るステージは一つの絵巻となっていたのではないか。事前の打ち合わせはは音の出し入れや強弱、メリハリをつけるという当然と言えば当然の即興の重点要素であろうが、全員でそれを実行する事ができたと思う。即ち無音の状態や限りなく小さい音を折り込む事で、約45分の時間を短く感じられる程の濃密さを創造できたのではないか。山田いづみは後半、衣装をブラックに着替え、動きにスピードを加え、前半での優雅さと対極的な世界を作っていた。このあたり、流石と唸らせる即興劇のような趣があった。
そして今晩のトリであるBugs cry what (吉本裕美子+狩俣道夫)。CDリリースのレコ発だが、やはり、型通りの演奏をしなかった事に感服。冒頭でいきなり狩俣氏による朗読めいたナレーションに驚き、しかも床に這いつくばりながらピアニカを演奏する様は、場の高揚したムードに応じたパフォーマンスだったのか、これは定かではない。ただ、CDで聴かれたクールネスにどこか熱い情動的な要素が確実に加わったライブだった事は間違いないだろう。𠮷本氏のダクソフォンは歌い、喋り、呟き、泣く。まるで感情の神羅万象を自在に表現するかのような拡がりをそこに見た。彼女も場の雰囲気に応じた即興を披露。お客さんほぼ満員の中、余裕をもって口琴を操り、ギターを弾きながら、ステージを歩く。狩俣氏のド迫力(まさに)のフルートはバスドラと笛と声が同時に鳴っているようなグルーブを生む。こんなビートの効いたフルート演奏があるのか。そしてサックスはフリーキーなインプロヴァイズでありながら音の奥にどこか哀愁というか情念というか、言いしれないこぶしを感じるのは私だけだろうか。このように二人の繰る様々な楽器媒体によって、異次元の物語は進行した。「夢は夜、ひらく」を歌う狩俣氏の背後で、𠮷本氏は彼女独特のテンションの低い即興ギターを披露。これが聴きたかった。このパランポロンと響く𠮷本奏法とでもいうべきギター演奏は空間を切り裂くような数多のギターインプロヴァイズの対極だろう。かと言ってアンビエントでもない。空間的に音響を奏でるものでもない。端的に言えば時間に寄り添いながら溶解させるような一種、脱力の輝きとでもいうべき魅力がある。自然体の彼女が長い即興演奏の活動の継続によって身に着けた個性なのだろう。
今回のライブでもう一つ特筆すべきは映像の津田氏の作った森林の世界だろう。私はあらかじめ、Bugs cry what のCDの写真のオリジナルを彼に渡し、それに津田氏は揺らぎや色の変化を付け、森が生きるような感覚を作りだした。茂みに分け入って、進んで行くような映像の中、狩俣、吉本両氏は驚きの演奏を実現した。一つの物語が完成したような全体の進行を観る事により、私の目論見は成功したと思っている。

9/7㊏@ environment 0g [ zero-gauge ]
◍ bugs cry what
吉本裕美子Yumiko Yoshimoto(guitar/daxophone)
+狩俣道夫Michio Karimata.(flute/saxophone/voice/etc.)
◍ 宮本隆MiyamotoTakashi(bass)+田中康之Tanaka Yasuyuki(percussion)+山田いづみYamada Izumi(dance)+ +踝打無Kurubushi dub(guitar)
◍ Kenji Tsuda (visual)
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