満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

     Jose Gonzalez  『Veneer』

2007-10-16 | 新規投稿

スウェーデン在住のアルゼンチン人二世であるホセゴンザレスのアルバム。アコギの弾き語りによる静謐な世界。澄んだ声。サウンドの乾き具合。透明感。昨今の音響派全盛時代にジャストタイミングな音楽だと感じられ、スノッブ受けしそうな気配。
しかし私が最も注意したのはギターの異常なグルーブ感だ。このドライブ感は南米の血だろうか。ライナーやネット情報ではニックドレイク、エリオットスミス、ビートルズ、トータス、ジョイディビジョン、ブライアンウィルソン等と比較され語られているが、何なのかと思う。色んな名前を羅列して煙に巻くのは昨今の悪しきクリティックの常套手段。何々風だと安易に断言し、何も知らないリスナーに興味を持たせるだけ。(どうでもいいような歌手にディラン、ヤングの継承者などといとも簡単にのたまう習慣には歯止めが効かないね。批評家がレコード会社の宣伝部隊になっている。みんなで盛り上げないと業界そのものが沈没だから。若いリスナーは簡単に騙されてどうでもいい音楽を聴かされている。)

強烈なギターミュージックだと思う。このリフの応酬やアクセント、強拍の付け方はブルースメンのそれだ。強いて類似性を見出すとすれば私にはベンハーパーが登場した時のギターのグルーブの強調性と同質なものを感じた。このギターは主張している。歌っている。ゴンザレスの声の澄んだトーンや透明感はたまたま本人の持ち物だっただけの事。本人の意識は直球型のソウル、ブルースだろう。完璧にピュアミュージックだ。

曲調は平坦で、起伏無きなだらかな坂道をゆっくり上っていくような感じ。しかし確かな絶頂はある。真摯な歌い方に物語性も強く感じさせる。何度も繰り返し聴けるのは、アクがないからではなく音響への配慮。そこは今風(アルゼンチン音響派との接点はないと思うが)。アンビエント的なたゆたう時の流れが前面にあり、BGMにもなる。只、この一見、お洒落で映像的な音楽の底から響いてくるソウルに誰もが引き込まれる筈だ。いやがおうにも耳をそばだてざるを得ない説得性がある。強い歌だ。今後、アレンジがこなれていくのか。バンド形態に移行するか。それは分からない。しかしこのホセゴンザレスのギタープレイの静かなる激越さが、彼の極めて個性的な音楽性を醸し出す一番の要素となっていく事は予想できる。

2007.10.15
  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする