思惟石

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『アコーディオン弾きの息子』バスク文学

2022-03-29 14:37:31 | 日記
『アコーディオン弾きの息子』
ベルナルド・アチャガ
金子奈美:訳

作者のアチャガは1951年生まれ。
「話者数が百万人にも満たない母語で創作をしながら
世界的な高評を博している稀有な作家」だそうです。

バスク語は、スペイン・バスク地方に伝わる
歴史の古い孤立言語。

バスク語で書かれた文学作品が原書から訳されているのも
大変に貴重なことらしいです。
そもそも、アチャガ本人が、バスク語で書いた自作の
スペイン語版も出しているとか。

『アコーディオン弾きの息子』は、
主人公ダビの回顧録「アコーディオン弾きの息子」を
親友のヨシェバが再編したという体裁。

第一の作者ダビは、1950年代にバスク地方、
ゲルニカに近い「オババ」村に生まれたアコーディオン弾きの息子
「ダビ・イマス」。
第二の作者は、ダビの幼なじみで長じて作家になった
「ヨシェバ(本名ホセ)」。

ちなみに作者(アチャガ)の本名もホセであり、
自伝的色合いも濃い作品のようです。

主人公ダビの少年時代を振り返るパートは、
合っているのかわかんないですが、なんともヘッセ文学ぽい。
繊細な思春期の自分語り?
のどかな農村と、教育と、親との葛藤?
わからんけど。

この作品の特色でもある、バスク地方の複雑な社会状況と、
農村ののんびりした暮らしのせめぎ合い。
読んでいてハラハラしつつも、どこか牧歌的でもある。

そんな少年期の回想後は、死の直前、ヨシェバとの再会に
一気に飛びます。
ETA(「バスク祖国と自由」という独立運動団体。というか、
テロ組織と言っていいのかな?)の活動内容詳細は
切れ切れに描かれるに留まっている。

ダビは少年期に、ずっと、実の父が
ファシズムの手先で人殺しの仲間では?という
煩悶と共に過ごすのだけれど、
彼自身は、結局、どうだったのだろう。
という部分が(まあ、十分に匂わせられてはいるけれど)
靄の中という感じで、不思議な配分である。

不思議な読後感だけど、良い小説だと思う。

ちなみにバスク地方の「都市」はビルバオなのね。
(バスク語では「ビルボ」)
フランク・O・ゲーリーの建築「グッゲンハイム美術館」を見に
学生時代に行きましたわ。
「スペインの都市」というザックリした感覚でしか捉えてなかったので
こういう歴史があるんだな、と今更ながらに学びました。
おせーよ、というツッコミはさておき。
コメント
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