満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

The Allman Brothers Band  『Eat A Peach +9 』

2007-10-19 | 新規投稿
 
The Allman Brothers Band 『Eat A Peach +9 (deluxe Edition)』

バンド活動を活発にやっていた頃、ライブでの対バンが上手かったりすると、気後れしたり、変に落ち込んだりする事があった。各々の楽器がイイ音を出し、バランスも良く、バンド全体に流麗なグルーブ感があれば、うーん負けたか、という感じになる。
オールマンブラザーズバンドは例え著名なプロでも間近で見れば、「もうバンドやめようか」と愚痴をこぼしそうになる位のレベルのバンドであろう。全くこのバンドの演奏たるや、それこそ全てが備わっていると言っても過言であるまい。

サザンロック<南部サウンド>というカテゴライズはデュエインオールマンをデュアンオールマンと長く表記していた事と同じくらいの日本ジャーナリズムによる間違いだった。
このバンド。名付けるならトータルロックグループだろう。ロックインプロヴィゼーションがあり、尚かつサウンドの緻密さ、構成の起承転結、物語性がある。
凄まじい即興演奏と楽曲の緻密な構築美の共存。静と動の対比。
なんて書くとキングクリムゾンの事?とでもなりそうだが、ブルースロックのオールマンブラザーズバンドにこそ、そんな形容は似つかわしい。ボーカルとインストの時間関係は絶妙すぎる。キャッチーなメロを持つコンパクトな楽曲と30分以上に及ぶ即興演奏が違和感なく同居する。作曲能力、演奏力、表現力、即興性、構築性、構成力、スピリット。その全てがロックミュージックの手本のような気がする。豊饒だ。あまりにも豊饒な音楽だ。

「ロックアルバムベスト100」(レコードコレクターズ版)という本でオールマンブラザーズの『フィルモアイースト』は一般人選出で7位だが、意外にも批評家選出で30位であった。ザ・バンド(批評家選出3位)等に比べ、ベタなところが批評家というヒネクレ人種の評価に合わぬのか。いや、オールマンレベルの演奏現場の洪水の中に身を委ねれば、その快楽の渦の中に批評言語が溶けてしまう。思念を無効化するアルコール付けの状態になってしまうだろう。酔っぱらう音楽だ。確かに。この快楽を正当に認めたくない。いや感じないのかな。美味い酒の味が分からぬ奴ら。私もそうかもしれないが。

個人的には『フィルモアイースト』より好きな『Eat A Peach』(72)に未発表ライブ(最後のフィルモアイーストでの音源)をカップリングしたのが、この『Eat A Peach (deluxe Edition)』。安易な企画だが、音楽が良いので問題なし。『Eat A Peach』録音中に起こったデュエインオールマンのバイク事故死は結果的にディッキーベッツの作品挿入によるアルバムの絶妙なバランス感覚を生んだのか。分からない。そんなのは結果論だ。デュエイン死後の『brothers and sisters』(73)でグループはもう別のバンドになっていた。

昔、「MUSIC LIFE」のグラビアではシェールを連れてパーティ三昧のグレッグオールマンが常連だった。いつも酔っぱらっていた。ソロアルバムも聴いたな。かなりだらだらしたものだった記憶がある。今聴いても印象は変わらないかも。兄貴が死んでからグレッグも死んだのか。オールマンブラザーズバンドの曲の大半を作り、バンドの中心にいたグレッグは兄貴と一体だったのかもしれない。

<演奏>こそが全ての時代だった。
どんな場所でも、どんなセッティング、PAシステムでも瞬時にサウンドチェックし、自分の音が出せる。そして何時間でもジャムできる力量。オールマンブラザーズバンド。デュエインを中心に奇跡の一体化を成した驚異的な集団だったのだろう。

演奏の時代に還るべきだ。演奏にこそ本当の音楽の美がある。この快楽をスルーしてまで未来とやらに行く必要はない。サンプリングや編集加工はもうおしまいでいい。そんな事まで思い起こさせる力がある音楽。永久保存だろうね。

2007.10.19




















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