思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『あのこは貴族』山内マリコ

2022-03-22 11:09:51 | 日記
『あのこは貴族』山内マリコ
松濤の実家に住み、婚活に励む現代の「貴族」な華子の物語。

ちょっと乾いたトーンの三人称なのが良い感じ。
「東京の中心のごく一部」に住む彼らの生態を語るスタイル。
ナショジオっぽい笑

26歳、恋人にふられ、仕事も辞め、暮らしに不自由はないものの
結婚への焦燥感に追われる華子の日々。
貴族も大変だなあって笑いつつも、
婚活(というか自分の現状と未来への不確かさに焦る時期)は、
そりゃ誰だって辛いよなあ、とも思う。

第二章は、「ザ☆貴族」の華子と対極にいる、
地方漁村出身・貧乏な実家から学力一本で上京したサバイバー
ミキティの物語。

こちらは、一応、共感パートなのかな。
対比になっているからおもしろいけど、発見はない。
(だって、私、ど庶民だからね!)
センター試験を死ぬ気でくぐり抜けて慶應入って、
幼稚舎上りの同級生に「お茶しよ♪」と誘われた先が
ホテルのアフタヌーンティー!!というミキティの原体験は
なかなか強烈である。
これ、割り勘なのか?私だったら憤死してるぜ!
(森見ワールドに近しい下宿暮らしだったからね!)

物語を通じての感想は「華子が一歩踏み出した!」なのだけど、
この本のおもしろポイントは、第一章の貴族の生態かなあ。

私は彼ら貴族にとっての純然たる「外部」だからこそ、
楽しめたのかなあと思う部分も多い。
慶應幼稚舎出身の人はどんな感想なのか、聞いてみたい。
結構、おもしろいのかな。
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『チェスナットマン』北欧どうかしてるぜ系ミステリ

2022-03-17 15:09:21 | 日記
『チェスナットマン』
セーアン・スヴァイストロプ
高橋恭美子:訳

北欧どうかしてるぜ系ミステリである。
個人的には主に『ドラゴンタトゥーの女』で構成されるジャンルですが。

『チェスナットマン』は、
デンマーク・コペンハーゲン警察が舞台のミステリ。
子持ちの女性がターゲットの連続殺人で、
現場に置かれていたチェスナットマン(どんぐりの人形)から
一年前の少女失踪事件につながるようだけど…。
という話なんですが。

子どもへの虐待やら男女差別やら陰惨な殺害方法やら。
北欧ってこういうのしかないのか?
それともこういうのしか売れないのか?
いずれにせよ、怖いよ!どうかしてるぜ!!!

となります。

最後、真犯人は意外な人!
というのは、まあ、そうなんだけど。
だからと言って、母親が殺される意味がまったくわからない。
狙うなら父親じゃないの?なんで?

感想としては最初から最後までどうかしてるぜ!である。

ちなみに北欧どうかしてるぜ系ミステリには
「北欧ノワール」というジャンル名もあるようです。
アーナルデュル・インドリダソンの『湿地』『緑衣の女』が
よく挙げられるみたい。
翻訳ミステリ大賞か何かで見かけて、手に取りかけた。
あぶなかった…!!
絶対読まないからな!!というためにメモっておく。
(でもすぐ忘れる)
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【読書メモ】2016年1月 ③『人体工場』

2022-03-16 13:41:10 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年1月 ③>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『人体工場』仙川環
1月18日大雪。京浜東北線のろのろ運転。
というわけで、往路でほとんど読みきった。
遠いよ弊社。

それはさておき、癌の治療に使えるタンパク質を
尿から取り出すための医療詐欺が軸のお話し。

健康に害がないならいいのか?人間の尊厳とは?
では身内が病魔に侵されたら?などの問いかけは興味深かったし、
主人公がポンコツ腐れ大学生なのも良い。
バッドエンドでも問題提起として良いのではなかろうか、
という意味でオチが読めなくて楽しめた。

しかしですよ。『チャイルド44』が衝撃作すぎて、
こちらが色あせてしまった…。
なんか、いまいちストーリーに乗りきれないというか。
マンガでも読んでチャイルド44ショックをリセットすべきだったか。

(「医療ミステリ」と言われるジャンルの小説。
 作者は医学部出身で、医療系の記者やライターをしていたそうです。
 腐れ学生の主人公が、かる〜い気持ちで受けた治験後、
 妙な検査結果が出て、調査するも不穏な事実と謎があとからあとから…
 という感じでテンポ良く展開します。
 通勤読書には良い感じです)
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『すみれ荘ファミリア』凪良ゆう

2022-03-15 11:43:57 | 日記
『すみれ荘ファミリア』凪良ゆう

主人公の幸薄な和久井さんが管理人を務める下宿すみれ荘に、
感情が薄くて謎な人物・芥(あくた)が転がりんでくる。
というところから始まります。

作者のプロフィールにBL出身と書いており、
そういうのは別に良いのですが、
物語の導入からして、え?そういう話ですか?!と無駄に身構える。
と思ったら、芥は24年ぶりに会う弟だと判明。
早く言ってくれ。

なぜかお互い知らんぷり状態が続きますが、
低いテンションの会話は良い感じ。
下宿人・美寿々ちゃんのPMSでの荒れっぷりも良い感じ。
下請けテレビマン隼人くんの自意識に揉まれる荒れっぷりも良い感じ。

おお、良い感じだぞおもしろいぞ!
と思ったら、結構クレイジーな犯罪が来た。

すべてが「愛ゆえに」人は狂うというテーマかもしれない。
人の、外から見えている人格なんて、ごく一部、という話かもしれない。

しかし、ぶっ飛びすぎではなかろうか。と思って、ちょっとビックリした。

読了後、ビックリしながら振り返ってみると、
居酒屋の若旦那の「俺って優しい男」発言(実際は昭和の亭主関白を地で行く)も、
母親の恋人三上氏のアバンギャルド発言も、
ちょっと、空気読まなすぎというか、
言わなくていいこと言っちゃう呪いにでもかかってんのかな?この町の人。
と疑うレベルではある。
みんな、愛ゆえに狂ってる町なのか?
芥氏の登場によって、普段のA面ではなく裏のB面モードになったのか?

そんなこんなで読み終わったあとに、
最初からストーリーを思い返して、細部をリプレイして、いろいろ考えた。
という時点で、多分、これは、いい小説なのだと思います。
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『マーダーボット・ダイアリー』はい、星5つです!

2022-03-11 15:45:26 | 日記
『マーダーボット・ダイアリー』
マーサ・ウェルズ
中原尚哉:訳

これはいいぞ!
☆5つだ!!!

妙に自意識高い、拗らせ気味の、なかなか有能なアンドロイドが
ぶつぶつ言いながらがんばります。
最高ですね笑!

創元SF文庫から、上下巻で刊行されていますが、
内容としては中篇4話が収録されています。

“マーダーボット・ダイアリー”シリーズ第一話となる
「システムの危殆」(2017)でヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞。
第二話「人工的なあり方」(2018)でヒューゴー賞・ローカス賞。
すごいな〜。

というか、結構最近の作品なのですね。
SF100選みたいなのに入っているような
名作古典なのかと思ってました。

内容は、人型警備ユニットが主人公で、彼の一人称形式。
なので、自分を「弊機」と呼ぶ彼のプロフィールはあまりわからない。
しかしまあ、おもしろいよ。すごいよ。

最初はハビタット(居住エリア)やユニット(アンドロイド的な意味)
など小説内用語がわからず、苦労したのだけど、
この世界に慣れてしまえばあとはもう極楽です。

対人恐怖症でドラマ視聴に逃避しがち、
ずいぶんと人間臭い「弊機」が、すごく良い。


大森望が書評で『銀河ヒッチハイクガイド』の
うつ病ロボ・マーヴィンが好きな人にオススメと言っていて、
「それだ!!!」と思いました笑

この後、「弊機」ががんばる長編『ネットワーク・エフェクト』も
刊行されているので、読もう。

あと、訳者が解説で「弊機」のことを「彼女」と呼ぶのには
違和感しかない。
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